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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校3年(前) クールな彼女(いじめられっこ)
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クールな彼女を弄ぶ

「私と付き合ってくれない?」


 孤独な女の子に優しくする、そんな事を繰り返していればいつかはこうなるとわかっていた。

 ただ、僕は孤独な女の子を愛しているから優しくしているわけではない。

 みたきちゃんへの僕の感情は愛なのかもしれないけれど、

 それだってみたきちゃんが僕が最初に関わった女の子だからなのだろう。

 産まれたての小鳥が、最初に見た者を親と思うようなものだ。



「ごめん、僕には大切な人が」

「知ってる。彼女いるんでしょ、それも知的障害の」

「彼女じゃな……まあいいか。知ってたんだね」



 とにかく僕は二股なんてかけるつもりはないし、僕と彼女が付き合っても根本的解決にはきっとならない。

 真剣に僕を見据える彼女から目を逸らす僕。彼女の気持ちから逃げる僕。

 本当は僕はみたきちゃんからも逃げているのかもしれない。

 彼女に恋愛感情はわからないと、彼女との関係も曖昧なままにして。



「クラスの女子が、高下君と同じ小学校だったみたいで君の話をしてたよ。塾で君の名前聞いた時にああ、この人がかって。私も最初は体目当ての酷い人間かと思って軽蔑してたけど、違うんだよね。高下君はすごく優しい人なんだよね。あのバカな男から、あの女達から、私を守ろうとして」

「……僕はそんな大層な人間じゃないよ」

「体目当てだろうと、高下君は立派だよ。ねえ、間女でもいいからさ、私も守ってよ。高下君の望む事なら、一生懸命するからさ、体だって」

「やめてよ」

「……ごめん。どうかしてるわね、私。この話は忘れて」


 気まずい空気。告白されるというのがこんなに辛いことだとは知らなかった。

 僕の告白経験が、みたきちゃんだけだったから感覚が麻痺していたのかもしれない。

 話を切り上げて、走り去ろうとする郡山さんを引きとめる。


「待って、郡山さん。……その、気分転換とかなら、いつでも付き合ってあげられるから」

「優しいんだね、高下君。優しすぎても逆に相手を傷つけることもあるけど。でも折角だから、明日の塾の帰り、参考書選びに付き合ってもらおうかな。それじゃ、またね」


 今度こそ僕に背を向けて去って行く郡山さんを見送り、ブランコに乗って黄昏る。

 優しすぎるか。恋愛に疎い僕でも、郡山さんの言いたいことはなんとなくわかる。

 さっきの言葉だって、改めて考えてみればフった相手に言うべき言葉じゃない。

 彼女からすれば生殺しだ。



「女の子って難しいね」

「わたしむずかしいの?」

「そうだよ。僕だってまだ、みたきちゃんの事が全然わかっていないんだ。ま、男の子も難しいんだけどね。結局人間関係は難しいんだ。それじゃあね」


 みたきちゃんの僕に対する気持ちはライクなのかラブなのか、それともペットの主人に対する気持ちなのか。僕自身のみたきちゃんへの気持ちすら整理できていないのに、そんなことがわかるわけがない。


「赤石さん、実は僕別の女の子に告白されて断ったんだけど、その子の支えにはなってあげたいからデートとかは誘おうかと思うんだよね。どう思う?」

「死ねば? 相手の子が本当に可哀想。高下君女性と付き合う資格ないよ」

「ははは……」


『は? 高下君って自分の事優しい人間だと勘違いしてない?』


 赤石さんや六月六日さんにも助言をもらおうと思ったが、この通りすごく軽蔑されてしまった。

 だよねえ、身勝手な男にしか見えないよねえ、今の僕。

 悩みながらも時間は過ぎて、塾の時間。


「おう高下、最近塾の授業もかなりわかるようになってきたぜ、次の模試は負けねーぞ」

「それはいいことだね煉獄君」


 いつもの定位置に座って煉獄君と談笑していると、


「……」

「……」


 郡山さんも教室に入ってきて定位置へ。その際僕と目が合ってお互い顔を赤らめる。

 どうしても昨日の告白をお互い引きずってしまうらしい。


「……?」


 訝しがる煉獄君を後目に授業を受ける。今日は煉獄君による嫌がらせもなく、無事に授業が終わる。


「んじゃ、俺帰って勉強するわ。じゃな」

「うん、またね」


 授業が終わるとすぐに煉獄君は帰っていった。

 そういえば参考書選びに付き合うことになっていたと郡山さんに話しかけるが、


「……待って。変装してくる」

「別に僕は気にしないのに」

「私は気にするの。私と歩いてるところを学校の女子とかに見られたら高下君にまで迷惑がかかっちゃう」


 ご丁寧に別の服まで持ってきた彼女は塾のトイレで変装してくる。

 僕としては郡山さんと一緒にいることで風評被害を受けるより、

 ちょっと不審者っぽい郡山さんと一緒に歩く方が嫌なのだけど。

 まあ彼女自身外で学校の女子とかに出会うのが嫌らしいし、仕方ないよね。

 彼女が変装せずとも一緒に歩けるような人間に、僕はなれないのだ。僕では駄目なのだ。



「さ、いきましょ」

「まあいいけどさ……」


 変装した彼女と共に塾を出て、近くの本屋へ並んで歩く。

 本屋に到着し、彼女と参考書を選ぶ途中に少し踏み込んだ質問をすることに。


「ところであの高校目指す理由って何なの? 共学ならいじめが少なくなるって言ってたけど、本当にそれだけ?」

「昔ちょっと、ね。ある人と一緒にその高校に行こうって約束して。ま、もう約束なんてどうでもいいけど、別に他に目指したいところもないしね」


 ふむ、僕の予想していた答えだ。


「そっか。そういえば僕に守って欲しくて告白したんだっけ、郡山さんは。自分を守ってくれれば誰でもいいの? 僕、言っておくけどかなり女性にだらしない人間だよ」

「……それは」

「郡山さんを守ってくれるって条件なら、僕よりもっといい人がいると思うなあ。例えば」

「黙って。高下君が何を言おうとしてるのか、私には想像つくわ」

「へえ」


 かなり不機嫌そうになる郡山さん。変装で顔を隠していることも相まって刺されそうで怖い怖い。

 楽しい? デートのムードは一気に険悪に。もう帰るわと言い残して郡山さんは去っていく。

 いや、これでいいんだ。今の反応で確信した、彼女自身……




 それから数日、何事もなく日にちが過ぎる。

 煉獄君が郡山さんに嫌がらせをすることはなくなった。

 勉強に集中しているのだろうか、飽きたのだろうか。

 たまに僕と郡山さんを見比べて不機嫌そうになっている気がする。

 塾が終わると僕は気分転換がしたいと郡山さんに頼まれて、疑似的なデートを楽しむ。

 けれど毎回郡山さんは変装したままだった。

 結果的にこれじゃ彼女を間女にしているようなものだ、このままじゃいけないと思っていたのだが……



「あたるくん、このくれーぷおいしいね!」

「そうだねみたきちゃん。あ、クリームついているよ」


 週末、みたきちゃんとデートをする。

 近場にクレープの屋台が出来たので一緒にそこに行きクレープを食べていると、


「おう、高下じゃないか。こんなところで奇遇だ……な……?」

「煉獄君」


 ばったりと煉獄君に出会う。

 最初はにこやかな煉獄君であったが、僕とみたきちゃんを見ると、急に怒った顔になる。


「おい、その女は誰だ」

「みたきちゃん? 僕の女友達だよ」

「こんにちは!」


 みたきちゃんの明るい挨拶には目もくれず煉獄君は僕の胸倉を掴み睨みながら、


「お前、郡山と付き合ってたんじゃなかったのかよ。二股かけてたのかよ」


 そんなことを言いだすのだ。




「なんのことかわからないよ煉獄君」

「とぼけんじゃねえ! お前と郡山、いつも塾が終わった後二人で楽しそうにデートしてたじゃねえかよ!」


 見ていたのか、僕と郡山さんが一緒にいるところを。そりゃ付き合ってたと思われても仕方がないか。

 それにしても、変装してもやっぱりわかるんだなあ、幼馴染からすれば。


「あたるくんいじめないで!」

「みたきちゃん落ち着いて、僕は大丈夫だから。……で? 何で煉獄君が怒るのさ」

「あぁ?」


 煉獄君をボコボコにしようと既にファイティングポーズをとっているみたきちゃんを制止しながら、悪役っぽくニヤニヤしながら煉獄君に反撃開始。


「何で煉獄君が怒るのさ。大体煉獄君、郡山さんが嫌いなんでしょ? 郡山さんに不幸な目にあってほしいんでしょ? だったら問題ないじゃん、僕は郡山さんを遊んでポイする予定だから」

「……っ! いい加減にしやがれ! あいつの気持ちを踏みにじりやがって!」

「……! あたるくん、だいじょうぶ!?」


 片手で僕の胸倉をつかんだまま、もう片方の手で僕を思いきりぶん殴る煉獄君。

 こちとらみたきちゃんに振りまわされたおかげで耐久力はあるのでそこまで痛みは感じない。


「みたきちゃん、僕は大丈夫だよ。いい加減にするのは煉獄君の方だよ。いい加減自分の気持ちに素直になったらどうだい?」

「俺の気持ちだと?」



「煉獄君いい加減認めなよ、郡山さんの事が好きだってさあ」

「……はぁ?」


 僕もいい加減このバカ男には限界なので、はっきりと言ってやることにする。


「本当にガキだよね煉獄君って。中学3年にもなって好きな子にいたずらしてさ、相手は本気で嫌がってるのに。その癖別の子が郡山さんに嫌がらせしたり、僕が郡山さんと仲良くしてるとイライラしたりして、終いには彼女の気持ちを踏みにじった僕が許せないって。郡山さんの父親じゃあるまいし。そんなに大切なら、守ってあげればいいのに」

「な……な……」

「いたずらを辞めたのも、僕と郡山さんが付き合ってるって勘違いしたからなんだね。自分の想いを諦めたんだね。僕が郡山さんを幸せにしてくれるならいいやって、不機嫌になりながらも郡山さんの幸せを望んでたんだね。でもそれじゃ駄目だよ、僕じゃあ郡山さんを幸せにはできないから。郡山さんにはね、煉獄君が必要なんだよ。……と思ったけど、図体だけでかいヘタレの煉獄君じゃ無理だね。せいぜい僕が郡山さんを弄ぶのを指を咥えて眺めているといいよ。いこっか、みたきちゃん」



 煉獄君を煽りに煽ってノックダウンさせた僕はみたきちゃんの手をひいてその場を去る。

 さてさて、うまくいくといいのだが。

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