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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校2年 中二が厨二で何が悪い(中二病)
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六月六日にさようなら

「六月六日さんって、あんなギターうまかったんだ」

「高下君音楽の授業とかリズム感酷かったけど、なんかすごくうまくなってたね」

「ていうかあのキーボードの子誰だ?」


 僕達が演奏を終えて耳にするのは、それまでとはうってかわった周りの評価。

 そうか、僕音楽の授業で前までそんな事思われてたのか……

 ああ、それにしても腹が立つなあ! 一曲演奏しただけであいつらの手のひらの返しよう!

 こんなに嬉しい腹立ちは初めてだ!



「六月六日さんギターうまかったね、実は私もやろうと思ってたんだけど、どんな感じに練習すればいいかな?」

「そうだね、私の場合はエレキだけど、この本を参考に練習したよ。よかったらあげるよ」

「嘘!? ほんと!? ありがとう!」

「六月六日さんの今の一押しの音楽ってある?」

「そうだね、最近だと……」


 演奏を終えて、終業式までの数日間。

 孤立していた六月六日さんは、クラスメイトに一目置かれる存在に。



「まさかこんなに受け入れられるとはね。高下君のおかげだよ」

「感謝するのは僕やみたきちゃんの方だよ」


 女友達から解放されて、自分の席に座り僕を見て笑う六月六日さん。

 そう、感謝するのはこっちの方だ。

 彼女の成功は、僕やみたきちゃんに希望を与えてくれた。

 変わり者も、道を突き進めば個性として認められるのだ。

 孤独な人間に手を差し伸べようとする僕。

 普通の人間に比べて圧倒的に純粋すぎるみたきちゃん。

 今はまだ無理かもしれないけれど、いつかきっと僕達も。



 そして終業式を迎えた。明日から楽しい夏休みだ。

 夏休みが明ければ、もう六月六日さんはすっかりクラスの一員になれるだろう。あと僕も。


「ねえねえ六月六日さん、これから遊びに行かない?」

「あ、ごめん。今日はちょっと先約入っててさ。それじゃ、行こうか高下君」

「うん」


 放課後の教室、クラスの女子に誘われるもそれを断った六月六日さんは僕を呼ぶ。


「あ、デート?」

「いや、そんなんじゃないよ。高下君彼女いるし」


 そう、僕達は別にデートに行くわけではない。



「それじゃ、乾杯!」

「かんぱーい!」

「乾杯」

「……乾杯」


 カラオケボックスの一室に集いソフトドリンクで乾杯するエターナルアタック一同。

 今日はライブ成功の打ち上げというわけだ。


「何で私まで」


 ココアを飲みながら悪態をつく赤石さん。


「だって作詞作曲だよ? 貢献度で言ったら多分赤石さんが半分占めてるよ」

「今日彼氏とデートしようと思ってたんだけど」

「じゃあ何でこっちに来たのさ」

「……」


 彼氏には悪いが、赤石さんの優先順位はこちらが上のようだ。

 というか今考えたら作詞作曲を赤石さんに丸投げしたのはおかしかった。

 僕達皆で集まってするべきだった。済んだものは仕方ないし、自分の曲が絶賛されて赤石さんも満足げだからいいけどさ。


「またえんそうしたいね!」

「そうだねみたきちゃん。文化祭とか機会があったら、またやりたいね」

「私はもう参加しないわよ。作詞作曲あなた達がやることね」

「……そうだね」


 今回限りで解散してしまうのは我ながらもったいない。

 エターナルアタックが音楽界を変えていく妄想をしながら、流行りの曲を歌う。


「リズム感はマシになったけど、音痴ね」


 耳を塞ぐジェスチャーをしながら赤石さんがにやにやと笑う。


「まあそこが高下君らしいっていうか」


 六月六日さんがよくわからないフォローを放つ。


「あんまりうまくないね」


 みたきちゃんがとどめの一言。


「……」


 僕はそっと演奏中止のボタンを押した。


「ごめんごめん、拗ねないでよ」


 代わりに六月六日さんが洋楽を入れて歌いだす。

 流石はエターナルアタックのボーカル、素晴らしい歌声だよ。

 それにしてもそんなに僕の歌声酷いんだろうか?

 自分の声って自分が聞く分には違った声に聞こえるみたいだから、今度録音してみようっと。



「……すー」


 気が付いたらみたきちゃんは歌い疲れたのかすやすやと寝ている。可愛いなあ、いたずらしたいよ。

 ……いたずらしちゃおうっと。ほっぺぷにぷにくらいなら許されるかな?


「高下君、他の女の子もいる前でそういうのはどうかと思うな」

「え? あ、あはは……」


 赤石さんに突っこまれて我に返る。そうでした、TPOは弁えないとね。


「まったく高下君は……そうそう、私転校するから」


 アイスコーヒーを飲みながら微笑む六月六日さん。そっかー転校しちゃうのかー。




「「ってはぁ!?」」


 思わず間抜けな声を出す僕と赤石さん。だが当然の反応だろう。


「え? 冗談だよね?」

「冗談じゃないよ。夏休み中に家庭の都合で転校することになってる。夏休み明けたら私はもういないよ」

「そう……なの」


 唐突につげられた事実に僕も、あまり六月六日さんとは交流していない赤石さんも押し黙る。


「もう中学二年になる前から、転校する事は決まってたんだ。だから、半年でおさらばだから、本当の自分を曝け出そうって思って。嫌われてもどうせ転校するんだから。転校先では、また中学一年の時みたいに、周りに同調した人間として生きていこうって、そう思ってた。でも」


 リモコンで曲を入れながら、涙を流し始める六月六日さん。


「高下君達と出会って、色々愚痴とかぶちまけて、受け入れてもらって。最終的にはバンドやって、皆に認められて。すごく嬉しかった。だから、だから」


 曲のイントロが流れ始める。彼女はマイクを手に取って、涙声で、


「私は転校しても、このままでいきます。……聞いてください、私の想い」


 ボロボロと涙を流しながら、僕よりずっと音痴な声で、しかしはっきりと、自分の想いを歌に込めた。






 それから1か月後。夏休みが明けた、けれどまだまだ暑い、そんな日。


「えー、実は六月六日さんは、ご家族の都合により転校しました」

「「「ええーっ!?」」」

「……」


 教師が彼女はもうこの学校に来ない事を伝え、教室は騒然とする。

 そんな中、既にその事実を知っていた僕は押し黙りながら携帯電話を弄る。

 そう、彼女は去って行った。結局教室の皆にさよならも言わずに。

 最初は嫌われて、喧嘩別れする予定だったからだろう。

 けれど演奏をして、皆の評価も変わったんだ。

 夏休みが始まる前に、皆にちゃんと伝えればよかったのに。


「そんな、私もっと六月六日さんと仲良くしたかったのに」

「俺実を言うと六月六日さんに告白しようと思ってたんだよな……」


 ほら、皆六月六日さんとの別れを惜しんでるじゃないか。

 携帯電話が震え、メールの受信を報せる。



『今向こうの学校で自己紹介してきたよ。まあそれなりに受け入れられそうかな(笑) そうそう、軽音楽部があったからそこに入ることにしたんだ。高下君のおかげでギター熱も復活したしね、そっちはどう? 皆びっくりしてる?』


 それは六月六日さんからだ。今のところうまくいっているようでなにより。


『びっくりしてるよ、皆六月六日さんとの別れを惜しんでる。何でもっと早く言わなかったのさ。お別れ会もできなかったじゃないか』

『いやあ、最初はどうせ嫌われて消える予定だったからいいやって思ってたけどさ、逆に皆に受け入れられちゃうと、恥ずかしくて」

『思春期の乙女か』

『失礼な、中学二年生、多感な思春期の乙女だよ。そうそう、乙女といえば、入った軽音楽部のドラムの人が結構私好みでさ、音楽の趣味もすごく合うし、私にも春到来かな?』


 今はこうしてメールをやりとりしているが、そのうちメールもしなくなるんだろう、多分。

 でも仕方がないよね、転校って。

 早かれ遅かれ、普通は友達とどこかで別れることになるんだ。

 それに僕の頑張りで、六月六日さんは多分救われた。

 僕の頑張りは、無駄じゃなかった。ハッピーエンドじゃないか。





「みたきちゃんは、転校しないよね?」

「てんこう? ぴっちゃーからばったーに?」

「その転向じゃないって。みたきちゃんは、僕と一緒にいたい?」

「うん! ずっといっしょにいたい!」


 みたきちゃんとは、いつまで一緒にいられるのだろうか。

 みたきちゃんとの別れを、僕は受け入れることができるのだろうか。

 小学校の卒業式の時、あれだけ泣いていた僕が。

 別れを受け入れることは、大人になることなのだろうかと思った、そんな放課後。

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