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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
最終章 僕の大切な人
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『みたき』と『三滝』

『もうすぐ日本に帰れるよ』

『本当!?』


 気づけば高校二年生も終わり春休み。定期的にかかってくるみたきちゃんからの電話に毎回心を躍らせていた僕だが、とうとうその日がやってきた。長いようで、やっぱり長かった一年間。高校二年生は三ヵ月で終わってるという意見もあるけど、僕には悠久の時にも思えた。


『それで、いつ帰ってくるの?』

『ふふ、秘密』

『ええっ!?』

『突然高下君の目の前に現れて、びっくりさせてあげるね』


 きっと電話の向こうでみたきちゃんは小悪魔的な笑みを浮かべていることだろう。一体いつ帰ってくるのだろうか、来週だろうか、明日だろうか、ひょっとして実はもう帰ってきていて、僕の部屋のベッドにもぐりこんでいるのだろうかと話をしながらベッドを覗いてみるが、当然ながら誰もいない。傍から見れば頭のおかしい人に僕が思えるかもしれないけれど、それくらい僕はテンションがあがっているということだ。


『それじゃ、次は現実でね』

『うん、待ってるからね』


 これが最後となる電話かと名残惜しそうに電話を切る。いや、最後ではない。これから僕達は始まるのだ。子供の頃のように、ウキウキしながら、その時をまだかまだかと待つ僕であった。




「あー、もう高3かー、受験かー、どうすっかなー。姫はいいよなあ、高校卒業したらニートだろ?」

「主婦をニートと一緒にするでないわ! 大体わしだってちゃんと家のために働くわ!」


 そして僕は高校三年生に。目立った知り合いで同じクラスになったのは煉獄君と白金さんと姫宮さん。今年も賑やかになりそうだ。


「今年もよろしくな、高下。酷いよなあ先生のやつ、俺達の仲を裂こうだなんて」

「ふふふ、よろしく煉獄君」

「何だお前、気持ち悪いな。何かあったのか?」

「大切な人が帰ってくるんだよ」


 僕の浮かれようは顔にばっちり出ていたようで、煉獄君に気味悪がられる。浮かれたまま理由を告げると、向こうの方で意味不明な論争をしていた金髪コンビがにやにやしながらこちらにやってくる。


「おうおう、高下。よかったなあ、去年の今頃は死にそうな顔してたもんな」

「うむ、人恋しくてわしに仕えたいんですう奴隷にしてくださいって泣きながら頼んでおったな」

「さらりと嘘つかないでよ姫宮さん」


 死にそうな顔をしていたのは事実だし姫宮さんの小間使いになったのも事実だけど、僕は皆が思っている程女性に尽くすマゾ男ではない。むしろみたきちゃんとのお医者さんごっこを分析すると、僕はサドではないかと思っているくらいだ。


「しかしよー、病気で1年だっけか? 大丈夫かよお前、彼女の顔忘れてないか?」

「ははは、僕がみたきちゃんの事を忘れるはずがないじゃないか」

「それよりもわしは、お主が思い出を美化しすぎとる方が問題じゃと思うぞ」

「ははは、みたきちゃんは女神だよ」

「手遅れか……」


 何故かドン引きして僕から後ずさる煉獄君達クラスメイト。けれどそんなことどうだっていい、みたきちゃんに逢えるのだから。




「……♪」


 柄にでもなく鼻歌を歌いながら始業式から帰る僕。みたきちゃんが恋しくて恋しくて、気分は無口なストーカー。そしていつものワークハウスを通り過ぎた時、


「だーれだ」


 暖かな感触と共に、僕の視界は塞がれる。

 このぬくもり、この声、僕が忘れるはずもない。



「おかえり、み――」


 そっと手を外して振り返って、そこにいた彼女に挨拶をしようとして、


「ただいま」


 彼女の名前を言えなかったのは、何故だろうか。


「……やっぱり、驚くよね。頻繁に電話で話していれば違和感も少しは無くなるかもって思ったけれど、そんなにうまくはいかないよね、あれから変わってない君を見た私ですら結構混乱してるのに、君の目の前にいる私は変わってしまった」

「君は……」


 どうして僕は目の前の彼女の名前が言えない。答えなんてわかりきっているのに。見た目だって変わってないじゃないか、僕の目の前にいるのはどうみたって、み――


「『谷串三滝』。久しぶり……それとも、初めまして、なのかな? よくわからないね、まだまだ私はお子様だから」

「……久しぶりだね、『みたきちゃん』」



 昔々、あるところに醜いアヒルの子がいました。

 アヒルの子は自分を愛してくれる存在のために、自分を変えようとしました。

 するとどうでしょう、奇跡が起こり、アヒルの子は美しい白鳥になったのです。

 こうして白鳥は幸せになりましたとさ。めでたしめでたし。

 え、『アヒルの子』はどこにいったのかって? 

 どうでもいいじゃないか、醜いアヒルなんて。

 ああ、でももしも醜いアヒルが強く生きようとする姿を愛していたのなら、

 白鳥は幸せにはなれないかもしれないね。

 けれどそんな少数派の事なんて考えなくていいんだよ。

 さあ、彼等を祝福しようじゃないか。

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