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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校3年(前) クールな彼女(いじめられっこ)
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クールな彼女は告白される

 煉獄君を煽ったその日の晩、僕は不思議な夢を見る。

 いわゆる明晰夢で、公園で小さな男の子と小さな女の子が遊んでいるのを、僕が眺める夢だ。


『氷雨、俺達ずっと一緒だからな!』

『うん、私も煉獄君と一緒にいたい。中学校も高校も』


 仲良さそうな男女が、ブランコを漕ぎながら楽しそうに喋っている。

 これは、小学校低学年くらいの煉獄君と郡山さんかな?


『中学校は地元のところに行けばいいけど、高校は受験しないといけないんだよな。俺頭悪いからなあ』

『私は煉獄君と一緒なら、どこの高校でもいいよ』

『いやいや、氷雨は頭がいいんだから、ちゃんとレベルの高い高校に行かないと。ここらへんで一番頭のいい高校ってどこなんだ? 共学の』

『ここらへんだったら、確か本街高校かな……?』

『よし! だったら一緒に本街高校に行こう! 俺頑張るからさ!』

『……うん、約束だよ』


 楽しそうに指切りげんまんをする二人。

 この年でこんなに二人は仲が良かったなんて、意外だな。

 これは所詮夢だけど、

 何故だかこれは本当にあった出来事なんだと確信できる。


 場面は変わって、少し背の伸びた煉獄君と郡山さんがランドセルを背負って一緒に学校を出ようとするところになる。


『うわ、煉獄女と帰ってるー』

『もてもてじゃー』


 同年代の男子だろうか、郡山さんと一緒に帰ろうとする煉獄君をからかう。

 まったくこの年代の男子は本当にデリカシーがない。そんなことをすれば、


『お、俺ちょっと用事あるから先に帰るわ、じゃあな!』

『え、あ……うん』


 ほうらみろ、二人の間に亀裂が入り始めたぞ。

 からかわれた煉獄君は顔を赤くして、逃げるように郡山さんの元から走り去る。

 残された郡山さんはうつむきながらとぼとぼと歩くのだった。

 この日を境に煉獄君と郡山さんが一緒にいる頻度は下がっていき、

 煉獄君はクラスの男子とつるみ、郡山さんは煉獄君をみつめながらほとんど一人だ。

 郡山さんずっと寂しそうにしているのに、何をやっているんだ煉獄君は。

 男子にからかわれたくらいで交流しなくなる程度だったのか?



 更に場面は変わる。小学校高学年くらいだろうか。


『なあなあ、郡山っていつも暗いし一人だし、キモいよな』

『え、それは……』

『あいついつも成績トップなんだよな、俺が親に褒められないのも全部あいつのせいだ』

『わかる、たまに俺達の方見てくるしうざいよな、嫌がらせしようぜ』

『いや、それは駄目だろ』

『おいおい煉獄、お前女の肩を持つのかよ』


 クラスの男子達とつるんでいる煉獄君。

 男子達はあろうことか郡山さんをいじめようと言うのだ。

 仲間外れにされるのが怖くて、郡山さんの味方をできない煉獄君。

 僕とみたきちゃんの頃も、きっとこういう人間はいたんだろうなあ。



『郡山』

『……どうしたの、煉獄君』


 その日の放課後、一人で帰ろうとする郡山さんを引きとめる煉獄君。


『おおおお前って本当ブサイクだよな、いつも暗いし笑わないし、ききききもいんだよ』

『……!』


 そそのかされて、言ってはいけないことを言ってしまう煉獄君。

 郡山さんはすぐに泣きそうな顔になって、ダッシュでその場から走り去って行く。


『やればできるじゃねーか、煉獄』

『さっきの顔見たか? 最高だったな』


 ゲラゲラを笑うクラスの男子達。

 こいつらを思い切りぶん殴ってやりたいが、夢の中の僕はどうやら実体がないらしく彼等に触れることができないのが残念だ。



 そこからしばらくは見たくもないし言葉にしたくもない。

 煉獄君を含めたクラスの男子による郡山さんへの苛めはエスカレート。

 男子はともかく、元々女子にもあまり快く思われていなかったのか郡山さんの味方をする人間は誰もいなかった。

 一応煉獄君も最初はそんな中でも郡山さんの味方をしようとしていたらしい。

 二人組を組む時に、わざと誰ともチームを組まずに自分を余らせて、同じく余ってしまった郡山さんと無理矢理組まされるようにしたり。

 けれど段々と煉獄君も疲れたのだろうか、そういうこともしなくなっていった。



 そして二人は小学校を卒業して中学校に。

 地元の中学校に進学した煉獄君がクラス分けの掲示を見るが、どこにも郡山さんの名前は無い。

 入学式の帰りに煉獄君が家に帰る途中、郡山さんと出会う。


『……郡山、その制服』

『……何か?』


 郡山さんは、近くの女子中学校の制服に身を包んでいた。その目は恐ろしいほど冷たかった。


『……別に。似合ってないな』

『あっそ。もう学校も違うんだから、話しかけないで』

『けっ、誰がお前なんかと。幼馴染だからって二人組で組ませられたり迷惑してたんだ、清々したぜ』


 決別する二人。

 かくして仲の良かった幼馴染は引き裂かれていきましたとさ。めでたしめでたし。






 というところで目が覚める。

 なるほど、あの二人にそんな過去があったのか。

 決別しても二人とも幼い頃に交わした約束を守ろうとしているのだから、

 きっとまだ手遅れじゃないはずだ。

 郡山さんだって、煉獄君の気持ちには薄々気づいているのだろう。

 それを受け入れることができないだけで。

 それにしてもどうしてこんな夢を見たのだろうか、

 今頃煉獄君も、自分の気持ちを思い出している頃なのだろうか。



 その日の放課後、いつも通りに塾へ向かい、いつも通り郡山さんの後ろに座る。

 時間になり講師がやってきて授業の準備を始めるが、煉獄君はやってこない。


「ね、高下君。……その、あの男いないし、隣に、座っていい?」

「……構わないよ」


 彼女にせがまれて郡山さんの隣に座る。彼女と同じ中学の女子に噂されようと僕は気にしない。

 今まで僕に迷惑がかかるからとデートの時に変装していた郡山さんが、

 塾でそんな事を言ってくるなんて。

 このままじゃ本当に郡山さんを取っちゃうよ? それでいいのかい、煉獄君。



「高下君、ゲームセンター行かない? 一度プリクラ撮ってみたくてさ」

「……別にいいけど、本当に僕でいいの?」

「当たり前じゃない」


 結局この日煉獄君はやってこなかった。

 塾を終えた後、やはりトイレで変装した郡山さんと一緒に近くのゲームセンターへ行く。

 そこで音ゲーをしたり、プリクラを撮ったり、まるで本当の恋人のように振る舞う。

 これだけ彼女に付き合っていれば僕も段々と、郡山さんの魅力に気づくものだ。

 最初はクールな子だと思っていたが、甲斐甲斐しくて可愛い女の子じゃないか。

 頭もいいし、きっといい奥さんになるよ。

 このままじゃ本当に僕は二股をかけてしまうよ、早くしてくれ煉獄君。


「あー、楽しかった。音ゲーって面白いね」

「郡山さん結構リズム感あるんだね」

「高下君はあんまりないね」

「今年もリズム感を貶されるのか、僕は……」


 ゲームセンターの前で背伸びをする郡山さん。

 僕は郡山さんと一緒に撮ったプリクラを眺める。

 プリクラですら郡山さんは変装を解こうとしなかった。誰も見ない場所なのに。

 やっぱり郡山さんは、僕に心を開いてなんてないということなのだろう。



「はぁ……はぁ……やっと、見つけた」

「煉獄君、どうしたのさ」


 そんな僕達の前に、煉獄君が立ち塞がる。遅いよ。

 先程まで僕達を探していたのだろうか息も切れ切れ。


「高下君の、友達?」


 煉獄君を見つけるや否や不機嫌そうに僕の後ろに隠れ、別人を装う郡山さん。


「郡山、郡山なんだろ? 何でそんな変装してるんだよ」

「……私に、何か用?」


 しかし長年一緒にいた煉獄君に通じるわけがない。

 諦めて変装を解き、真顔で煉獄君を睨みつける郡山さん。


「郡山、高下と別れた方がいい。高下には彼女がいるんだよ。お前の事は遊びのつもりなんだよ」


 僕を思い切りディスって郡山さんを説得しようとする煉獄君。

 郡山さんが大切なのはわかるけど、今の発言聞いた人間違いなく僕を最低な人間だと認識するよね。


「だから?」

「へ?」

「だから何? 高下君は私を守ってくれるよ? 仲間外れが怖くって私をいじめるような馬鹿な男とは大違い、私をちゃんと守ってくれるよ? 遊びのつもりだろうと、体目当てだろうと、高下君はあんたなんかよりよっぽど誠実な人間よ」

「だ、だからって」


 郡山さんもムッとして言い返し、そのまま二人は口喧嘩。

 僕と喋っている時より随分と活き活きとしているじゃないか、郡山さん。

 口喧嘩で段々と押されていく煉獄君。そりゃそうだ、郡山さんは正論ばっかり言ってるんだから。


「大体何でアンタが私の事を気にするのよ。関係ないでしょ、ほっといてよ」

「お、俺は……俺は……」


 しかし理屈が常に強いというわけではない。


「おおおおお俺はお前の事が好きなんだよ! だから高下と別れろ! 俺と付き合え!」

「……っ!」


 直球の剛速球。素直な気持ちが理屈も何もかも打ち砕くこともあるのだ。

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