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第二話 「交通事故」

今回のお話は短いです。

申し訳ありません。

 相沢さんに挨拶されてちょっと幸せな気分になったあの日から三日ほど過ぎた日曜日の夕方。

 俺は真希と一緒に並んで歩いていた。

 今日は真希の剣道の試合の日。今現在は試合会場の県の武道館からの帰宅中と言う流れだ。俺は真希の応援で一応、武道館に行っていたのだが彼女は応援する必要がないくらい強かった。

 点取り式だった試合は、あと一敗したら負けというところまで追いつめられていたのだが、中堅で出場していた真希が見事な三人抜き。

 圧倒的逆転勝利で幕を閉じた。

 味方応援席からは黄色い声援が飛び交い、これでまた下級生の人気者になるだろうという可能性が見え隠れしていた。

 真希は人気者だ。特に下級生からは非常に人気がある。

 下駄箱にラブレター(女子からの手紙)が入っているのはいつもの事で、それを無表情で鞄に入れていくのもいつもの光景だった。

 ……俺はラブレターなど貰った事が無いので、真希の気持ちはよく分からないのだが、返事を書くのは非常に大変な作業だという事は分かる。

 まあ、どうでもいい事だが……。


「――今日も圧勝だったな」

「……相手が弱かっただけ」

「……そのセリフ、いつも通りだな」

「そう?」

「お前を倒せる奴は現れるのかね?」

「少なくとも兄さんには勝った事は無い」

「ああ……。なるほどな」

「あと……」

「ん?」

「美幸にも勝てないと思う……」

「はあ?」

「……ん」


 驚く俺に真希は頷くだけ。どういうことだ? 俺が真希より強い? 確かに俺も実家は空手道場を開いているが、俺は素手専門だ。少なくとも剣道じゃ真希に勝てる自信など無いんだが……。


「…………」


 真希は俺を見つめながらニコリと笑う。

 その普段とは違う表情にドキリとするが、今はそんな事はどうでもいい。


「――いやいや真希。俺は剣道なんて専門外だぜ?」

「知ってる」

「じゃあなんで?」

「素手じゃ勝てない……」

「…………そらそうだろ」


 拍子抜けしてしまった。真希が意味深な事を言い出すから身構えてしまったじゃないか。まあ確かに真希は剣道は強いが素手のほうはあまり強くない。当たり前の話だが、彼女は女の子だ。もし喧嘩になっても、むやみに人を殴るという行為などするはずがないのである。心得ている武術は、俺が昔教えた護身術くらいだろう。

 俺と真希はそんな話をしながら岐路に着く。

 途中、真希が『甘い物が食べたい』と言い出したので商店街に足を運ぶことになった。

 真希はこう見えても女の子らしい一面があり、可愛い物や甘い物が大好きなのだ。俺は彼女に付き合うために、一緒に歩き出す。

 その間も『あそこのスイーツがいい』とか『あの店の服が可愛い』とか俺に言って来た。本当にコイツは普段とのギャップが激しい奴だ。

 俺は適当に相槌を打ちながら真希と商店街に向かう。

 そして商店街を目の前にした交差点で足を止めた。

 赤信号だったので当然、歩道で信号が変わるまで待つしかない。

 横目で真希を見てみると、何故かすごく嬉しそうな顔をしていた。『何がそんなに楽しいのか?』などと思い、ふと視線を信号機に向けていた時にそれは起こった。

 ――ギャアアアアッッ……!!

 耳をつんざくブレーキ音がまず鳴り響いた。


「「――!?」」


 俺と真希は『何事か!?』と思い、そのブレーキ音の発信源を同時に見る。しかし見た時には爆音を上げて鳴り響く鈍い金属音が鳴り響き、車同士が強烈にぶつかっていた。

 事故。

 それも猛スピードでトラックが追突し、一般乗用車を吹っ飛ばす多重事故だ。

 俺たちは呆気に取られてその場を動くことが出来なかったが、かろうじて『危ない!』という意識が働き、無理やり身体を動かして退避行動を取った。

 と、言ってもただ単にその場から走り出して移動するだけだったのだが、結果的にそれがまずかった。

 気付いた時には、追突された車が俺と真希の逃げた方向に猛スピードで吹っ飛ばされて来ていた。


「――真希!!」


 必死に真希を庇おうとして彼女の身体を抱きしめたのだが、それと同時に自分の身体に強すぎる衝撃があった。重力を無視して二人の身体が吹っ飛ぶ。

 一瞬、激痛が全身を駆け巡り顔を歪めた。

 次に目を開けた時には、風景がものすごい勢いで回転していた。腕の中の真希がどうなっているのか確認したいが、風景が流れるように変わっていくので確認できない。

 そのうち上と下の感覚も分からなくなり、俺は意識を失った…………。

 


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