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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校3年(後) 壊れる僕と赤石さん(メンヘラ)
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しゃがれた声のラプンツェル

「それじゃ、またね赤石さん。メールとかするから」

「うん、またね。私は大体暇だから」


 二学期の終業式を終えた僕は赤石さんと別れてみたきちゃんを迎えにいく。明日から冬休みだ。

 養護学校の前で空を見上げているみたきちゃんに声をかける。


「おまたせみたきちゃん。どうしたの?」

「……ゆきふらない」

「今年は暖冬らしいからね……でも何か冬っぽいことしたいね」


 残念そうにつぶやくみたきちゃんのマフラーがほどけていたのでそれを結びなおしながら、僕も空を見上げる。雪なんて振りそうにない、快晴だ。

 みたきちゃんと雪だるまを作ったり雪合戦をしたりかまくらで遊びたいのもやまやまだが、

 残念ながら雪が降るのは来年の、丁度受験の時期になるらしい。


「ふゆ……すきーしたい!」


 言いながら両手を突きだしたり引っ込めたりするみたきちゃん。

 気合を入れているのかと思ったが、どうやらストックを扱っているようだ。


「スキーかぁ……でも、スキー場は流石に遠すぎるし、危ないかな。スケートなんてどう?」

「すかーと? きょうはずぼんだよ?」

「違う違う、近くにスケートリンクがあるから、そこですべ……」

「?」


 スキーは確かに楽しそうだが、この辺りにスキー場はない。

 僕もみたきちゃんももう中学3年生にはなったが、まだまだ二人で遠出は難しいだろう。

 今思えばよく昔、ろくに外出したこともないのにみたきちゃんを連れてクリスマスに遊園地へ行ったものだ。あの頃の僕は若かった。

 一方スケートリンクなら近場にあったはずだ。そこで滑ろうと言いかけて口をつむぐ。

 受験生にとって滑るは禁句だった。オカルトを信じない僕ではあるが、やはり気にしてしまう。

 ともかくみたきちゃんとスケートで遊ぶ予定を立てた僕は、早速翌日にみたきちゃんを連れて近くのスケート場へ。



「うごくのむずかしいね」

「しっかり掴まっててね……ぎゃあ!」

「あたるくん、だいじょうぶ?」


 みたきちゃんは運動神経がいいからスケートも難なくこなせるのかと思ったが、

 うまく滑れずに立ち往生。そんなみたきちゃんを支えるべく手をつないで一緒に滑ろうとしますが、

 僕はみたきちゃん以上にセンスがなかっかのか盛大にこける。


「く、くくく……盛大に滑ろう。ジンクスなんか知るもんか」

「うん!」


 ここで滑りまくれば、失敗しまくれば、本番では滑らない、失敗しない!



「いっぱいすべったね! またね!」

「うん、また遊びに行く時は誘うよ」


 たっぷりみたきちゃんと滑ってデートを堪能しみたきちゃんと別れた僕は、


『明日なんだけど、映画見に行かない? 空いてる時間帯にさ』

『うん、勿論いいよ。丁度見ようかなと思ってたのがあったんだ。市内前の映画館だよね?』


 すぐに赤石さんにメールを送り、映画デートをセッティング。

 赤石さんに配慮して、冬休みとは言えど平日の午後2時あたりなら空いているだろうと考える。


「今日はよろしく、高下君」

「うん、それじゃ行こうか。服のセンスいいね」

「……服装で精一杯取り繕っても、どうにもならないけどね」


 翌日の昼ごろ、最寄の駅前で待っていると赤石さんがやってくる。

 私服のセンスの良さが赤石さんの悲壮感漂う半ミイラ顔を強調しており、逆に痛々しかった。

 そのまま電車に乗って市内へと向かい、映画館へ。

 僕の予想通りこの時間帯は人が少ない。これなら赤石さんも割と平気だろう。

 赤石さんが前々から見たかったという恋愛映画を見ることに。

 自分に自信のない女の子が男の人を好きになるけど、自信がなくて告白するどころか恋まで諦めそうになる。

 だけど友達などのアドバイスもあり自分を高めていくうちに、実は向こうも最初から主人公の事を好きでしたと判明。めでたしめでたし。

 確かに赤石さん好みの映画だろうな、とチラっと横に座る赤石さんの表情をうかがったが、


「……」


 その目は酷く退屈そうで、つまらなそうだった。

 映画を見終えた僕達は、すぐ側の喫茶店でお茶をしながら映画の感想を話し合う。


「チョー面白かったね」

「うん、マジ泣けたし」


 同じように映画を見ていた人間が近くの席でそんな事を言い合う中、


「つまんなかったね」


 赤石さんはそう呟くと、注文したコーヒーにミルクも砂糖も入れずにすする。


「赤石さん好みの話だと思ったけど」

「……うん、好みの話……だった。でも、何て言えばいいんだろう、今の私にとっては、何か違うんだよ。原作好きだったし、前から映画楽しみにしてたはずなんだけどね。よくわからない」


 店の外を眺める赤石さん。

 店の外にいたカップルが、こちらを指差して笑っているのが見えた。


「……トイレ行ってくる、20分くらい」


 そう言ってトイレに向かう赤石さん。

 きっとトイレの個室で泣いたりするのだろうと思いながらも、僕は何も言えなかった。



「今日は楽しかったよ……って言うと嘘になるのかもしれないけど、流石に高下君に失礼すぎるか。また遊びに誘ってよ」

「うん、また誘うよ」


 赤石さんとのデートを終えて別れる。さて、次のみたきちゃんとのデートを考えないと。



 バランス重視の僕はみたきちゃんと赤石さんと交互にデートをする。

 みたきちゃんと鍋パしたり、赤石さんと美術館に行ったり……

 色々悩んだ末クリスマスは、


「りょーてにはな?」

「私は枯れた花だね」

「やめなよもう、赤石さんったらこんな時に」


 ダブルデートをすることにした。ダブルデートって言うのかなこれは?

 みたきちゃんと赤石さんと一緒にクリスマスの街中をぶらつく。

 雪は降らないけれど煌びやかなイルミネーションにみたきちゃんははしゃぐ。

 けれど赤石さんはちっとも楽しそうではなかった。

 アッパーなみたきちゃんと、ダウナーな赤石さんと同時に行動するのは、やっぱり失敗だっただろうか?



「おう、高下じゃねえか」

「……! 煉獄君! 郡山さん!」


 そんな感じに3人でぶらついていると、偶然煉獄君と郡山さんに出会う。

 1つのマフラーを2人で共有している。随分と仲が進展したものだ。


「メリークリスマス、高下君達もデートかな?」

「めりーくりすます!」

「うん、みたきちゃんと……あ、あれ?」


 赤石さんを二人に紹介しようとするが、気づけば赤石さんが消えていた。


「どうしたんだ高下、彼女さんと二人でデートしてるんだろ?」

「え、いや、二人じゃなくて」

「それより聞いてくれよ高下、この間氷雨とスケート行ったんだよ。氷雨ったらさ、『受験生なのに滑るとか馬鹿じゃないの?』とか言ってたのにさ、いざスケート行ったら大はしゃぎでさ」

「そ、それを言わないでよ。アンタなんて図体でかい癖にうまく滑れなくてガクガク震えてたじゃないの」

「何だと、大体お前こないだだって……」


 二人の話を聞きながら赤石さんを探す。

 近くの電信柱に隠れて、こちらの様子をうかがっている赤石さんが見えた。


「っと、悪い悪い、勝手にべらべら話しちまって。それじゃあな……なあ氷雨、疲れたから休憩しようぜ。あそこのホテルなんてどうだ?」

「調子に乗るな。またね、高下君」


 二人と別れた後、


「……行ったよ」


 隠れていた赤石さんに呼びかけると、ホッとため息をついてこちらに戻ってくる。


「……ごめん。何か、体が勝手に隠れてた」

「……うん、何となくだけど、赤石さんの考えてることわかるよ」

「何か、高下君に申し訳ないのと、ああいう幸せそうな存在が怖いのと、何なんだろうね、だんだんおかしくなってるね、私」

「それよりおなかすいた! けーきたべよ!」

「……そうだね。よし、みたきちゃんも赤石さんも、今日は僕の奢りだからケーキ食べ放題だ」



 落ち込んでいる時は甘いものと相場は決まっている。

 いつものケーキショップでたらふく3人でケーキを食べて、クリスマスを楽しんだ。



 クリスマスを終えた後も、除夜の鐘をついたり初詣に行ったりと、二股ライフを続ける。


「どうしたんだ? 勉強疲れか?」

「……大丈夫だよ。もう冬休みも終わりだね」


 疲れが顔に出ていたのか、冬休みの特別講習で煉獄君に心配される。

 流石の僕も毎日のように二人とデートをすればくたくただ。

 しかもアッパーなみたきちゃんとダウナーな赤石さんとでは、対応だって色々考えないといけない。


 けど、冬休みが終わった後は。

 僕は受験に受かって、

 みたきちゃんも立派に働けるようになって、

 赤石さんはコンテストでいい結果を出して、作家として生きがいを見つけて、僕がいなくても大丈夫になって。

 とにかく、ハッピーエンドが待っている、そう思ってたんだ。

ラプンツェル……童話。


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