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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
高校1年(下) 僕とメシアな彼女(メサコン)
86/107

約束された恋愛の成就

「まあ、そういうわけだから、代わりに百瀬に謝っておいてくれよ。それじゃな」

「逃げるな」


 全ては山本がヘタレだったがために僕がここまで苦労する羽目になった。

 せめて最後くらいは仕事を果たしてもらって、ハッピーエンドになって貰わないと、僕が報われない。

 気まずそうに去ろうとする山本の肩を掴んで強引に押しとどめる。


「あいつ俺に会いたくないんだろ? だったら代わりに謝ってくれよ」

「好きなんだろ? それでいいのかよ」

「つってももう手遅れだって。アイツを今まで放っておいた俺に恋心語る資格なんてないよ」


 肩をすくめてため息をつく山本。まあ、しょうがないよなという自嘲と諦めの念が見て取れるが、僕にはそれが不愉快だ。


「何でそんな冷静でいられるんだよ、危機感持てよ、絶対後悔するって」


 ちょっとすれ違ったくらいで恋を諦める、きっとそんな男女はいっぱいいるのだろう。

 僕なんてみたきちゃんと意思疎通の面でとてつもないハンデを背負っているのに、それでもみたきちゃんの事を理解し続けようと頑張っているのに、それを目の前の男と百瀬さんは諦めて、恋心を無かったことにしようとして。


「みたきちゃんとよろしくやってるお前にはわからないだろうけど、男女の恋愛は一方通行じゃ意味がないんだって。元々俺の片想いだったのに、好きな人にいたずらどころかあんな酷いこと言って、巻き返せるわけないだろ。いい勉強になったってことで、次頑張るさ」

「わかったような口を」


 僕の方がずっと男女の恋愛については経験も知識も持っているつもりだが、どうしてこういう人達は両想いなのにお互いの気持ちに気づかないのだろうか。


「とにかく、直接謝りなよ。月曜日の放課後、学校に来てよ。百瀬さんは僕が引きとめておくから」

「……わかったよ。じゃな」


 ここで『百瀬さんも山本の事好きだけど?』って言えば話は早いけど、僕としてはそう言うのは個人的には嫌だ。きちんと二人には勇気を持って想いを伝えて欲しいし、その上でハッピーになった方が絶対いいに決まってる。僕がするべきはさりげない手伝い。山本に月曜日に学校に来るように伝え、結局施設に入る事なく二人ともその場を去った。




「そんなわけで、両想いだけど不器用で鈍感な二人を今日くっつけるんだけど、やっぱムードとかって大事だよね。どんな感じにしようか」


 そして月曜日のお昼休み。今回で最後の作戦会議だと白金さんと乾さんを呼んで事情を説明する。


「……反対です! きっとすぐ別れます!」

「いいね、ロマンチックな感じにしたいね。いっそのこと、体育館倉庫に二人を閉じ込めるとかどうよ」

「そんなことしたら、あの男が本性剥き出しにしちゃうじゃないですか! 百瀬さんの貞操がピンチです!」

「体も心もつながって最高じゃねえか」

「大体そういうのは恋人同士になった後、段階を経て、最低でも1年くらい経ってからするもんでしょう! そんな体のつながりをすぐに求めるなんて間違ってます!」

「ぐはっ……い、いや、ウチは、愛がないから大丈夫……」


 反対する乾さんと、乗り気な体のつながりをすぐに求める白金さん。

 意見が合致したり食い違ったりする二人を仲裁しながら、ムードが良くて、おまけに僕達も楽しめそうなシナリオを考えていく。




「百瀬さん、一緒に帰りましょう?」

「え、いいの? 最近白金さんと一緒にいることが多いけど」

「何言ってるんですか、百瀬さんも私の大事な友達ですよ」


 放課後、乾さんが百瀬さんを誘って帰ろうとするのを見守る僕と白金さん。


「うひひ、ウチ嫉妬されてる? 嫉妬されてる?」

「shit」

「つまんねーぞ高下」

「……」


 やがて下駄箱についた百瀬さんが靴をとろうとし、中に一枚の手紙が入っている事に気づく。


「? この手紙……」

「そ、それってひょっとしてラブレターですか!? 誰からですか!?」

「えーと……話したいことがあるので、5時に屋上で待ってます……だって。うーん、差出人はわからないや。でも、どこかで見たような字ね」

「完全に告白ですね! きっとクラスメイトの誰かですよ、勿論行きますよね?」

「……うん、サボるのは相手に失礼だしね」

「告白されたら、付き合うんですか?」

「……どうだろう。今恋人いないし、好きな人もいないし、相手次第だけど多分付き合うかな」


 大袈裟に驚きながら、ちゃんと呼び出された場所に行くように勧める乾さん。百瀬さんは少し寂しそうな

 顔をしながら、待ち合わせ時間まで教室で待っておくと言って来た道を戻りだす。


「……これでいいんですよね、これで。ふんっ」

「ありがとう乾さん。そんなに怒らないでよ、山本は絶対百瀬さんを幸せにできる男だって」

「お前は百瀬の父親かよって話だな」


 友達を嫌いなタイプの男とくっつける手伝いをする羽目になった乾さんが不機嫌そうに隠れていた僕達の元へ。後はそろそろ山本が来るはずだから、屋上に向かわせて、そこで謝らせて告白させて、最高のムードを演出というわけだ。



「よう、高下。……そっちの女の子は、前にも会ったな。……何でそんな睨んでるんだ?」

「やあ山本。丁度いい時間だ、屋上に百瀬さん待たせてるから行ってきなよ」

「けっ……もう私は帰りますね、失敗談を楽しみにしてます」

「まあまあ、最後まで見届けようぜ」


 予定していた時間に山本がやってくる。山本の姿を見ただけでイライラしだして帰ろうとする乾さんを引きとめる白金さん。他校の制服という浮く身なりで、緊張しながら向かう彼についていき、屋上の扉を少しだけ開けて様子を窺う。



「よう……」

「え、ええっ、ええええっ!? な、なんで山ちゃんがここに」

「聞いてなかったか? 話があるって」


 山本の顔を見るなり慌てだす百瀬さん。そりゃそうだ、他校の生徒に呼び出されるなんて普通は想定しない。


「う、うん……知ってた、けど。そ、それで、話って」


 事前にきっと告白ですよと乾さんが煽っていたおかげで、百瀬さんは顔を真っ赤にしてどこか嬉しそう。


「その……こないだは、悪かった。怒鳴ったりして」

「ううん、山ちゃんが怒ってくれなかったら、私手遅れになるところだったよ」

「そうか……。いや、昔からお前を見てきたのに今まで何もしてこなかった俺が悪かった。とにかく、すまなかった」


 お互い顔を赤くしながら、気まずそうに話をする二人。鈍感な二人でも、これだけ顔を真っ赤にしていれば相手が自分の事を想っていると気づくはずだ。謝罪合戦はどうでもいいから、早く告白して欲しいものだと見守っていたのだが、


「……まあ、そういうわけだから。じゃあな」

「……え?」



「は?」

「はぁ?」

「あぁ?」


 話は終わりだと言わんばかりに、山本は帰ろうとするではありませんか。

 絶対に告白されると思っていた百瀬さんは顔が固まり、僕達三人衆は予想外のヘタレ度合にブチギレ。

 ああ、折角僕達がセッティングしてあげたのに、二人はまたもすれ違ってしまうのか、ネタばらしして無理矢理くっつけるしかないのかと嘆いた時、


「待ってよ。……あんまりだよ、酷過ぎるよ」

「ま、まだ何か気に障ることしたか? って、な、何やってんだお前」


 百瀬さんが立ち去ろうとする山本を後ろから抱きしめて引き留めようとする。恋する乙女はアグレッシブだ。


「話があるって、絶対に告白だと思って、すごい嬉しかったのに、それだけ? ねえ、本当は私の気持ちに気づいてたんじゃないの? どうしてそんな意地悪するの?」

「意地悪なんてするわけ……ま、待て、お前今何て言った?」

「だから! 告白されると思って嬉しかったの! 私山ちゃん好きなの! ねえ、私山ちゃんが思ってるよりずっと弱いよ、だから側にいてよ、じゃないと、じゃないと私……」

「……はは。……俺、馬鹿だったんだな。お前のこと、何もわかってなかった」


 泣き崩れながら想いを伝える百瀬さんと、自分がいかに鈍感かを理解して天を仰ぎ、困ったように笑う山本。どうやら逆転サヨナラ満塁ホームランとなったようだ。



「まるでパチンコの逆転演出だな」

「華の女子高生がそんな例えするのはどうかと思うけど……さて、僕達は帰ろうか」

「え、もう少し見ていましょうよ。多分この後キスとかしますよ?」

「乾さん、二人が付き合うの反対だったんじゃ?」

「それはそれ、これはこれです! それに悔しいけど、あの二人はお似合いだなって気がしてきました」

「とにかく出歯亀はやめとこうぜ、バレたら色々気まずいし」


 二人を祝福しながら、僕達はそっとその場から立ち去る。

 やれやれ、予定調和のハッピーエンドは少しつまらないね……というのは不謹慎なのだろうかと、理想の恋人について語る白金さんと乾さんを眺めながらニヤつくのだった。




「それじゃあまたね乾さん。私今からデートなんだ、ふふっ」


 数日後、放課後になるや否や、その場でくるくるとターンして幸せそうな笑みを浮かべた後、百瀬さんは教室を出ていく。


「はい、また明日……はぁ、百瀬さんが幸せそうなのを見て最初は自分も幸せな気分になりましたけど、流石に腹が立ってきましたね」

「おうおう、じゃあウチとデートするか?」

「え、白金さんソッチだったんですか。うわ……」

「心配してやったってのにそりゃないだろ!?」


 そんな彼女を見てため息をつく乾さんと、乾さんとすっかり仲が良くなった白金さん。

 百瀬さんは人が変わったように元気になった。実際変わったのだろう、孤独に耐えかねて、生きる意味を見いだせなくて、周りを闇に引きずり込もうとする亡霊はもういない。誰かのために、生きる喜びを手にすることのできた百瀬さん。彼女を変えたのは、僕か山本か友人か、それとも彼女自身か。

 まあ、何にせよお幸せに……と祝福しながら、僕もみたきちゃんを迎えに教室を出るのだった。

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[良い点] 結局同じ感じかよ。繰り返しか
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