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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
高校1年(前) 僕とネトゲな彼女(ひきこもり)
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お深い仲になったらオフ会へ

 手遅れになる前に時さん共々学校に復帰しないといけないと言い聞かせているのに、僕は特にアクションを起こすことなく、毎日朝から夕方までネットゲームをやって、みたきちゃんといちゃいちゃして、夜は勉強をしている。

 今は時さんと親密になってお互い打ち明けることが大事なんだから、これでいいんだよと自分に言い聞かせては見るものの、言い訳でしかないという想いの方が強いようで、虚無感が残るのみ。



 うだうだしている僕に追い討ちをかけるように、ある日の朝、いつものようにみたきちゃんを送った後に帰ろうとする僕に、みたきちゃんが包みを差し出す。


「じゃーん! あたるくん、はいこれ、おきゅうりょうがでたからぷれぜんとだよ」

「ありがとうみたきちゃん、中身は……」


 包みの中には、鉛筆や消しゴム、ノートといった筆記用具が入っていた。


「おかあさんになにぷれぜんとすればいいかなあってそうだんしたらね、あたるくんはいつもがっこうでおべんきょうがんばってるから、べんきょうにやくだつものにしなさいって」

「……そ、そっか。ありがとうみたきちゃん、早速使うよ」

「うん!」


 みたきちゃんと別れてこそこそと家に帰りながら、みたきちゃんのプレゼントを見てぽろぽろと涙をこぼし始める。みたきちゃんの両親は僕をかなり信用している。小学校の頃からみたきちゃんと仲良くしてくれている、有名な進学校に通う優しい少年だと思っている。

 本当はみたきちゃんをストレス解消に使っている、不登校の心汚い男だというのに。

 全てを知れば、僕はみたきちゃんともう会わせてもらえないだろう。そんなことになったら僕はもう完全に壊れてしまうだろうから、母親には口止めしてもらっている。




「やあ赤石さん、調子はどうだい」

「……私の調子を気にしている場合じゃないでしょ、高下君は。お見舞いに来る頻度が増えているよね、人恋しいんじゃないの? だったら行くべきはこんな病室じゃないでしょ」


 彼女の言うとおり、それまで週に1度土日に行っていたお見舞いが、いつのまにか平日にも行くようになっていた。毎日が休日になりつつなっている。


「お見舞いに来たって私に学校に行けって説教されるだけなのに、高下君はマゾなの?」

「……ははは」

「はははじゃないよ。今の高下君は、お見舞いすら学校に行かない言い訳にしているようで見苦しいよ」

「赤石さん、性格きつくなったね」

「じゃあ慰めて欲しいの? 私のせいで高下君壊れちゃったねごめんね、責任とって私が養うから高下君はずっとひきこもっていればいいよって? 責任感じてるからこそだよ、例え高下君が傷つこうと、絶対に高下君は学校に行かないといけないって、私は信じているから」

「……またお見舞いに来るよ」

「もう来なくてもいいよ、今の高下君見てたらイライラするから」


 もう来なくてもいいよとまで言われてしまい、僕は返す言葉もなくうつむいて病室を出る。

 わかってるよ赤石さん、このままだと一生傷つく羽目になるって。




『おはよう中君。さっき4人パーティーに誘われたけど断っちゃったよ。2人くらいが丁度いいと思うんだよね、私は。中君はどう思う?』

『おはよう時さん。そうだね、船頭多くして船山に登るって言うしね』

『うんうん、中君は私がログインしている時間帯には大抵ログインしているから助かるよ、流石ヒッキー』

『時さんもでしょ』

『へっへっへ』


 赤石さんとの仲が険悪になるのとは反対に、一緒に冒険をし続けたことで時さんとはそんな皮肉めいたことを言い合うくらいまでの仲になっていた。そろそろ踏み入った話をする頃合だろうかと思いながらいつものようにお昼時にみたきちゃんのパンを食べて帰宅する。


『おかえり中君。……ところで聞いていいかな。中君の知り合いっていう、例の晒された子の話。気になってさ』

『……まあ、いいけどさ』


 本人に許可を取るべきなのかもしれないけれど、僕は時さんに赤石さんの事を、それとなく僕については濁しながら伝える。

 火事で火傷を負い、周りの人が離れて行き、インターネットに晒された事で精神を病み、自殺未遂を起こしたと。今は夢を叶えようと、生きようと頑張っていると。


『そっか。そんな辛い目にあっても頑張ってるのに、えらいね。怖いもんだよ、今までの当たり前が崩れていくのは。写真見たけど、火傷していない方はかなりキレイな顔立ちだった。天国から地獄、最初から顔の醜いであろう中君よりも、ずっとその子の方がダメージは大きいんだろうね』


 もしも、もしも僕が中学一年生の時に赤石さんに声をかけなかったら。

 赤石さんが分厚いメガネの地味な女として、孤独な学生生活に慣れていたら。

 例え火傷を負ったとしても、あそこまで壊れることは無かったのだろうか……と考えてしまうくらい、僕は自分のやってきたことがわからなくなっていた。



 それはともかく、時さんがこういう質問をしてきたということは、僕も時さんについてもう少し踏み込んだ質問をしてもいいはずだ。


『ところで時さんは、どこの高校なの?』


 軽いジャブのつもりでそう問いかけてみたが、


『私? 本街だよ。中君は?』


 返ってきたのは、とんでもないカウンターだった。

 本街。そう、僕の通う高校。

 つまり、僕と時さんは、同じ高校に通う同級生ということになるのだ。


『……秘密』

『自分から聞いておいて教えないなんて……あ、ごめんごめん。そうだよね、中君はとんでもない偏差値の低い高校だから恥ずかしくて言えないんだね。ブサイクだから不良にいじめられて不登校になったんだね、きっと。心中お察しするよ』


 目の前で言われたら殴ってしまいそうなレベルに失礼な煽りをする時さんではあったが、僕の頭の中は時さんが同じ高校という一点に支配されていた。

 それまではネットゲームで彼女とチャットをしながら、お互い学校に行けるように勇気づけあうなんて展開を考えていたが、同じ高校だったら話は別だ。

 二人とも学校に復帰すれば、顔を合わせることになる。

 だったらいっそ、



『時さん、オフ会しませんか』


 ネットゲームじゃなく、お互い顔を合わせて、心の中のもやもやを全て吐き出して、二人で学校に復帰すればいい。だから僕は時さんに、リアルで会わないかと誘いをかける。


『突然だね。あれかな、今流行の出会い厨かな』

『折角近くに住んでいて年も同じで不登校っていう共通点があるんだしさ、どうかな?』

『えー、でもリアルの中君って、そのアバターみたいな人なんでしょ? 私こんな人見たら失礼だけど爆笑しちゃうかもしんないよ』

『僕は別にそれでも構わないよ。時さんに興味があるんだ、駄目かな?』

『そこまで熱心に口説かれたらしょうがないにゃあ。いつにする? ネットゲームやってる時間帯なら、私はいつでもいいよ? 場所はどうする?』


 こうして僕と時さんは、会うことになった。





「いってきます、みたきちゃん」

「いってらっしゃい!」


 この日、みたきちゃんを送った僕はそのまま近くにあるファミレスへ行く。

 そこで時さんと会うことになっているのだ。

 時さんに会って、僕も時さんと同じ高校だって打ち明けて、時さんの抱えている心の闇も、僕の抱えている心の闇もお互い吐き出して、二人で一緒に、学校への一歩を踏み出すんだ。



「いらっしゃいませー、お好きな席へどうぞ」


 店内に入った僕は辺りを見渡す。

 女子高生らしき人間はどこにもいない、まだ時さんは来ていないのだろうか。

 とりあえず先に場所取りをしておこうとテーブル席に座り、時さんが入店するのを待つ。


「……」


 約束の時間を10分過ぎたが、誰もファミレスに入ってこない。

 ひょっとして既にお店の中にいるのだろうかと立ち上がりあたりをうろつく。

 平日の朝にファミレスにいる学生なんてまずいないだろうし、目印とか全然考えていなかったな、最悪ハンドルネームを叫べばわかるかなと思いながら店を探すが、やはり若い女性はどこにもいない。ひょっとして遊ばれたのかなあと不安になりながらテーブルに戻ろうとすると、


「……ひょっとして、君が中君かな?」


 後ろから声をかけられる。僕を中君と呼ぶ女性の声。間違いなく時さんだ。


「時さ……え……?」


 しかし振り向いた僕は彼女の姿を見て驚いてしまう。

 だって、どう見ても彼女は……


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