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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
高校1年(下) 僕とメシアな彼女(メサコン)
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夏の終わりと新たな出会い

「お世話になりました」


 夏休みの間しっかりと本屋でのバイトを勤めた僕。お年玉の時より少し多いくらい、それでいて全て自由に使えるお金を手に入れるも、今まであまりお金を使って来なかったため使い道に困ってしまう。

 みたきちゃんに何かプレゼントをしようとは考えてはいるが、あまり高価な物を渡すのもどうかと思うし、でも折角大金が手に入ったのだから高価な物を買いたい気もするし。



「みたきちゃん、はいこれ」

「? たんじょーびはまださきだよ?」

「バイトのお給料が入ったからね。受け取ってよ」

「……うん!」


 悩んだ末に、みたきちゃんにそこそこ値が張るロザリオをプレゼントすることにした。

 嬉しそうにそれを首につけるみたきちゃん。まるで聖母マリアのようだ。


「あー……でもみたきちゃん、別にクリスチャンでもないのにロザリオつけて大丈夫かな……まあ、ここ日本だし大丈夫だよね」


 そういえば本来ロザリオはクリスチャンの身に着けるもの。ファッションとして着ける人が増えているとはいえ、みたきちゃんの家の宗教なんて知らないし、少し配慮が足りなかったか。アルバイトをして社会に慣れたつもりでも、まだまだ僕もお子様なようだ。



「それじゃ、僕はここで」

「うん! がっこうがんばってね! ねっくれすたいせつにするね!」


 いつものようにワークハウスでみたきちゃんと別れて、始業式のために高校へ向かう。

 夏休みも楽しかったけど、引きこもっていた時期があったからか学校がやはり恋しい。


「よう、乗るか?」

「おはよう白金さん。ウチの高校バイク通学OKだっけ?」

「駄目に決まってんだろ。近くのスーパーに停めるんだよ」

「事故らないようにね」

「へいへい」


 バイトで大金稼いで免許でもとったらしく、新品の小型バイクを自慢するように見せつけて、僕を追い抜いて行く白金さん。あれくらい自由な人間に、たまに僕もなってみたいなと思うことがある。僕には多分無理だけど。



「うっす高下。どうよ、日焼けしてカッコよくなっただろ」

「おはよう煉獄君。小麦色だね」

「何がカッコよくなったよ、焼き過ぎて痛い痛いわめいてた癖に」

「ははは……」


 教室に入ると、健康的な肌になった煉獄君と、呆れ顔の郡山さんが挨拶をしてくる。二人も夏をエンジョイしたようだ。そのまましばらく談笑していると、担任が入ってきて朝のSHRが始まる。そういえば僕を追い抜いて行ったはずなのに、白金さんの姿が見えない。どうせ今日は始業式だけやって解散だから、面倒くさくなってそのままふけたのだろうか。本当に自由な子だ。



 ともあれこうして高校一年生の二学期が始まった。3ヶ月引きこもっていたというハンデはあるが、煉獄君や郡山さんのおかげで何とかクラスで浮かずにやっていけている。情けは人のためならずとは、こういうことを言うのかもしれない。そして聞いた話では、白金さんはあの後教師に見つかって1週間停学になったらしい。自由にはリスクがつきまとうとは、こういう事なのだろう。

 みたきちゃんとも、結構な頻度でお医者さんごっこをしている。誰にも言えない、二人だけの秘密。

 僕もみたきちゃんを立派な女性として認識し始めてきたのか、段々罪悪感を感じる事も無くなった。それが良い事なのか悪い事なのか僕にはわからないけど。



「やあ高下君」

「やあ赤石さん。そろそろ退院かな?」

「うん。退院したらどうしようかな、在宅ワークでもしながら、賞に応募する小説書いて……」

「人生満喫する気満々だね」

「折角助かった命なんだ、楽しまないと」


 定期的に赤石さんのお見舞いもやっている。当初の予定通り、もうすぐ赤石さんは退院できるらしい。赤石さんの人生は、今後もハードモードだろう。まともな仕事だって、恋愛だって、多分彼女にはできやしない。それでも、赤石さんは人生を謳歌するつもりでいた。化け物のようだけど、赤石さんはいい笑顔をしていた。赤石さんは確実に人生を楽しめる、そんな根拠のない自信が今の僕にはあった。




「……よう」

「あ、お勤めご苦労様です白金さん」

「馬鹿にしてんのか! 親にどれだけ怒られたと思ってんだ!」


 新学期が始まって一週間、みたきちゃんと別れて学校まで歩いていると、後ろから走ってきたのか白金さんに声をかけられる。停学は無事に解除されたようだ。


「援助交際の方がばれなかっただけ、マシだって思うんだね。そっちは退学レベルでしょ」

「うっ……ああでも夏休み終わって頻度は少なくなったとはいえ、ウチなんだかんだ言って馬鹿だからお前の時みたいに自爆しそうなんだよな……高校在学中は大人しくするべきか?」

「それが賢明かもね。普通に彼氏とか作れば?」

「あー、それもアリかもな……何かバイク買ったらお金に対する執着心も少し薄れてきたし……一度きりの自分の人生、悩むなあ」


 一度痛い目を見て少し懲りたらしい白金さん。彼女が今後社会に矯正されていくのか、自分を曲げずに自由に生き続けようとするのか、それは未来だけが知っている。夏休み中に割と仲良くなったクラスメイト、できれば退学にはなって欲しくないものだけど。




「それじゃ、またあしたね!」

「うん、また明日」


 ある日の放課後、いつものようにみたきちゃんを家まで送り届けて自分の家へ戻る。

 父親は仕事、母親は買い物で家に誰もいない。まだまだ暑い9月、クーラーの効いたリビングでニュースを見ながらジュースを飲んで残暑を満喫していると、チャイムが鳴る。両親なら鍵を持っているから普通に入ってくるだろうし、宅配だろうか。

 玄関の扉を開けると、親子と見られる二人の女性が立っていた。


「こんばんわ。お母さんかお父さんはいるかしら?」

「いえ、僕一人ですけど。何か御用でしょうか?」

「実は私達、聖書の素晴らしさを説いているんだけど、あなた聖書は読んだことあるかしら?」

「いえ……申し訳ないですが、今忙しいの……で……ん?」


 どうやら宗教の勧誘のようだ。聖書と言っているあたりキリスト系なのだろう。ともあれ僕は今の所宗教に興味はないし、親にも宗教の勧誘は相手にするなと言われているのでお帰りいただこうと思っていたのだが、娘さんの方を見て驚愕する。


「百瀬さん……だよね?」

「あっ! 高下君!?」


 母親? に隠れるように立っていたのは、同じクラスの百瀬操ももせ・みさおさんだったからだ。白金さんがノーマルなヤンキースタイルならば、こちらは黒髪ストレートの悪く言えば地味だが、良く言えば清楚スタイル。ほとんど会話したことはないが、世話焼きで性格の良い人間という評判を耳にする。


「あら、操の知り合い?」

「ええ、同じクラスで」

「えーとえーと、お母さん、帰りましょ? 彼には私から言っておくから、ね?」

「……そう、操がそう言うなら。それじゃあ、お母さんやお父さんにもよろしくね?」


 勧誘相手がクラスメイトだと気付くや否や気まずくなったのか慌てて帰ろうとする百瀬さん。母親の方はにっこりと僕に微笑むと、百瀬さんを連れて去っていってしまった。お母さんやお父さんによろしくと言われても、パンフレットもくれなかったし結局どこの団体なのかすらわからなかったが。



「……お願い、黙ってて!」


 翌日。お昼ご飯を食べ終えてトイレに向かう途中、慌てて走ってきた百瀬さん。

 どうやら昨日の件を言っているのだろう。


「別に誰にも言わないよ」

「本当? ありがとう……違うの高下君、私は別にね? 宗教とか興味ないの」

「親が入信しているから付き合わされてるんでしょ?」

「そう、そうなの、物分りがよくて助かるわ。考えてみれば同じクラスなのに、高下君とあまりお喋りしたことなかったよね。高下君病気でずっと休んでたみたいだし。その、きっかけはアレだけど、よろしくね」

「うん、よろしく百瀬さん」


 昨日の件は秘密にしておくと言うと、安心したようでよろしくと笑顔を見せる百瀬さん。

 こうして宗教の勧誘なんてきっかけながら、僕と百瀬さんは健全なクラスメイトとしての関係になったのだ。


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