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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
高校1年(下) 僕とメシアな彼女(メサコン)
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騎士は姫を家出させてしまう

「ありがとう百瀬さん、参考になったよ」

「ううん、あんまり参考にしない方がいいよ。私恋人できたことないし」

「いやいや、すごく参考になったよ。そうだ、ゲーセンでも行かない?」

「ゲーセンかあ……うん、最近行ってないしいいよ」


 みたきちゃんへのプレゼントの意見が欲しいという名目で百瀬さんを雑貨屋に連れて行き、店を出るころには午後3時になっていた。

 ここで百瀬さんに何かプレゼントでもするべきだったのかもしれないけれど、あくまで僕の任務は百瀬さんに気分転換をさせ、恋愛に目覚めさせることであって、百瀬さんを籠絡することではない。赤石さんのような悲劇を繰り返してはいけないから、絶妙な距離感を保たなければいけないのだ。


「高下君、ゾンビ撃とうゾンビ」

「え、百瀬さんそういうの好きなの? 意外だなあ」

「ストレス解消にはいいんだよ」


 ゲームセンターに入るや否や、嬉々としながら僕の手を引っ張ってゾンビを撃つゲームの方へ向かう百瀬さん。女の子がゾンビ撃ってストレス解消するのはどうなのかと思うけれど、百瀬さんは普通の人より遥かにストレスとかを溜めこんでいるだろうから、仕方のない話なのかもしれない。慣れたてつきでマシンガンをぶっぱなし、嬉しそうに死者を救済していく百瀬さん。百瀬さんは僕が思っているよりもずっと強くて、案外一人でも大丈夫なのかもしれない。

 その後もクイズゲームをしたり、UFOキャッチャーをしたりするうちに5時のチャイムが鳴る。小学生ならば家に帰らないといけないけれど、僕達はもう高校生だから何の問題もない……はずなのだが、


「……」


 百瀬さんを見ると、しきりにそわそわしている。まるでチャイムが鳴ったから帰らないといけないという強迫観念に支配されている昔の僕のようだ。


「どうしたのさ百瀬さん」

「その……ごめん、そろそろあそこに戻らないと。そろそろ講演が終わるから、椅子の片づけしないと」

「シンデレラじゃあるまいし。今日は用事でずっといなかった、これでいいじゃないか」

「駄目なのよ、高下君。そんな簡単に人は変われないわ。私よりずっと気が強いはずの山ちゃんだって、毎週のようにあの場所に来ているもの。今日は楽しかったわ、いい気分転換になったし、これならしばらくは耐えられそう」

「……せめて送迎させてよ」


 今日くらいはしがらみから解放させたかったのだが、そんな簡単に百瀬さんの人生を覆すことはできないらしい。本人がああ言っているのだしとりあえず目的は達せただろうと自己評価をしながら、百瀬さんと一緒に忌まわしきあの場所へ向かう。



 入り口の前まで来てお別れというところで、扉が開いて一人の男が出てきた。


「……百瀬に、高下?」

「山本」

「山ちゃん……」


 百瀬さんの言うとおりこの日もずっといたらしい山本が、僕と百瀬さんを見るなり眉間に皺を寄せる。こないだの件もある、百瀬さんが僕を誑かして、また勧誘していると思っているのだろう。誤解だとすぐにフォローを入れようとするが、


「高下、この女に関わるなって言っただろ」

「や、山本?」


 山本は百瀬さんではなく、まず僕を責めだしたのだ。不機嫌そうに僕の胸倉をつかみ、睨みをきかせてくる。


「お前はもう少し賢い奴だと思ってたのに、そんなにカルトにハマって破滅したいのかよ」

「違うよ山本、そんなんじゃないんだよ」

「そうよ山ちゃん、高下君はただ私が気分転換できるように」

「てめえは喋るんじゃねえよ!」

「山……ちゃん……?」


 僕のフォローを入れようとする百瀬さんにも、蔑むような目で睨む山本。もう少しクールな奴だと思っていただけに、ここまでムキになる理由が正直言って僕にはわからなかった。


「救えないやつだな、お前は。もう知るかよ、勝手に壊れてろ。……高下も、この女を救おうなんてもう考えるなよ。こいつはもう手遅れだよ、お前までこいつみたいになりたいのかよ」


 吐き捨てるようにそう言うと、僕を解放して不機嫌そうに去って行く山本。


「何だよあいつ、しばらく見ない間に嫌な奴に成り下がったなあ。気にしない方がいいよ、誤解してるだけなんだし」

「……」

「百瀬さん?」

「そう、そうよね。うん、気にしない、気にしない。ありがとう高下君、それじゃあまた学校で」


 百瀬さんは僕に笑みを浮かべて、後片付けをするため施設の中に入って行く。笑顔と言っても、まるで本当の末期信者のような、何かに絶望して偽りと知っていても神に縋ろうとする人のような笑顔だった。

 尾を引かなければいいのだけど、と不安になりながらも帰ろうとすると、


「おいおい、修羅場かよ」

「女の子にキレる男はサイテーですね」

「……は?」


 見知った顔がさも当然のように僕の前に立ちふさがる。


「お前と百瀬がデートだって面白そうな情報を聞きつけてウォッチしたはいいけど、本当にお前気分転換のために誘ったんだな。まあ彼女持ちが本気でデートしてたらウチはお前をボコして簀巻きにするけど」

「さっきの百瀬さん、すごく寂しそうな顔してましたけど大丈夫でしょうか……それもこれも、あのいけ好かない男のせいですよね、こないだの時も偉そうに百瀬さんと関わるなとか言ってたし」

「……」


 悪びれもなく僕達を尾行していたことを告白する白金さんと乾さん。人の恋愛気にするくらいなら、少女漫画の世界に引きこもらずに恋人作ればいいのに、と言ったら多分凄く睨まれるだろうから、僕はため息をついて二人に別れを告げて家に帰るのだった。



 翌週。先週に比べると少し持ち直したようにも見える百瀬さん。アフターケアも心掛けている僕としては、百瀬さんはきっちりと気分転換できているのか不安になりながら、若干ストーカー染みた視線を彼女に送っていたのだが、


「ねえねえ乾さん、今週の土曜日なんだけど、一緒に買い物行かない?」

「え、本当ですか? 勿論いいですよ」


 水曜日。百瀬さんが乾さんを休日に遊びに誘う。それもこないだのような勧誘でもなんでもなく、普通に買い物に行こうというのだ。毎週土日は座談会やらで遊べないと言っていた百瀬さんが。



「百瀬さん、サボる勇気が出たの?」


 嬉しくなって放課後、一人で学校を出て行った百瀬さんの横に並び話しかける。抜け出せないと諦めた百瀬さんが、抜け出す努力をしようとしているのだ。かつての僕のように、一歩を踏み出すことができたのだ。数か月後には、あそこから完全に抜け出して、普通の女の子として幸せを掴むことができるに違いないと、僕はこれからの百瀬さんの人生に期待を込めていたのだ。

 ところが、百瀬さんはすごく寂しそうな顔をして、


「……勇気っていうか、行きたくないの」


 今にも泣き出しそうな顔で弱弱しくそう言うのだ。

 行きたくない……本来ならば、それはとても喜ばしいことなのだろう。

 行きたくないけど行かざるを得なかった彼女が、その行きたくないという気持ちに素直になったのだから。だけど、その理由は宗教に束縛されない休日が楽しいとか、そんな素晴らしい理由ではないように思えた。


「一体何が……!」


 一体何が百瀬さんの心境を変えたのだろうと本人に聞こうとするが、その前に自分で悟ってしまう。

 乾さんを助けるために潜入したあの日。先週のデートの時に言っていた百瀬さんの失恋。そしてその後の出来事。僕の中でパズルのピースが埋まった。



「百瀬さん、やま」

「言わないでよ!」


 確信を持った僕が百瀬さんに確認するように言おうとしたが、ヒスを起こしたような声でかき消される。


「あれだけ軽蔑されて、救えない女だって言われて、見捨てられて、どうしろって言うの!? いいのよこれで、山ちゃんに出会うのが気まずいからあの場所には行きたくない、それで私は無事に更生できるの、ハッピーエンドなの! ねえ、これでいいんでしょ!? いいって言ってよ!」


 無理矢理ポジティブに考えようとする百瀬さんに僕は何も言えず、彼女が走り去って行くのを眺めることしかできなかった。

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[良い点] まーた似たようなパターン飽きるわ
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