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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校2年 中二が厨二で何が悪い(中二病)
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六月六日に元気に振る舞う

「おはよう六月六日さん。何飲んでるの?」


 学校へ行き教室へ入ると、六月六日さんがカップを片手に窓の外を眺めていた。


「おはよう高下君。これかい? コーヒーだよ、君も少し飲むかい?」

「間接キスじゃないか、遠慮しておくよ」

「何だいそんなことを気にするのかい。ま、この苦さは君には少し早いかもしれないからね」


 朝から教室でコーヒーを飲む中学二年生の女の子。

 そんな女の子がクラスメイトに受け入れられるかと言えば、


「何あれ……かっこつけ?」

「教室にコーヒーの匂い充満して臭いんですけど」


 答えはNO! 主に、自分達のグループに同調しないという理由で女子勢が。

 しかし本人の聞こえるところで陰口を言うなんて、ガキだよねえ。

 本人に直接言うわけでもなく、あえて聞こえる位置でひそひそ話。

 女子というのはどうしてこうも陰湿なのか。みたきちゃんを見習ってほしいよ、まったく。





「六月六日さん、授業中に小説読むのはどうかと思うな」


 授業中、隣の席を見れば、よく見れば六月六日さん教科書を読んでると見せかけて小説を読んでいるじゃないか。

 赤石さんですらきちんと授業を受けていたというのに。

 その事を注意すると六月六日さんはニヤリと笑う。


「学校の授業なんて将来役に立たないよ。教科書を読むより、この『要領の良い生き方』を読んでいた方がためになるね。ようするにテストの点が良ければいいんだよ、授業なんて真面目に受けなくても。ま、馬鹿な人は中学校レベルのテストにも必死にならないといけないんだろうけどね」


 うわー流石の僕も腹立つなあ。

 僕ですら腹が立ってしまうんだ、これには流石に女子どころか男子だって不快になってしまうでしょう。

 多少性格が悪くても可愛ければ男子は許容してくれますが、限度というものもある。

 頭の良くない男子の何人かを、今の発言で敵に回したことでしょう。





 4時間目の授業が終わると、六月六日さんはお弁当を持って教室を出て行こうとする。

 いつも彼女はお弁当を食べる時に教室を出て行くけど、どこで食べているのだろうか?


「六月六日さんって、いつもどこでお弁当食べてるの?」

「屋上だよ。天気の悪い日は学食だけどね。君も一緒に食べるかい?」

「僕は友達と食べるから、遠慮しておくよ」

「ふうん」


 ちょっと機嫌が悪そうに、彼女は教室を出て行った。

 その後僕はいつもつるんでいるクラスメイトと一緒に昼食をとるため、机をくっつけようとしますが、心なしか彼等の視線が痛い。

 僕が彼女といちゃついているように見えるという理由での嫉妬によるものなのか、

 先程の発言等で彼女に悪い印象を持っている人からのものなのかはわかりませんが、

 とにかく心苦しいです。これなら屋上で彼女と食べた方がましだったかもしれない。

 早々と自分のお弁当を食べた僕は、気まずくなってすぐに教室を出て辺りをぶらつく。


「あ、高下君」

「赤石さん」


 すると今度は赤石さんに遭遇。気まずいなあ。

 特に話すこともないので素通りしようとしましたが、


「……最近高下君の、悪い噂が流れてるよ」


 赤石さんのその発言に立ち止まる。


「そうかい。ありがとう」

「じゃ、私は彼氏とお弁当だから」

「……僕っ娘辞めたんだね」


 赤石さんと別れる。僕っ娘も辞めてしまって、赤石さんは本当に普通の可愛い女の子に成り下がってしまった。……成り下がってしまった? 何を言っているんだ僕は、これが僕が望んでいたことじゃないか、赤石さんは友達もできて彼氏もできて、幸せそうじゃないか。

 どうやら僕は、『普通』に可愛い赤石さんに、興味を無くしてしまったようだ。

 いやしかし、彼女に興味はないが気になることがある。僕は別れた赤石さんを追う。


「赤石さん、六月六日さんの悪い噂、聞いてる?」

「いい噂は聞かないね。けれどそれは彼女の言動が気に食わない人による、いわばただの叩き。それに対して君の噂は、どう考えたって捏造。明確に君の評判を下げようとする、何者かの犯行だね。……ていうか、また新しい女の子にご執着ですか」


 それじゃあね、と赤石さんは今度こそ去って行く。何だか不機嫌そうだ。

 ……ひょっとして犯人は赤石さんだったりして。



 冗談はさておき、一体誰が犯人なのだろうか。

 思い当たるのは、どう考えたって六月六日さん絡みだ。

 しかし僕を捏造してまで叩くのに、六月六日さんはそうしないというのは変に感じる。

 もやもやしたままこの日は授業を終え、正門で六月六日さんと別れた後、みたきちゃんを迎えに行く。


「あ、あたるくん。きょうはね、ことわざをならったよ!」

「それは偉いね。なんてことわざを習ったの?」

「えとね、しょうがっこうをほっすればまずいうまをたべよ?」

「……将を射んと欲すればまず馬を射よ、かな? 意味は、目的達成のためにはまず周りから攻めて行こうって意味だよ。……そうか、そういうことか」

「どういうこと?」

「ありがとうみたきちゃん。お礼にたっぷり可愛がってあげるね」


 やっぱり僕の悪評を広めているのは六月六日さんに悪意を持っている人だ。

 しかも陰湿な事に、本人に手を下すよりも取り巻き? の僕を狙って。

 しかし確かに効果的な方法かもしれない。

 自分ではなく、自分の周りの人間に被害が及ぶというのは、精神的に辛いものがある。

 まあ、悪評だけで済むなら大丈夫か。こちとら既にみたきちゃん係という場数を踏んできた。




 悪評だけで済むなら、大丈夫だったのだが。


「おはよう高下君。どうしたんだい、難しい顔をして」

「おはよう六月六日さん。何でもないよ」


 上履きの中に、画びょうが入っているとも知らずに履いてしまい、足に痛みを覚えながらも健気に振る舞う。

 クラスメイトの女子がくすくす笑っているのがわかる。犯人はあいつらか。

 いじめというのは、エスカレートする。

 最初はちょっと陰口をたたくだけだったのが、態度が気に食わない、応えてない、そんな理由で止める人もいないままに。

 さて、ここで僕はどうするべきなのだろう。

 自分がいじめを受けていると六月六日さんにばれてしまうと、彼女は自分の責任だと思ってしまうかもしれない。そんなことはない、悪いのはあの憎むべき雌豚共。

 だからここは明るく振る舞う。彼女を心配させないように。

 そして、彼女の知らないところでいじめをやめさせるしかないわけだが。

 自分一人では難しいだろう、協力者が必要だ。

 クラスの男子は……あてにしないほうがいいだろう。

 たまに喋って一緒に弁当を食べているだけの僕と、クラスメイトの女の子数人、どっちを取るかと言われれば、大抵の人は後者を選ぶだろう。上っ面だけの友人関係がここにきて仇となった。

 そもそも女の子のいじめに男が介入するのはちょっとまずい気もする。



「というわけなんです。お願いします、力を貸してください」

「……はぁ」


 その日の放課後、文芸部の部室の前で赤石さんを待ち合わせして頼み込む。


「頼むよ赤石さん、こんな事頼めるの赤石さんしかいないんだよ」

「悪いけどね、私は六月六日さんや君とつるんでると思われたくないの。折角築き上げてきた地位を壊したくないの」


 しかし赤石さんは冷たい眼差しを向けてくる。なんて冷たい女なんだ。


「……変わったね、赤石さん」

「君が変えてくれたんでしょ。どうしてもって言うなら君への嫌がらせを止めて見せるけど、そうしたら本来のターゲットである六月六日さんが狙われると思うね。そっちの方が嫌でしょ? 流石にいじめ自体を止めさせることは私にはできないよ。君だってわかってるんでしょ? いじめを無くすなんて絵空事だよ」

「……」


 返す言葉もない。


「六月六日さんがあんな感じな限り、事態は好転しないと思うな。君はひょっとしてさ、六月六日さんを受け入れて、それを他の皆にも受け入れさせようとしてないかい? 無理だよ、そんなことは」


 それじゃあ部活だから、と赤石さんは部室へ入って行った。





「せかいじゅうがあたるくんだったら、みんなしあわせなのにねー」

「世界中がみたきちゃんだったら、皆幸せだろうね」


 その日の帰り、みたきちゃんと一緒に帰りながら脳内で赤石さんの言葉を反芻させる。



 無理、か。

 自分でも、そう思う。

 おとぎ話の世界とは違う。現実は、出る杭はとことん叩かれる。

 やっぱり、六月六日さんをまともにさせるべきなのだろうか。

 みたきちゃんを真人間にしようとしても、無理な相談だ。

 けれど六月六日さんは違う。考えている事はともかく、少なくとも、上っ面の行動はまともにできる。現に彼女は中学一年生の時にそうしてきた。



 でもやっぱり僕にはできないんだよ、彼女を否定することが!

 彼女を否定することは僕を否定することなんだよ!

 僕は逆らってきた! 

 親にみたきちゃんと関わるなと言われたって、みたきちゃんに接してきた! 

 クラスから孤立したって、みたきちゃんに接してきた!

 皆が関わろうとしなかった赤石さんに関わろうとした!



 クラスから孤立したって、本当の自分を曝け出そうとしている彼女をどうして否定できようか!

 


「足掻く」

「あがく?」

「みたきちゃん。僕はもう少し、足掻いてみるよ。無理だって決めつけないで、もう少し頑張ってみるよ。多分、そうすることが、多分みたきちゃんへのせめてもの報いなんだと思う」

「よくわからないけど、がんばって!」


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