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第四十八話 「放課後空いてますか?」

今回もマキ視点で進みます。


恐らく次もそうなる予定です。

「――たまには俺に付き合え、真樹」


 そう言いながらボクに話しかけてきた青山が問答無用で 手を引っ張っていく。


「――わ、ちょ、ちょっと待ってよ! 行く、行くからそんなに引っ張らないでっ」


 久しぶりのこの強引さ。

 お昼休みの昼食時に、ボクは青山によって教室から強制退場。

 簡単に言うと、拉致されてしまったのである。


「――せっかくミユキ達を誘って学食へ行こうと思ってたのに……」

「てめぇこの野郎。それを俺の前でさも当然のように実行しようとするとは……」

「え? 何? 何か問題あるのかな?」

「あるに決まってるだろ! 裏切者! そこで俺を誘うという選択肢はないのかっ」

「えーっと……? 無いかな」

「友情を示せよ……。いつもあの二人とメシ食いやがって……」


 なんだか深く落ち込んでいる青山は、知らぬ間に連れてこられた階段の踊り場で深く落ち込んでいた。

 そしてボクをジト目で見てくる。

 何か言いたげで、とても不気味だった。


「――お前最近、小峰さんと相沢さん二人とくっつきすぎじゃね? そこんトコどう思ってるんだ?」

「どうって、ミユキはともかく、相沢さんとは普通にお友達だから、仲良くしてもいいんじゃないのかな?」


 一体この人は何をそんなにムキになっているのだろうか。

 ――まあ、最近は青山以外の男子たちの様子も変だったけど……。

 何というか、話しかけても妙に素っ気ない態度を取られることが多いんだ。

 挙句の果てに『お前は敵だ』と宣言されてしまったこともある。

 ――一体、何なんだろうか。……まあいいか。


「――去年まで俺ら側の人間だった癖しやがって……」

「あの、言っている意味が分からないんだけど?」

「もういい! いつか見てろ、必ずお前を引きずり降ろしてやるからなっ」

「もう! それで要件は何なの!? ボクだってお昼御飯が食べたいのっ」


 流石に要領を得ない押し問答に、感情的になってしまった。

 久しぶりに声を荒げてしまったことに、自分でも驚いてしまう。


「――……くっ」


 ボクの態度に、青山は睨みを利かせてゆっくりと近づいてくる。

 その雰囲気は何だか怒りを含んでいるような、そんな負の感情を感じてしまう。

 ――何だろう? 怒ったのかな。ボクが怒鳴ったから?

 何とも理不尽だけど、青山の目が据わっている。

 ――こ、怖い。

 ジリジリとその雰囲気に耐えられなくなって、数歩青山から遠ざかろうとしたその時、


「――お願いだ真樹! 明日から俺も昼飯に誘ってくれー!!」


 ――ゴツンッ!!


「――うえぇ!? 土下座!?」


 何て迫力。頭を下げた時に鈍い音がしたような気がするけど、今はお昼休みだから喧騒の中。

 その打撃音は気のせいにしたかったけど、彼のその額から流れる赤いモノの正体を知った時、現実逃避したいほどのやるせなさがこみ上げてしまった。

 そして、そこまで必死にお願いするほどのものなのだろうかと、ボクは驚くしかなかった。


「――あ、青山落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だから!」

「じゃ、じゃあ!?」

「うん。明日から声かけてあげるよ。だからその額の赤いのを拭いてっ」

「気にするな。これは心の汗だ」

「それ、涙の比喩だよね!?」


 何はともあれ、この場は青山が正気に戻るという結末で何とかなった。

 ――そ、そんなに千歳達とご飯を一緒したかんたんだね……。

 考えてみると、『A組の二大美女』と毎日親しく出来ているボクは結構すごい事なのかもしれない。

 ――健全な男子ならこれをバラ色の学園生活というのかな?

 一応、身体はこうでも中身は女のつもりだから、あんまりそういう実感がなかったのは認めるしかない。

 ――正直、男子よりも女子と話す方が気が楽だものね。

 こう言う所が、男子からすると『必要以上に女子と仲良くしている奴』に見えるのだろう。


「――気を付けないといけないかもね」

「ああ? こんな程度拭けば治るよ」

「そっちじゃないよ……」


 ボクが言ったのは、性差による異性との関わり方についての事だ。

 同性である女子ボクが千歳はもちろん、ミユキを含むクラスの女子と仲良くしていても、それはただ単に同性同士でコミュニケーションを取っているだけであって、それ以上の感情なんかない。

 だけど、男子からはそうは見えず、敵(女子と仲良く出来る裏切者)に見えてしまうのかもしれない。


「――どうした、真樹?」


 首をかしげる青山に『こっちの話だから』と誤魔化しつつ、今後の立ち居振る舞いを考え始めるボクだった。




 さて、気を取り直してお昼御飯だ。

 青山との約束は明日からという事で、このまま彼とお昼を一緒することになって学食へ。

 ちなみにいつもボクは弁当だけど、昨日の夜にミユキへのお願いを考えすぎた結果、若干寝坊してしまい、今日は弁当を用意できなかった。

 だからこそ、このまま珍しく学食で済ませようという流れだった。

 頭の中で今日のお昼は何にしようかと考えていた時、


「――あ、水鏡さん居ましたっ」


 階段下から聞き覚えのある声がした。

 すぐにその声の主を確認しようと階段上から下を向いたら、そこには美月ちゃんが居て、ボクと青山のところへ早歩きで近づいてきた。


「――ど、どうしたの。美月ちゃん?」

「どうしたもこうも探しましたよ……。あ、どうも、こんにちは」


 そう言いながら美月ちゃんはボクの隣で棒立ちしている青山にも軽く挨拶していた。


「――こ、こんにちはっ」


 目の前で微笑まれて青山の様子が少しおかしくなっていた。

 ――まあ、美月ちゃん可愛いもんね。誰だって舞い上がっちゃうかも。


「――初めまして、青山慎二と言いますっ」


 テンション高めで、声が若干いつもと違う青山は、敬語で返してしまうほど緊張していた。

 だけど、少し違和感を覚えてしまう。

 ――ああ、そっか。青山と美月ちゃんってこっちの世界じゃ接点が無いのかも?

 前の世界じゃ美幸の友達だったんだから、知っているのは当たり前。

 だけど今はそのミユキと接点が薄いワケだから、知り合いじゃないほうが自然だし、その確率も高いというものだろう。


「――は、はい。私は……」

「知っていますっ。小峰さんの妹さんですよね」


 捲し立てるように食いつく青山と美月ちゃんを見ていると、どうやらボクの推測は正しいようで、初顔合わせなのは間違いなさそうだった。


「――そ、それで妹さんはどうしてここに?」

「いえ、ですから水鏡さんに用事が……」

「うう……、また真樹かよ」


 小声でつぶやく青山はまたまた負の感情全開でボクを見る。

 勿論どうしたらいいのか分からないので、首を横に振って(何度も)敵対する意思はないとアピールするしかない。

 ――もう、面倒くさいです。

 なんとも『つーん』な感じの青山をしり目に、本題を優先。そのまま美月ちゃんの用件を聞くことにした。


「――今朝のお話の続きです。あ、そうだ長くなりそうなので、今日のお昼ご一緒してもいいですか?」

「もちろん構わないよ。この青山も一緒だけど、それでもいいかな?」

「ええ、大丈夫です。青山さん? 私がご一緒しても大丈夫ですか?」

「い、良いに決まってますッ。いや、真樹と二人じゃ、むさ苦しいと思っていた所だったしッ」


 ところが、美月ちゃんを交えてのお昼という展開に、この変わりよう。

 ――ちょっと女の子に飢え過ぎじゃないのかな……。

 砂漠にオアシス。

 まさしくそんな感じで、落ち込んだテンションが一気に全開。

 自ら率先して学食に歩き出す青山だった。


「――あの、水鏡さん? あの方変わってますね」

「本調子じゃないみたいだから、温かく見守ってあげてくれるかな?」

「わ、分かりました……」


 そんな美月ちゃんの青山への印象は、何とも悪い結末。

 ボクは苦笑いしながら、美月ちゃんと並んで学食へ向かったのだった。




 そして場所が変わり、学食。

 ボク達三人は席を確保できたので、各自定食などのご飯を購入し、席に着く。


「――~~♪」


 美月ちゃんが隣に座ってくれた事が嬉しいのか、青山は先ほどからニコニコしながらカツカレーを食べている。

 美月ちゃんはミックスサンドと紙パックのミルクティー。

 ボクは和食のA定食にした。

 さて、各自ご飯を食べて一区切りさせたところで、美月ちゃんが先ほどの用件を話し出したので、ボクも青山も食事を終わらせ、美月ちゃんの話に耳を傾ける。

 と言っても、さっき『今朝の話の続き』と言っていたので、ある程度は予想がついていた。

 ――ボクと一緒にミユキ達が働いているお店に来店するってやつだよね。


「――水鏡さん、今日の放課後空いてますか? 少し付き合って欲しいんですけど……」


 やはり思った通りで、美月ちゃんは放課後のボクの予定を聞いてきた。

 ――あーあ、こんなに恥ずかしそうにしちゃって……。

 察するに、今朝の一件から今まで込み上げてくる好奇心が抑えられなかったのだろうか。

 普段とは違う働く姉さんを見てみたいという気持ち。

 大好きなミユキだからこそ、抑えられない感情が美月ちゃんにはあるのかもしれない。

 ――ホント、美月ちゃんはお姉ちゃんっ子だよね。

 さて、勿論断るつもりもないから、二つ返事でボクは了承しようとした。

 ――んだけど……。


「――おいコラ裏切者。貴様、お姉さんのミユキさんと付き合っていながら、この美月さんと放課後デートするつもりか……?」


 何やら真正面からのお声で、雲行きが怪しくなってきた。


「――い、いや、青山? 君は何か勘違いしてると思うんだよ……」

「やかましいッ。貴様に発言権など無い!」


 ――この人、今日は不安定すぎませんか? 機嫌の浮き沈みが激しすぎます……。


「――というか、これ絶対に夢だろ! あの小峰さんと付き合いながら、その妹さんまでもモノにするなんておかし過ぎるッ!」

「ちょっと冷静にっ。あの青山?」

「君は良い戦友ゆうじんだった。だが、君の浮気癖がいけないのだよッ」

「そんな一方的に非難されてもだねっ」

 今の発言は色々と誤解を招くからやめてほしい。

 ――うぁ……、何か周りからの視線が……。


「――問答無用! あの世で閻魔と仲良く暮らすが良い!」

「ボク死ぬの!?」

「聞くまでもねぇだろ、何でお前の位置に俺が居ないんだよぉおおおお!!」


 宣言通り、聞く耳持たない青山に対してボクは一生懸命に説明した。

 慌てて止めに入ってくれた美月ちゃんのおかげで何とかなったけど、いくら何でもこんな場所でマウントポジションはやりすぎだと思うんだ。

 結局、彼女の説明とボクの説明で青山の誤解は解けたけど、


『――小峰さんと相沢さんのバイト姿!? どうやら今日の放課後は久しぶりに本気でカメラシャッターを切る必要がありそうだな……』


 やたら男前な感じで意を決意。

 ボク達についてくる気満々で、新たな目的(ミユキ・千歳の撮影)の為に全力を出すつもりのようだ。

 ――あのお店、確か撮影お断りだったような……。

 目の前で咆哮している友人(?)に対してボクはそんなことを考え、同じく隣の美月ちゃんは、大きく引いて苦笑いしていたのが印象的だった.

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