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第三十五話其の一 「決闘!! 前編」

第三章の戦闘シーンは三十五話で終わります。

しかし長くなってしまったので、前後編に分けました。

 走る俺。

 目標は眼前の敵のみ。

 しかし思った以上に目の前の元さんは凄いプレッシャーを放っていて、近寄りがたい雰囲気だった。

 ――隙が無い。

 向かって行ったのはいいものの、取りつく島が無かった。

 そこで、


「――はっ」


 フットワークで翻弄し背後に回る。

 しかし。

 ――ドガッ!

 俺が行動した瞬間、そこに合わせて蹴りを放たれてしまった。

 放たれた蹴りは俺の腕に直撃したように見えるが、瞬時にバックステップしながら受けた。

 衝撃を殺し、綺麗に着地したが、

 ――ヒュッ!!

 そこを正拳突きが襲う。

 しかし、この一撃は俺の体勢が整っていたので、思いのほか軽くかわせた。


「――なっ!?」


 そこを左後ろ廻し蹴りが襲う。

 ――なんて人だ! 俺の行動の先を攻撃してくる!

 正直、身動きが取れなかった。

 余計な事を考えている暇が全くない。

 俺はとにかく一矢報いようと反撃に出る。

 後ろ廻し蹴りの足刀を紙一重で避けると、


「――はあっ!」


 反対側の右軸足の膝裏部分に自分の左足を押し込んだ。


「――!???」


 元さんは驚いた様子で体勢を崩して頭から倒れ込む。

 ――ガッ!

 しかし空いた右手で激突する地面から身体を支えると、


「――ああっ!!」


 瞬時に切り返して、俺の両足を足払いで蹴って来た。

 しかしその攻撃は無理な体勢から放たれた一撃だ。正直、隙だらけで避ける事は容易い。だが俺は避けない。この隙はこちらの攻撃を入れるきっかけになるのだから。

 ――ダンッ!!

 鈍い音が道場の床に響き渡る。


「――うっ!?」


 咄嗟に感じた痛みに驚く元さん。

 まあ無理も無い。

 俺は、襲ってきた足払いを避けようとせず、その動作に合わせて自分の右足で踏み潰したのだった。

 俺の足の下には、踏み潰した元さんの足がある。合気の技で足の一点を親指で押しこんであるので身動きは取れないはずだ。

 ――動きは封じた。行くぞ!!

 俺は瞬時に右腕を使って、元さんの側頭部……。もっと細かく言うと『左耳』を殴りつけた。

 この一撃は通常のフックで殴りつけた一撃ではない。

 掌に『空気を貯めて』加えられた一撃だ。

 簡単に言うと、

 ――パンッ!!

 鼓膜を攻撃したのだ。

 ――喧嘩ルールだ。何でもアリですよね!?


「――!??」


 三半規管を攻撃され、耳鳴りで苦しむ元さん。

 俺はそこに、

 ――ガッ!!

 左足を使った神速の上段蹴り上げで顎を打ち抜く。


「「「――おおっ!??」」」


 いつの間にか意識を取り戻して復活していた門下生たちは、ギャラリーと化していた。

 一方、元さんは俺の目の前で軽く吹っ飛び、背中から床に激突した。


「――み、ミユキちゃん」

「見たか!? 今の蹴り!」

「容赦無いにも程がある!」


 相変わらず騒いでいるギャラリー。

 もう俺とマキ二人と闘おうとは思ってはいないようだった。

 そんな門下生たちは俺と元さんの闘いを見て驚愕しているようだが、驚きたいのはこっちの方だ。

 ――今の一連の攻撃を食らって、動けるのか!? まだ意識があるって、どんな身体の鍛え方だ!?

 俺の意識は目の前で神速のハンドスプリングで起き上ろうとしている元さんにしかない。

 ――驚くな! 早く追撃をっ!

 俺は元さんとの距離を詰めようとダッシュした……のだが、何か嫌な予感がしたので瞬時にブレーキ。

 そんな俺に、起き上りとは思えない強烈な蹴りが飛んでくる。

 ――ドカンッ!!

 あまりに素早すぎる、強烈な廻し蹴り。

 案の定俺はその蹴りが直撃して、回転しながら吹っ飛んだ……、


「――ヨシ……ミユキ!!」


 ……ように見えたのかもしれない。

 まあ外野で慌てふためくマキの声が聞こえたのは気のせいじゃないだろう。実際に俺は上半身に蹴りを食らって吹っ飛んでいたのだ。

 しかし、『そう見えた』だけであって、そうじゃない。

 俺は直撃する所を『合わせて』蹴りを捌いていた。

 同時に蹴られた方向に飛んで、元さんの蹴りの威力を殺す。

 回転していたのは、その場しのぎの手だ。単に避ける時間が無さすぎたので、その場で飛んで回転。バックステップの代わりにした。

 ――追い打ちしようと間合いがあと『半歩』ほど先に詰めていたらヤバかった。確実に蹴りを食らってたよ……。

 そんな事を考えながら、元さんと間合いを離して着地する。


「「――…………」」


 攻撃範囲外で睨みあう俺と元さんは、黙り込む。

 しかし、外野は黙っていない。


「――なんであんな強烈な蹴り食らってピンピンしてんだ!?」

「俺に聞くなよ!」

「ミユキちゃんも元さんもカッコイイ……」

「もう、俺たちの知っている試合とは次元が違う」


 なにやら、やたらハイテンションなギャラリーたち。

 あんなに騒がれたら、こっちで闘っている俺と元さんの緊張感が薄れてしまう。

 案の定、


「――凄いじゃないか、ミユキちゃん……」


 口の血を拭いながら笑う元さん。

 俺とは違い、二発直撃しているのにもかかわらず、元気なその姿に俺は驚いた。


「――正直、驚いてる。君がここまでやるとは思わなかった」

「驚いているのは私です。何でそんなに元気なんですか? 顎に入れたのに……」

「頑丈なのが取り柄でね……」

「そうですか……。今度はもっと強いので試してみます」

「はははっ、楽しみだ。君は他にも色んな技を持っているのか?」

「さて、どうでしょうか」

「見たところ、合気道かな? 打撃もあったけど、あれは空手か……」

「私の弱点は『非力』な所ですから、合気道というのは合っていると思います」

「実戦で合気道とるのは初めてだよ……。君は本当に素晴らしい」

「ありがとうございます……」


 と、言っても俺は合気道だけじゃない。

 小峰流うちは色んな流派、格闘技を合わせて構成されている。

 やろうと思えば打撃重視の空手だって使える。だけど俺はその闘い方を捨てていた。

 この身体ミユキさんは女の子だ。そんなミユキさんに打撃なんてさせる訳にはいかない。そこで一番良い闘い方と判断したのが合気道だった。

 ――剛より柔が得意で良かった……。

 男時代に柔術を重点的に鍛錬していた自分に感謝していた。


「――さて、お話はここまでにしておこう。周りが騒がしいし、俺自身も君と闘いたいと思っている」


 元さんの目がさっきと全然違う。

 何か彼の周りの空気が変わったような気がした。


「――やっと本気ですか?」

「そうだね。久しぶりに本気で行こう。君を俺のものにしたいという気持ちが更に強まった」

「あ、あははは……。その話は私に勝ってからにしてください」

「そうだね。正直ナメてたよ。だから初めに手を抜いて闘った事は謝る」

「あれで手を抜いていたんですか? 恐ろしいですね。初めから容赦ないように見えましたが?」

「そうかい? あれで六割くらいなんだけどな……」

「そうですか……。やはり貴方は強い人です。不謹慎ですが、貴方と闘えることを楽しいと感じている自分がいます。今度は本気の元さんを見せてください」

「そのつもりだよ。だから俺もいろんな技を出してもいいかい? 本気って事で……」


 そう言って笑う元さんは楽しそうだった。

 しかし本当にこの人は凄い。

 剣を持ったマキを全力も出さずに一瞬にして倒してしまったんだから並じゃない。

 マキも自分の技に対して絶対の自信があったんだろうけど、その考えが過信となり負けてしまった。

 マキの技量は俺から見ても文句は無いが、メンタル面ではまだまだ未熟だと思う。そこを直せば元さんクラスにまで化けるかもしれないが……。


「――おい、ついに元さんが本気マジになっちまったぞ」

「お前、あの人の本気見た事あるか?」

「あるワケないだろう。第一あの元さんと互角に闘える人間が門下生で居る訳が無い」

「じゃあ、今のミユキちゃんのレベルって……」

「望月師範や師匠クラス……? 天才か??」

「……ダメだ、真面目に鍛錬してる俺たちがバカに思えて来た」


 俺がマキと元さんの事を分析して思案している間に、ギャラリーがヒソヒソと噂をしている。

 俺は気を取り直すと、目の前の元さんに意識を集中させた。


「――遠慮なくどうぞ。周囲の声が騒がしいです。闘わないと落ち着きません」

「……じゃあ行くよ? 打撃が顔に当たっても後で文句言わないでね、ミユキちゃん」

「はい、大丈夫です」

「本当に?」

「自慢じゃありませんが、私は瞬きよりも速い打撃を捌くことが出来るんです」

「ははっ、それは楽しみだ!!」


 そう笑った瞬間、元さんが来る。

 地面を蹴って突進して来る。

 ――セーブ無しの本気の元さんか! 来いよ!!

 俺はワクワクしながら迎え撃つ。

 ――向こうが攻めるなら、こっちは待って攻める。

 合気の闘い方は、基本的に『相手の攻撃を利用する』というものだ。

 俺は様子見として、元さんの出方を見る事にした。

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