ばいばい赤石さん
赤石さん改造計画が終わり? 数日が経ちました。
結局、僕の手助けなんて、いらなかったんだ。
赤石さんは元から綺麗な声を持っていたし、
面白いことがあれば笑えるし、
髪をおろして眼鏡を外せば美少女だったんだ。
にしても気に食わないのはクラスメイトだよ。
「赤石さんの髪綺麗だよね、特別な手入れとかしてるの?」
「え、ええと、お風呂の後にブラッシングすることかな……?」
可愛くなってとっつきやすくなった効果なのか、クラスメイトの女子が赤石さんに話しかけるようになりました。友達関係になるのも時間の問題でしょう。
「赤石さんって可愛いよな」
「だよな、前から可愛いと思ってたわ」
男子に至ってはとんでもない手のひら返し。
糞、こいつらぶん殴ってやりたい。
まあ赤石さんへ良い印象を持っているのだから、許してあげましょう。
「何か……夢みたいだよ。僕ってこんなに可愛かったんだ」
部室で手鏡を見ながら赤石さんが照れる。
鏡の中の自分を可愛いというなんて自意識過剰ですが、まあそう思うのも無理はないでしょう。赤石さん可愛いもんね。
部室で僕と赤石さんが談笑していると、コンコンと扉がノックされ、一人の女の子が入ってくる。
クラスメイトの、大人しいグループに入ってる女の子だったか。
「あの……ここって、文芸部の部室……ですよね」
僕と赤石さんは顔を見合わせる。
「はい、そうです。入部希望者かな?」
「は、はい。その……興味はあったんですけど、ちょっと赤石さんが怖くて躊躇してて……でも赤石さん、思ってた程怖い人じゃないみたいだから」
正直な女の子だね。とはいえ、これでようやく部員がやってきたというわけだ。
そして文芸部に興味のあった人は彼女だけではなかったようで……
「一気に人が増えたね」
「何か騒がしくなって、逆に文芸部っぽく無くなったけどね」
三日後、部員が7人になった部室で僕と赤石さんは苦笑い。
やっぱり今までの赤石さん、怖かったんだろうね。
分厚いメガネで、笑わないし、おとなしめな文学人間には敷居が高かったんだ。
でも赤石さんが可愛くなってフレンドリーになったらこの通り。
むしろ赤石さん目当てと思われる男子部員までやってきたもんだ。不純だけど、まあ赤石さんも満更でもなさそうだからいいか。
さて、そろそろ頃合いか。
僕はカバンから一枚の紙切れを取り出して赤石さんに渡す。
「はい、これ」
「……本気かい?」
赤石さんに僕が手渡したそれは、退部届であった。
「僕は孤独な女の子にお節介焼くのが趣味な男だからね。はっきりいって、今の君にはもう興味が湧かないんだ。ま、みたきちゃんとの時間を大切にしたいってのもあるけどね、これからはいちクラスメイトとして接させてもらうよ」
「そうやって悪役演じようってわけかい。まあいいけどね。君にはすごく感謝してるよ」
「いやいや、僕は何もしてないよ。全部赤石さんが元々持ってた魅力なんだから」
それじゃあばいばい赤石さん、と僕は赤石さんに背を向けて部室から去ろうとする。
「バーカ」
去り際に赤石さんがそんな事を言っていた。
何か赤石さんを怒らせるような事したっけな?
「みたきちゃん」
「なあに?」
「何かさ、今の僕は、娘を嫁に出した父親な気分だよ」
「ちちおや? じゃあわたしがおかあさん!」
「ふふふ、そうだね。さて、今まで一緒に帰れなくてごめんね。明日からは、できるだけ一緒に帰れるように努めるよ」
「うん!」
「今まで構ってあげられなかった分、今日は一杯お医者さんごっこしようね」
「うん!」
帰り道、僕とみたきちゃんは笑いながら帰路を行く。
太陽はさんさんと、赤石さんの未来のように輝いていた。




