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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
高校2年 姫の苦労と僕の気苦労
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負荷価値を見出す

「あー誰でもいいから彼氏欲しいなー」

「とかいいつつ理想が高い癖に~」

「誰でもいいならクラスの男子に適当に告ればいいじゃん」

「えークラスの男子とかガキじゃし~」


 朝からそんな恋愛トークをかましているクラスの女子達。興味ないフリしながら、それに聞き耳を立ててピクピクしている男子達。そんな連中を余裕を持った目で眺める恋人持ち。実に高校生っぽい日常だ。


「おはようじゃ」

「あ、姫宮さんおはよう! ねえねえ姫宮さん男紹介してよ、姫宮さんならイケメンとか高学歴とかと知り合いでしょ?」

「アンタ……」

「す、すまぬ。あまり男の知り合いはおらんでな……」

「ねえねえそれより姫宮さんの恋人ってどんな人? ていうか何人いるの?」

「あ、私も気になるー。イケメン執事とかいんの?」


 姫宮さんも登校して女子会へ。この間は恵まれている姫宮さんに乙女の悩みはわからないと言わんばかりに除け者にした彼女達だったが、恋愛となると話は別。見ただけでモテそうだとわかる姫宮さんに目を輝かせながら恋の話を聞こうとする。女の子は本当に他人の恋路が大好きだよねえと、適当に誤魔化す姫宮さんを見て思うのだった。






「恋が……したい……」

「鯉が死体? ああ、やっとAクラスに入れたのに、玖波がFAで抜けちゃったからね。でも京瀬良君が入ったしBクラスの連中に上がり目ないし、今年もなんだかんだ言ってAクラスじゃないの?」

「何の話をしておるんじゃ……? 恋愛の話をしとるんじゃが」


 そしてこの日もお昼休憩に呼び出されてしまった僕。嫌々ながらトイレに向かうと、立ちっぱなしは辛いという要望に応えてくれたらしくパイプ椅子が置いてあった。トイレを私物化しちゃ駄目だよ。


「ああ、恋愛ね。クラスの女子の肩を持つわけじゃないけど、姫宮さんがそんな事言っても嫌味にしか聞こえないよ。高校入って何回告白されたの?」


 形式上とはいえど僕に告白してくるのだし恋人はいないのだろうなあと思ってはいたけど、対等な立場が望ましい友達はともかく、恋人ならその気になれば簡単に作れると思うのだけど。



「……高校一年の時に3回じゃよ。ちなみに小学校も中学校も女子校じゃから異性からの告白はないぞ」

「ふうん。3回告白されただけでも十分だと思うけどなあ。今になって愚痴るくらいならその時にOK出せばよかったのに」

「お主が今のわしの恋人のはずなのじゃが、酷くないか? ええんじゃぞ、高下にトイレで酷いことをされたと言いふらしても」

「酷すぎるよ姫宮さん……」


 そんなことを言われたら学校に行けなくなって今度こそドロップアウトしてしまう。姫がご乱心しないように宥めていると、彼女は便器の上で大きなため息をつく。便秘かな?


「その3回の告白も、どう考えたって相手も本気じゃなかったぞ。望みはないけどとりあえず告白するだけするかーみたいな感じじゃ。大体相手のことをよく知らんのに外見だけで告白しおってからに。物事にはきちんと友達から始めてくださいとか順序があるじゃろ」

「僕はよく知らないのに告白された気がするんだけど」

「わしはちゃんとお主の事を探偵雇って徹底的に調べ上げたから大丈夫じゃ」

「うーん……? まあでも、ちょっと可愛い女の子ならともかく、姫宮さんくらいスペック高いと逆に別次元っぽくて恋愛の対象から外れちゃうのかなあ」

「現にお主もわしが告白した時これっぽっちも信じてなかったからな。やっぱりまずは友達から始めて恋愛に発展させるのが一番じゃろ、わしの読んでるこの本も、結ばれるのに随分と時間がかかっとる」


 恋愛の持論を垂れながら、ブレザーのポケットから本を取り出して読みふける姫宮さん。僕も家のトイレで大をする時は、暇つぶしがてら本やゲームを持って入って、熱中して30分くらい経ってしまうことがある。そう考えると、トイレって魅惑の場所だ。


「その本みたいな恋愛がしたいってやつ?」

「うーん、参考書というか、反面教師と言うか……。これはいわゆる萌え萌えきゅんなライトノベルで、わしみたいな美少女が出てくるやつじゃ。どいつもこいつも美少女だったり天才だったり金持ちだったり、けれど大抵ぼっちじゃ。わしのように友達はいるけど本人は寂しいと思っているとかならまだマシで、誰からも話しかけられん子だってザラじゃ」

「まあ、お話の都合上ね……読者が感情移入できるような平凡な主人公が可愛いヒロインと恋愛するには、ヒロインの倍率を低くしたり、ヒロインの秘密を主人公だけが知っているとか、そういうのが必要だよね」

「そのために彼女達は負の要素をつけられがちじゃ。例えば今読んでる本のヒロインは、そこそこ可愛いのに被害妄想持ちで捻くれ者で、皆から嫌われとる。それこそ心を読めるレベルにヒロインのことを理解できる主人公だけが、彼女の心を開いて好かれるわけじゃな」


 負の要素か。とても可愛いけれど知的障害を持っているみたきちゃん。彼女のそれは負の要素なのだろうか。みたきちゃんに仮に知的障害が初めから無かったとしたら、ただのスタイルの良い女の子だったとしたら、多分僕なんかとは接点すら無くて、普通に中学校に進学して、高校生になる頃にハイスペックな彼氏を作ったことだろう。みたきちゃんが知的障害を持っていたから、周りの皆に敬遠されたから、たまたま僕がみたきちゃんを受け入れるだけの器量を持っていたから、結果として僕はみたきちゃんの大事な人になれた。そういう意味では、僕達はライトノベルの登場人物のようなものなのかもしれない。けれど、みたきちゃんは幼い故に純粋で優しくて、負の要素を付け加えられた哀れなヒロインなんかと一緒にして欲しくないというのが、僕のわがままな感情だ。


「つまり、姫宮さんもライトノベルの主人公みたいな男が欲しいと」

「違うわ! わしはこいつらと違って、人格破綻してるわけでも皆から嫌われてるわけでもないわ! こいつらが容姿とかの割にモテないのはまだしも、わしがモテんのはおかしいじゃろうが!」

「……」

「だからわしはずっと考えていたのじゃ。容姿を台無しにするレベルに欠点のある女もあれじゃが、欠点のない、わしみたいな完璧な女もやはり敬遠されてしまう。つまり、程々にドジっ子アピールみたいなのが必要なんじゃ。そういう意味では、このヒロイン達を真似する必要があるな」

「……ナルシストすぎるのは、欠点、かなぁ……?」


 トイレから立ち上がってそんな宣言をする姫宮さん。少し自意識過剰な気がするけど、確かに欠点のない女性というのも、それはそれで魅力を感じないというか、男性がスペックの高すぎる女性に落ち目を感じているパターンって、うまくいかないっていうか。そもそも敷居が高すぎて恋愛の対象として見られないというか。やっぱり姫宮さんと似た者同士、イケメンでお金持ちな男の人ではないと駄目なのではという諦めに似た気持ちになってしまう。


「そんなわけでわしのことをそれなりに監視してきた高下よ、わしの欠点を述べてくれんか」

「人聞き悪いなあ……うーん」


 まじまじと姫宮さんを見る。容姿は客観的に見たら相当な美少女だろう。勉強もできたはずだ。スポーツも女子の中ではできる方だとか。家柄もいいみたいだし、性格も別に悪いわけではない。口調が変だとは思うけどクラスメイトには普通に受け入れられているみたいだし、スペックが高いのは本当だから、自意識過剰すぎるというわけでもない気がする。わかりやすい姫宮さんの欠点を探して悩んだ末に、


「いくら可愛くてもトイレを自室のように扱って堂々と便所飯してるような女の子はちょっとね……」

「……」

「先に教室に戻ってるね」


 率直な感想を述べると姫宮さんは固まってしまう。そろそろ午後の授業の時間だ、教室に戻らないと。

 クラスメイトに姫宮さんが心では寂しいと感じながら便所飯をしている女の子とバラしたらどうなるだろうか。いい感じにそれが欠点となって姫宮さんの人気が……あがるわけないか。それこそ姫宮さんが言っていたヒロインみたいなぼっちになってしまうよ。僕は変な子に耐性ついてるからいいけど、やっぱり便所飯する女の子は駄目だ。ドン引きレベルだ。結局姫宮さんも、普通の人には言えない秘密を抱えているという、ありがちなヒロイン像そのまんまなのだろうかと思うと、少し彼女が可哀想になってくるのだった。

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