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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
高校1年(下) 僕とメシアな彼女(メサコン)
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エピローグで救いたい

 ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら泣きじゃくる百瀬さん。

 僕に彼女を責めることなんて、できるはずがなかった。

 僕も多分、彼女と同じような人間なのだ。僕も彼女も、自分のために孤独な女の子を救おうとしてきた。

 僕は親身になることで。百瀬さんは宗教に勧誘することで。

 多分百瀬さんのやり方は間違っているのだろう。けど、僕のやり方が正しいわけでもない。

 みたきちゃんは僕にとって都合のいい女の子になったし、赤石さんは自殺未遂を起こした。

 人の人生を変えてしまったという点では、僕の方が百瀬さんよりも悪人かもしれない。



「……ずっとね、自分のやってきてることは間違ってるんだって思う時があったの。けど、周りの皆は私をいい人だって肯定するし、勧誘してきた人も私に感謝をしてきたわ。だから、自分は間違ってない、周りの人が幸せそうにしているのを見れば、自分も幸せになれる……けど、山ちゃんに怒られて、昨日ずっと部屋で悩んで。今日高下君に話を聞いてもらって、やっと、やっと目が醒めた気がする」

「偉いね、百瀬さんは」

「全然」


 涸れる程泣いた後、弱々しい笑顔をこちらに向ける。

 僕は、どうなのだろうか。僕が関わってきた人は、皆僕を肯定してくれている。

 赤石さんですら、僕は間違っていないと言ってくれる。けれどそれは、洗脳されてしまった信者による肯定のようなものなのかもしれない。



 似たような存在の僕が百瀬さんをどうこうしようなど烏滸がましい話かもしれないけれど、それでも今は百瀬さんをどうにかしないといけない。


「……これからどうしようか、百瀬さん」

「子供の頃からあそこにいたからわかる、あそこにいても、本当に幸せにはなれない。例え学生の頃はよくても、大人になればお金だって払わないといけないし、抜け出せない生活になる。……私、今まで誘ってきた人と話をしてみる。せめて自分が誘った人は、自分の手でなんとかしないと」

「そっか。正直言って僕は宗教を否定するような真似はしたくないけど、当人が間違ってるって言うのならそうなんだろうね」

「うん。……ごめんね、一歩間違えれば、高下君も私達の仲間入りだったね。そしたら、私は今でも自分は正しいって思ってたのかな。それとも、山ちゃんがどこかで私を叱ってくれたのかな……あはは、何このお弁当、しょっぱい」


 涙で濡れた白飯を口に運び、渋い顔をしながらもニコリと笑う百瀬さんだった。




「……ありがとう、高下君。色々迷惑かけたね。高下君と山ちゃんのおかげで、正しい道に戻れたような気がする。もう私は大丈夫」

「本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ。私を気に掛けるくらいなら、彼女さんを幸せにするか、乾さんの友達作りを手伝ってよ。さ、教室に戻ろうよ、授業が始まっちゃう」


 気づけばお昼休憩が終わろうとしていた。今朝に比べれば明るさを取り戻した百瀬さんに続いて教室へ戻り、午後の授業を受ける。


「またね、高下君。私は乾さんとお喋りしながら、謝ってくるよ」

「うん、またね百瀬さん」


 放課後になり、百瀬さんと別れてみたきちゃんを迎えに行くために一人学校を出る。

 これで百瀬さんの問題は解決したはずだ。割とあっさりと解決した気がするけど、それは百瀬さんが自分自身、行動に疑問を抱き続けていたからなのだろう。僕がいなくても、山本がいなくても、きっとそのうち自分で目が覚めたのかもしれない。もっともその時には、周りが手遅れになっていたかもしれないけど。


「だから僕のやったことは、間違ってない。正しいことをしたんだ」

「そうだよ、あたるくんはただしいよ!」

「ありがとうみたきちゃん。……そんな肯定されると、まるで僕が教祖様みたいだね」


 みたきちゃんと一緒に帰りながら、みたきちゃんは幸せなのか、数年後も幸せでいられるのか考える。実際今のみたきちゃんは、洗脳されて僕を崇拝する信者のようなものなのだろう。講演の時に胡散臭いと思っていた幹部の人と、僕は案外変わらないのかもしれない。


「僕は違う。僕は、自分を信じてくれる人は、幸せにしてみせるよ」

「わたしもあたるくんをしあわせにするよ!」

「うん」


 大勢の人を救おうとするから、間違った方向に行ってしまうのだろう。所詮僕は秀でた力もない男なのだから、みたきちゃん一人を救えれば、関わってきた数人の子を救えれば、それで十分じゃないか。決意を胸に、今日も僕はみたきちゃんと愛し合う。




「おはよう百瀬さん、乾さん」

「おはよう高下君」

「おはようございます高下君」


 教室についた僕は、ドラマの話をしている百瀬さんと乾さんに挨拶をする。

 あれから数日。百瀬さんは今まで勧誘してきた人と話し合って、どうにかしてあの宗教から脱退させたらしい。乾さんとも気が合ったようで、普通に友達として仲良くしている。

 ただ、かつての明るくて、いつも他人のために頑張っていた百瀬さんの姿はどこにもなかった。

 どちらかと言えば暗めで大人しい、赤石さんとか、出会った頃の郡山さんのような女の子。

 多分これが百瀬さんの素なのだろう。今まで自分が幸せを感じるために、無理して明るく振る舞って、無理して他人を助けようとしていただけだったのだろう。



 これで問題は解決したのかもしれない。

 百瀬さんは自分の間違いに気づいて、今までの罪を清算して、めでたしめでたし。

 けれど今の百瀬さんを見ていると、やりきれない。積極的に他人に関わろうと、他人を助けようとしなくなった百瀬さんを改めて見てみると、百瀬さん、親しい友人がいないんだなと思う。皆に好かれているだけ、頼りにされるだけで、自分の悩みを誰かに打ち明けることができるような相手がいなかったのだろう。以前僕に親が宗教やってて大変だと愚痴を言ったりしたのも、あの日百瀬さん親子が僕の家に来て、僕が百瀬さんの秘密を知ってしまったからに過ぎない。

 勧誘してきた人を脱退させることはできたけど、百瀬さん自身はあそこから抜け出すことはできていないし、大人になっても抜け出せないのかもしれない。



 やり方は脱線してしまったかもしれないけど、百瀬さんは今までいろんな人を助けてきたし、幸せのお手伝いをしてきたはずだ。今の百瀬さんは、はっきりいって償いばかりしている不幸な女の子にしか見えない。僕にできる範囲で、百瀬さんを幸せにできないものか。




「というわけで百瀬さんを幸せにしよう会議です」

「えと……」

「あ?」


 悩んだ末、僕は放課後に白金さんと乾さんを呼び集めて、対策会議を行うことにした。


「百瀬さんさ、色々あって大変なんだよ。だから力を貸してよ白金さん」

「はぁ? 何でウチが……大体お前、煉獄とか郡山とかの方が仲良いだろ」

「なんかカップルに相談するのって気が引けてさあ。気まずいっていうか。それに白金さん、乾さんに話しかけたら怖がられてショック受けたって言ってたじゃない。これを機に誤解を解こう、白金さんはモラルの欠片もないだけで怖い人じゃないって。乾さんも、白金さんは思ってるより怖くないよ。口だけだから」

「喧嘩売ってるだろお前……」


 これでも白金さんを精一杯フォローしたつもりだよ。白金さんはビッチでルールを守らないだけで、喧嘩も弱いしやる事もみみっちい女の子だって。


「わ、わかりました。よろしくお願いします、高下君、白金さん。私も、こないだ百瀬さんにひたすら謝られて、今も仲良くしてくれるんですけど、どこか下手に出てて、あんまり楽しくないんですよね。あそこの宗教にはもう行ってませんけど、百瀬さんのおかげで少し私も変われた気がするんです。今なら、他の人とも頑張って仲良くできそうなんです。だから、百瀬さんに恩返ししたいです」

「……ちっ、つうか何があったんだよ。いきなり陰気な女にクラスチェンジしてっけど」

「うん。簡単に言うとね……」


 あまり百瀬さんの事情を他人に話すべきではないと思っているけど、この二人なら大丈夫だろうと掻い摘んで話す。驚く乾さんと、顔をしかめる白金さん。


「百瀬さん、苦労してたんですね……」

「けっ、自業自得だっつうの」

「まあまあ。今までの百瀬さんは、他人を助けることで自分のモチベーションにつなげてたんだけど、今はもうそれができなくなってるみたいだからさ。代替案がないかなって」

「……お前のやり方が間違ってるとは思わないけど、同族だな。だからこそ、か」


 百瀬さんを助けようとする僕に呆れながらも、白金さんは思いつく限り人としてまともな趣味を羅列する。僕と乾さんも、百瀬さんに合いそうな趣味とかを考えて話し合い二十分が経ったところで、



「やっぱ恋だろ。恋愛だろ」

「ですよね! 少女漫画の醍醐味って、やっぱり読者が男の人に救われるヒロインに感情移入するところだと思うんですよ」

「おっ、乾さん少女漫画語れる口か。ウチもこう見えて大好きなんだよ少女漫画」


 百瀬さんは恋愛をすればいい、彼氏を作ればいいという結論になったようで白金さんと乾さんは少女漫画トークで僕を置いて盛り上がる。無事にこの二人は仲良くなれそうだ。



「……君達二人とも、彼氏いないのに恋人作ればいいだなんて無責任な」

「「は?」」

「すみません」


 息もぴったし。



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