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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校2年 中二が厨二で何が悪い(中二病)
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六月六日に決意する

「みたきちゃん、この曲聞いてみてよ」


 いつもの朝の登校中、僕はみたきちゃんの耳にイヤホンをねじ込む。


「くすぐったい……なにこれ、へんなおうた」

「それはデスナイト佐々木って言ってね、今話題沸騰中の人気バンドなんだよ」

「ふうん。でもわたしはきょうみないや」

「うんうん、それでいいんだよ」


 みたきちゃんはしっかりと自分で判断のできる偉い子だ。



「私アルバム買っちゃったよー」

「私もー、いい曲だよねー」


 それに比べてこの糞女共は。

 本当にこいつらは曲を理解しているのだろうか。

 僕にはそうは思えない。


「まったく、ミーハーにも困ったものだよね」


 イライラしながら隣の席にいる六月六日さんに同意を求める。


「……」

「六月六日さん?」


 彼女は何も言わず、僕の耳にイヤホンを突っ込んできた。

 流れてくる曲は、聞いたこともない曲だ。どことなく暗い雰囲気がする。


「聞いたことない曲だね、新曲?」

「……別のバンド。今はあんまり売れてないけど、多分もうすぐ売れるんじゃないかって思ってる。そうなったら私はまた別のバンドを探すんだよ、きっと。私もミーハーなんだよ、ある意味。有名なものに群がるか、有名でないものに群がるかの違いでしかない。私はそれに気づいてしまったんだよ。自分を周りよりも大人びた人間だなんて勘違いしていた時間は終わったんだ」


 朝っぱらから何かを悟ったような発言。音楽に影響されているのだろうか。


「違うよ、六月六日さんはミーハーじゃないよ。この曲だっていい曲じゃないか。自分でそういう曲を発掘できるんだから、六月六日さんの音楽センスは本物だよ」

「……悪いけど、ほっといてくれるかな。高下君もさ、私と話を合わせるためにそうやって同意してるだけでしょ? 顔に書いてあるよ」


 終いにはそんな事を言いだす始末。随分と精神的に参っているようだ。

 今は一人にさせておいた方がいいのかもしれない。

 しかし困ったな、クラスメイトが彼女の趣味を理解すれば万事解決だなんて思っていた僕の考えが浅はかだった。

 彼女はクラスメイトに趣味を理解される事を本当は望んでいないのかもしれない。

 いや、望んでいるはずなんだ。

 ただ、クラスメイトの理解の仕方があまりにもお粗末だから、彼女を苛立たせてしまうんだ。

 そしてお粗末な理解というものはお粗末な結末を迎えるのだと、僕は確信していた。

 今日は、例の音楽番組の日だ。出演情報を見ると、日本のロックバンドやラッパー等が出るようだ。

 翌日を迎えるのが怖くて、その音楽番組を僕は見ることもできなかった。



 翌日。


「Yo! Yo! Yo!」


 ラップの真似事をする男子。


「すっごい歌詞に共感できたよねー」

「だよねー、洋楽はちょっと歌詞意味わかんないけど、やっぱ邦楽よねー」


 先日まで褒めていたはずの洋楽をけなして、ロックバンドを持ち上げる女子。

 これがお粗末な結末だ。週刊の音楽番組に踊らされる人間のブームなど、所詮は1週間。

 六月六日さんの方を見ると、怒りにわなわなと震えているようだ。


「ね、ミーハーってのは、ああいうのを言うんだよ。六月六日さんはミーハーでもなんでもないよ。ほら、CD返すね」

「……うん、ありがとう」


 この間彼女に渡されたCDを返してやると、彼女はCDプレイヤーにそれをはめて右のイヤホンでそれを聞く。左耳ではMDプレイヤーの音楽、おそらくは昨日彼女が言っていたバンドを聞いているのだろう。


「流石に曲はどっちかにしなよ」

「どっちも好きなんだよ、やっぱり」


 二人して笑いあう。

 しかし、これでは余計に彼女と僕が孤立してしまうだけだ。

 もう僕の心の中には、こんなアホなクラスメイトだったら、孤立しても構わないという気持ちもあったが、どうにかして、正攻法で僕達を認めさせたい、そんな気持ちも確かにあった。



「ねえねえ、ご飯一緒に食べようよ」

「……うん、いいよ」


 お昼休みに、今日は彼女に誘われて屋上へ。

 春と夏の中間と言ってもいい今日の天気は、中途半端に心地よい。


「なんかさ、悔しいよね」


 意外と可愛らしいお弁当箱の中身をつつきながら、六月六日さんがそう漏らす。


「悔しいね。ガキなのはあいつらなのかな、それとも協調性のない僕達なのかな」

「決まってるじゃないか。絶対あいつらだよ。私達は大人びているんだ、だから浮いてしまうんだ、そうに決まってる。きっと後数年もすれば、周りが私達に追いつくよ」


 お弁当をやけ食いする六月六日さん。確かにそんな気もするが、そうだとしても周りが追い付くまで耐えるなんてそんな話だ。

 どうにかして、僕達を認めさせたい。そんな使命感に僕は支配されていた。



「ところで、今日は六月六日だね」

「そうだね。……ひょっとして、私の誕生日だと思ってない?」

「違うの?」

「全然違うよ。どこぞのエイプリルフール男じゃあるまいし、名字で誕生日が決まってたまるかいな」


 彼女とそんな漫才をしながら、学校行事のカレンダーを眺める。


「今年から夏休み前に、生徒で出しものとかするみたいだよ。これに出ようよ。実力で、あいつらを唸らせるんだ」


 今からその行事まで1ヶ月とちょっと。1ヶ月あれば、頑張ればそれなりのものができるのではないだろうか。


「ははは、そりゃ面白そうだね。私達の証ってやつか。確かに、派手にどかんとやりたい気持ちはあるね。でも何をするのさ、さっきみたいな漫才でもするの? 私と君で?」

「僕は残念ながらユーモアに溢れた人間ではないよ」

「うん、見ればわかるよ」

「えっ」

「えっ」


 漫才と言われて僕なりのギャグをはなってみたのだが、結果はご覧のありさまだ。漫才は無理だな。


「ま、見る方も所詮は学生のお遊びだと思ってるだろうし、そんなのやるだけ無駄無駄。ごちそうさまっと。ねえねえ、放課後ゲーセン行かない? なんなら君の彼女も誘ってさ」

「そういえばみたきちゃんにゲーセンの楽しさを教えてなかったな、よし、早速行こう」

「いやいや早退は駄目だよ」

「君がそれを言うか」


 二人して笑いあう。やっぱり漫才もいけるんじゃないか?



 放課後、僕と六月六日さんと、養護学校の前で拾ったみたきちゃんはゲームセンターへ。

 みたきちゃんのためにUFOキャッチャーに数百円をつぎこみながら、六月六日さんの様子を見ると、ギターの音ゲーに勤しんでいた。……ギター?


「六月六日さん、ギターできるの?」

「まあ、この音ゲーはそれなりにやってるからね」

「じゃあバンドやろ」

「……は?」


 そうだよ、学生の出し物といったらバンドじゃないか。

 好きな音楽を汚された恨みは、音楽で返すんだ。

 僕達の音楽を、あいつらに魅せつけてやるんだ。


「あのさ、私はこの音ゲーは確かにそれなりにできるけど、それと現実のギター技術は無関係だよ」

「本当に? ギター触ったことないの?」

「……まあ、エレキ持ってるけど、そんなに触ってないよ。少しできるくらいだって」

「あと1ヶ月ある、じゃあ僕はドラムやるから」

「音楽を舐めないでよ。1ヶ月で人様にお見せできるようにはならないよ。しかも学生の出し物の前にテストがあるじゃないか。そっちの勉強だって」

「六月六日さんは授業なんて真面目に受けなくてもいい点取れるんでしょ?」

「うっ……」


 肉食系男子かと言わんばかりの猛攻。

 みたきちゃんが商品のぬいぐるみを手に、よくわかんないけどがんばれーと言っている。あと一押しだ。


「1ヶ月、必死で練習すれば、人間何とかなるよ。見返してやろうよ、あいつらを」

「……ふふ、あーっはっはっは!」


 突如笑い出す六月六日さん。すぐにこちらに向き直り、


「言っとくけど、必死で練習する必要があるのは君の方だからね。君はドラムとか触ってないんでしょ? 私だけ演奏できて君ができないとかだったら、思い切りエレキでぶん殴ってやるからね」

「僕をなめないでくれ、僕は努力家なんだよ」


 僕とがっちりと握手を交わす。

 こうして僕達は、バンドをすることになったのだ。

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