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第8話

誤解が生んだ異性関係で舞輝が何度も傷ついて、ついには生死かかわる事態にまでなって

これからも舞輝のそばにいようなんて、親父さんやみんなに顔が立たないか。

自分のために身を引いて応援してくれた聡太くんや翔くんまで傷つけた。



一緒にいて償うのも手かもしれない、一番かもしれない。

でも、一緒にいるがために舞輝や舞弥が辛い思いするかもしれない。


俺がいなければ、舞輝はまた新しい恋ができる。

わざわざ俺なんかといなくても、舞輝のこと好きな奴はたくさんいるんだ、素晴らしい出会いがあるかもしれない。


ホントに、それでいいのだろうか・・・

俺はどうしたらいい?




面会時間ぴったりに病院へ行った。

ノックして入ると、


「早いねぇ!ゆっくり寝れた?」


舞輝は笑顔で迎え入れてくれた。

ベッドの横に松葉杖が置いてあった。


「もう、起き上がれるのか?」

「うん、ゆっくりでいいから歩けって。リハビリ」

「そうか。後で屋上にでも行こうか。」

「うん。」


”コンコン”

ノックの後、遠慮がちにドアが開いてく。

達弥は「どうぞ」と言ってドアを開けた。


「お邪魔します。」


舞輝の両親だった。


「どうも。」


深々と頭を下げた。まだ、まともに顔が見れなかった。


「パパ!ママ!やっときてくれた。舞弥は元気?」

「まったく無茶して、大丈夫なのか?」

「うん、もう、松葉杖で歩けるから。」


達弥は外にでた。

売店に飲み物を買いにエレベーターに乗った。

あの場にいれる自信がなかった。

適当に見繕って飲み物を買って部屋に戻ると、部屋から両親が出てきた。


「もう、お帰りになるんですか?」

「あぁ、元気そうだし。達弥くん。」

「はい。」

「こないだは、殴ってすまなかった。舞輝は達弥くんのこと怒っちゃいないようだ。だが、一度二人でこれからのこと考えたほうがいい。

二人のことに口出すつもりはないが、一歩間違えれば命にかかわってたんだぞ。」

「はい。」

「また来る。今度は舞弥を連れてこよう。」

「舞弥をお願いします。」


達弥は頭を下げた。

部屋に入ると、舞輝は父親が持ってきたCDラジカセを聞いていた。

達弥に気づくと、イヤホンをはずして、


「どこ行ってたの?」

「飲み物買いに。すぐ帰ると思わなくて。」

「ごめんね。ねぇ、早く屋上行こうよ。」

「あぁ。」


達弥は松葉杖で痛そうに歩く舞輝を支えながら屋上に行った。

痛い痛い言いながらもしっかりした足取りである。



「いい眺め!外の空気はやっぱいいね。」



舞輝の長い髪がなびく。

あれから全然歳とったように思えない肌のつや。

子供を生んだように思えないスタイル。

毎日好きになっていく自分がいた。それは10年経った今も変わらない。

舞輝は前向きになった。

人を好きになることに臆病になり、自分が傷つかないように始めっから一人でいることを望んだ。

今の舞輝は、仲間に慕われ、愛されている。


俺がいなくても・・・大丈夫だ。



「達弥さん?」

「ん?」

「どうしたの?」

「いや・・・」


舞輝は達弥のほっぺたを両手でつねった。


「言って!何考えてるの?」

「敵わないな。」

「達弥さんの奥様だもん。」


少し間をおいて、柵に寄りかかった。


「あのさ・・・」


舞輝が首をかしげている。


気持ちが揺らぐ・・・


達弥は目を閉じた。


「別れようか・・・」


目を開けても舞輝の顔は見れなかった。

少し沈黙があった。


「達弥さんが、そう決めたなら・・・」


嫌とは言わないだろうと思っていた。でも、現実に突きつけられた舞輝の言葉に動揺した。

舞輝を見ると、もう背を向けていた。

松葉杖を頼りにしながらエレベーターに向かっている。

段差につまずいて舞輝は倒れた。


「舞輝っ」


舞輝を起こして顔を見ると、涙が流れていた。


「舞輝・・・」


舞輝は無理して笑顔を作った。


「お別れだね・・・」

「舞輝・・・」

「今までありがと・・・楽しかった。」


舞輝は自力で立ち上がると、エレベーターの方にまた歩き出した。


どっかで・・・

夢だ・・・随分前に見た夢。


「舞輝。」


舞輝を後ろから抱きしめた。


「ごめん・・・俺、舞輝のこと泣かせてばっかだ。舞輝のこと幸せにしてやりたいのに・・・

「あたしのために考えて出した結論なんでしょ?それで達弥さんが幸せならあたし大丈夫。」

「俺が?」

「達弥さんの幸せがあたしの幸せかな。」


舞輝と離れることが、幸せなわけないだろ・・・


「あたしは大丈夫だから。陽子さんとのことも覚悟できてた。笑って送り出すつもりだったよ。

達弥さんの大好きな人だったんだもん、後になって湧き出てくることだってある。ホントの幸せがそこにあるなら・・・喜んで引くつもりだった。」



翔くんと聡太くんを思い出していた。

俺だから身を引いたと言っていた。舞輝が愛した人だから、舞輝の幸せはそこにある。笑ってる舞輝が二人の幸せ。



そしてようやく気づいた・・・舞輝の”大丈夫”は大丈夫の”振り”。

始めからわかってたはずなに・・・

陽子に会いに行くときに、「あたしは大丈夫だから、行って。」と言った舞輝の言葉は嘘じゃないだろう。

でも、舞輝は自分の気持ちを抑えて大丈夫な振りしていたんだ。

出て行ったのは、大丈夫な振りをしているのに限界がきてしまったからだ。

理性を失う前に、舞輝なりにとった家族を想う行動。




「ホントは大丈夫じゃないんだろ?一人で頑張るなよ。舞輝のホントの気持ち言ってくれよっ。俺の幸せは舞輝なんだよ。離したくなんかねぇよ。」


舞輝の頬に涙がつたった。


「嘘・・・ついちゃった。陽子さんとこいっちゃう覚悟できてたなんて嘘。大丈夫なんてのも嘘。あたしは、達弥さんとずっと、ずっとずっとずーっと一緒に居たい。」

「俺もだよ、舞輝。舞輝と舞弥が俺の幸せだ。」

「うん。よかった。」




数週間後・・・


「退院おめでとう!!」


愛海がクラッカーを鳴らした。

愛海が取り仕切って舞輝の自宅で退院パーティーが行われた。


「さぁ、乾杯しよう!」


廉の呼びかけでみんな手にそれぞれの飲み物を持った。


「舞輝ちゃんの退院を祝って、乾杯!」


廉はビールを高くあげた。


「かんぱーい!!!!」


一斉に飲み物に口をつける。

ほとんどが一口でやめて舞輝のとこにかけつけたいところだが、肝心の舞輝はビールを一気飲み中。


「んまぃっ!」


久しぶりのビールに身も心も喜んでいる。


「病み上がりなんだから、控えめにな。」


達弥の声はおそらく届いてないだろう。言ってるそばからおかわりをついでもらっている。

舞弥はというと、愛海の子供とお菓子をつまみながら仲良く和室で遊んでいる。


「舞輝、無事退院できてよかったな!」


翔と聡太がコーラを持って寄ってきた。


「心配かけてごめんね。乾杯しよ!」

「かんぱーい!!」


乾杯すると、達弥が「廉のとこ行って来る」と言って舞輝のそばを離れた。

聡太は舞輝の横に行って、


「舞輝。ちょっといいか。」

「何?」

「おれ、料理とって来るよ。」


気を利かせたのか翔は自分からその場を離れた。


「俺さ、達弥さんに舞輝と別れてくれって言ったんだ。舞輝のこと泣かせるなって。・・・ごめん。」

「ううん。達弥さんはきっと受け止めてると思うよ。聡太が言わなかったら自分見失ってたかもしれないし。ありがと。」

「翔もそばにいてさ。カーッとなって達弥さんに言ったあと、寮で翔に怒られた。」

「そうなの?」

「何考えてんだって・・・」




寮に戻って、部屋に入ると翔は聡太の肩を掴んだ。


「おぃ、何考えてんだよ。」

「何が?」

「達弥さんに舞輝と別れろって。本気か?」

「本気だよ。」

「ふざけんなっ。」


翔は聡太の胸ぐらを掴んで壁に押し当てた。

聡太もカッとなって翔につかみかかった。


「ふざけてねぇよ。お前だってみたくないだろ、舞輝のあんな姿。」

「当たり前だ!だけどな、お前が決めることじゃないんだよ。舞輝と達弥さんで決めることなんだ。

ホントに別れたらどうすんだよっ。」

「俺が幸せにするよ。俺は舞輝を泣かせたりしない。」

「簡単なことじゃねぇんだぞ?舞輝には舞弥ちゃんだっているんだ。お前に舞弥ちゃんの分まで責任もてんのか?」

「やってみなきゃわかんねぇよ。」

「だろ?でも、責任もって父親できんのは達弥さんしかいないんだよ。舞輝と達弥さんだけの問題じゃないんだ。」


聡太は掴んだ手を緩めた。


「もし、舞輝が達弥さんと別れる方を選んだときは力になってやれよ。」

「翔、ごめん・・・」

「そん時はキューピッドでもなんでもやってやるからさ。」

「サンキュ・・」




「そっか・・・ごめんね、あたしたちのために喧嘩させちゃったんだね。」

「いいんだよ。翔がキレてくれなかったら突っ走ってた。舞輝を幸せにできんのは俺しかいないって。」


舞輝は背伸びをして大きい聡太に抱きついた。


「聡太、ありがとね。一番ってたくさんいるんだけど、聡太もあたしの一番の親友。大好き。」

「ありがと。俺も大好きだ。」


聡太も舞輝を抱きしめた。


「あぁぁぁぁぁぁっ!」


両手にこんもり料理が盛られた皿を持った翔の叫び声で舞輝と聡太はパッと離れた。


「なに?でっかい声あげて。」

「何抱きついてんだよ!お前の舞輝じゃないだろ?”俺たち”の舞輝だ!」

「悔しかったら、仲間に入れよ。」


聡太が手招きした。


「皿持っててできねぇんだよぅ!」

「じゃ、あきらめろ。」


「持っててあげようか?」


後ろから声がした。

翔は後ろを振り返ると、達弥が立っていた。


「そんな・・・滅相もない!」


聡太と舞輝は失笑している。


「笑うな!ほら、舞輝の分だよ。」

「ありがと。」


舞輝はソファに座って、翔と料理を食べ始めた。


「聡太くん。」

「はい。」

「こないだは、ありがと。」

「いえ、こちらこそ生意気なこと言ってホントにすみませんでした。」


聡太は深く頭を下げた。


「聡太くんのおかげで目が覚めたんだ。直後の俺は、舞輝と別れるとか舞輝の幸せだとか考えてなかった。

聡太くんが言った言葉で俺がしてきたことがどんだけ周りを苦しめてきたのかようやくわかったんだ。情けないよな。

それからの俺は、舞輝にとってどうするのが一番いいか考えた。

別れて聡太くんに任せてもいいって思った。聡太くんも翔くんも舞輝のことホントに大事にしてくれてるから。」

「達弥さん・・・」

「でも、廉に言われたんだ。お前はどうなんだ?って。一緒にいたいならそれでいいって。でも、俺は別れる方を選んだ。そしたら舞輝は「達弥さんがそれで幸せなら」って言った。ちょっとは期待してたんだ。嫌だって言ってくれることを。

でも、舞輝はやっぱりOKした。」

「俺のせいで、そんなことに・・・」

「聡太くんのせいじゃないよ。舞輝とまた向き合うことができた。舞輝もホントのこと言ってくれたし、俺も変わらなきゃ。感謝してる。これからも舞輝をよろしくな。」

「はい。」

「デートしたいときはいつでも連れ出してくれていいよ。その代わり、」


達弥は聡太の耳元に近づいて、


「舞輝をその気にさせたり、寝取るなよ。」

「達弥さんっ!」


聡太は顔を真っ赤にして言った。


「どうしたの?そんなに仲よかったっけ??」


フォークをくわえた舞輝が首をかしげた。


「まぁまぁ、男同士愛し合うこともあるんだよ。」


翔は口いっぱいにナポリタンをほおばりながら言った。


「そうなんだ。」

「お前ら食いすぎだぞ。」

「食う子は育つ!」


舞輝と翔は同時に言った。


「最強だ・・・お前ら。」

「サンキュー」


達弥が吹き出した。


「ほんとに最強だ、3人は。」


3人は顔を見合わせて笑った。




























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