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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校1年 こんにちは赤石さん(文学少女)
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ふざけろ赤石さん

「そう言うと私は菜々美を押し倒した」


 赤石さんは饒舌に喋る事ができるようになりました。

 文学少女なので自然と言葉のアクセント等を習得していたのでしょうか?


「ふふふっ……」


 そして授業中に誰かが面白い事を言った時とかに、自然と笑うようになりました。




「最近の赤石さん、変わったと思わない? 雰囲気とか」

「そうなの?」

「そうだよー、きっと恋をしたんだよ」


 女子の会話を聞いていても、赤石さんの評判があがっていることは間違いないでしょう。

 ちなみに女子トイレの入り口付近でニヤニヤしながら聞いてます。

 僕としてはもう赤石さんは十分友達ができる、そんな人間になっていると思うのですが、

 まだまだ垢抜けていない感じもしますよね。

 女子の評価ばかり聞いていてもしょうがないので、男子の評価も聞くことにしましょう。

 丁度男子がクラスの女子格付けランキングをやっているようなのでそれに混ざりましょう。

 クラス内女子15人中10位くらいには入ってるんじゃないでしょうか?



「やっぱ安藤さんがクラス内トップっしょー」

「じゃよなー、安藤さんめっちゃかわええよなー」

「逆に最下位は誰よ?」

「赤石さんだろ」

「だよなーぶっさいよなー」

「何か最近イメチェンしようと頑張ってる感じが逆に滑稽だよなー」

「ん? どうした高下。 そんなワナワナと震えて」




「ここまで言われて黙ってられるか!? 黙ってられないよなあ!?」

「落ち着きなよ高下君、なんで君がそんなに怒るのさ」


 その日の放課後、部室で僕は怒りに震えながら今日の一件を赤石さんに伝える。


「クラスメイトの男子に不細工だの言われて怒らない女子がいるかよ」

「君は男じゃないか。別に、僕は自分でもブサイクだと思ってるし」

「そんなんだから男子に馬鹿にされるんだよ。悔しいと思わないの? キレイになって見返してやろうと思わないの?」

「はいはいわかったわかった。で、君はどう僕をコーディネートしてくれるのさ」


 自嘲するような笑みを浮かべる赤石さん。多分自分がキレイになれるなんて微塵も思っていないのだろう。その自虐を打ち壊してやる。


「僕もね、怒りに打ち震えながらクラスの馬鹿共の赤石さんへの寸評を聞き続けてメモったんだよ」

「君がそうやって僕の悪口を伝えるたびに僕は意外と傷ついてるんだけど」


 耐えろ、今は耐え忍ぶんだ。それがやがて糧となるから。

 僕も赤石さんの悪口を伝えるのは辛い、辛いんだ。




 クラスの糞男子共の赤石さんへの悪口をまとめると、

 ・何か髪がべたべたしてそう

 ・女捨ててそう

 ・地味

 ・メガネ

 ・実はむっつりで官能小説とか読んでそう



「こんなとこだね」

「流石の僕でも傷つくね」


 まったく男子共は、地味とかメガネとかならまだしも、イメージで人を語るんじゃないよ。


「赤石さんの髪、どこがべたべたしてるのさ」


 確かめるように僕は赤石さんの髪を触る。べたべたどころかさらさらしているじゃないか。


「ちょ、ちょっといきなり髪触らないで」

「え? ああ、ごめんごめん。流石にデリカシー無さすぎだったね。なんていうか赤石さん、男友達のように接しちゃうんだよね」

「……君のその一言でものすごく傷ついたよ」


 ともかく赤石さんの髪はべたべたどころかさらさらしている。これはアピールするべきポイントだ。


「髪型が悪いんだよ、確かにぼさぼさしてて汚いって感じがするし、お風呂に入ってない、べたべたしてる、そんなイメージを持たれても仕方がないね」

「クラスの男子よりも君の発言の方が僕の心をえぐるよ……」


 赤石さんの文句はスルーして、僕はカバンからこんな事もあろうかと常備していたファッション誌を数冊取り出して机に並べる。


「というわけで、髪型を変えてみよう。さあ、どれでも好きなのを選んで」

「ノリノリだね。……でもいい機会だし、髪をおろしたままにしようかな」


 そう言いながら赤石さんが指差したそこには、ロングなストレートが印象的なファッションモデル。

 赤石さんはそれを見ながら自分のつけていた髪留めをほどきます。


「うわ、赤石さん結構髪多いんだね」

「全然散髪とかしてなかったからね。今までは重心が後ろに行くし、髪おろすのはお風呂の時くらいだったけど、やっぱり僕も変わることを意識しないとね。でも流石に多すぎるしところどころハネてるから切らないと」


 髪を変えただけで結構変わるものですね、女の子は。

 重量感があり、べっとりとしていた髪型をおろすだけで何だか清楚な感じになりました。


「それじゃ、早速僕は今から美容院に行ってくるよ」


 心なしかうきうきしながら部室を去って行く赤石さん。

 何だよ赤石さんも滅茶苦茶ノリノリじゃないか。

 そういえば僕もそろそろ髪を切らないとな。

 小学校の頃はお母さんに切ってもらっていたけど、中学生になったし僕も美容院に行ってみよう。





 翌日。


「……ぷぷぷっ」


 教室にて、美容院に行ってうまいこと髪を整えてもらった赤石さんはくすくすと笑いながらこちらを見てきます。


「……」


 同じく教室にて、美容院に行って変な髪型にされてしまった僕。あの美容院もう絶対行かない。

 今日の朝だってみたきちゃんに大爆笑されちゃったし。

 ともかく赤石さんの髪型チェンジは大成功。


「赤石さんって、あんなに髪綺麗だったんだ」

「うらやましいよねー」


 一部の女子は赤石さんの髪を羨ましがっています。

 ちなみにこれも女子トイレの手前で聞いてます。最近僕が変態だって噂が流れているけれど、気にしない気にしない。

 しかし女子の評価はこれでまたあがったようですが、男子の評価はいまいちあがってないみたいですね。

 髪型というのは女子は気にする程には男子は気にしないということなのでしょうか。




「もう一息、もう一息だと思うんだ」


 その日の放課後、最早文芸部ではなく赤石さん改造部となっている部室にて机をガンガン叩きながら赤石さんに奮起を促す。


「ふうん。で、君は僕に足りないのは何だと思う?」


 言われて僕は赤石さんをまじまじと見る。

 スタイルはあまり良くないけれど、こればかりは一朝一夕ではどうにもならない。

 とすると、やはり……


「顔かな。顔なら、工夫次第で改善できるはず。現に笑えるようになったしね」

「ふうん」


 畳み掛けるようにアイドル雑誌をカバンから取り出して見せる。


「今日一日これを眺めてて、可愛い女の子の顔の特徴ってのを調べていたんだ」

「学校で何やってんの君は……」


 更にメイクセットを取り出す。


「というわけでお化粧しよう」

「嫌だよ。ていうか君は学校に何を持ってきてるんだよいつも」

「化粧をすれば、女は映えるってこの雑誌にも書いてあったし、ここにいるアイドルだって化粧しまくってる」


 広げたアイドル雑誌の一ページを赤石さんに見せつける。そこにはアイドルの化粧前と化粧後という、アイドルファンからすれば正直見たくない写真が写っていた。

 化粧をするだけでこんなに可愛くなれるのだ。


「中学一年生で化粧する女なんてまずいないよ。大体アイドルの化粧はプロのメイクさんがやってるんだから、僕達みたいな素人がやろうとしたところで悲惨なことになるだけだよ」

「大丈夫。ちゃんと昨日ネットで化粧について調べてきたから。さあ僕に任せて」


 メイクセットを持った手をわきわきとさせながら赤石さんに詰め寄る。


「ていうか君が化粧したいだけじゃないか! 人をおもちゃにしないでよ! 変態!」


 怯える赤石さん、ちょっといいなとときめいてしまった僕は足元不注意により、




「わっ」

「きゃっ!」


 こけてしまい、赤石さんを押し倒す形になってしまう。

 僕の顔の前に赤石さんの顔。


「高下君。犯罪だよこれは。まあ悪気はないんだし許すけどさ」


 ほんのり顔を赤くした赤石さんはやれやれとため息をつく。


「……」


 しかし僕は赤石さんの発言なんて上の空。


「高下君?」

「ふざけろ赤石さん」

「いや、ふざけてるのは高下君だと思うんだけど。いい加減どいてよ」


 言われて僕が赤石さんからどくと、赤石さんは立ち上がり、あたりをきょろきょろしだす。


「……ところで僕のメガネどこかな? メガネないと何も見えないんだけど」


 僕は床に落ちていたメガネを拾い上げるも、赤石さんにそれを返さない。

 代わりに赤石さんに率直な感想を述べる。



「すごく可愛いじゃないか」

「……は?」


 そう、分厚いメガネを外した赤石さんの素顔を見るのは初めてですが、普通に可愛いのです。

 メガネを外すだけで、愛らしい目が露になるだけで、ここまで女は変わるのかと驚愕しました。


「何なの、今まで素顔の自分見て可愛いと思わなかったの?」


 自分でもブサイクだと思っている? どこがだよ、僕の目の前にいる髪をおろした素顔の赤石さんは間違いなく学年でもトップ10くらいには入るはずだ。


「いや、そのメガネがないと何も見えないから自分の素顔なんて。ていうか返してよ」

「駄目。赤石さんは今後コンタクト着用しなさい」

「コ、コンタクト? 嫌だよ、目にあんなものはめるなんて怖すぎるよ」

「黙らっしゃい! クラスの男子共を見返したくないのか? 友達作りたくないのか?」


 コンタクトが怖いなんてそんな理由でそんな分厚いメガネをかけて周りに誤解され続けるなんて、素顔を知ってしまった僕としては許せない。


「うう、そりゃ見返したいし作りたいけどさ……目にレンズはめるんだよ?」

「だったら特訓だ!」




 それから数日、僕と赤石さんの特訓が始まった。

 目に物を入れる練習として、まず目薬を目に入れる練習だ。


「いくよ、赤石さん」

「ひぃっ!」


 上を向いた赤石さんの目に目薬を垂らすが、すぐに赤石さんは目をつぶってしまう。


「目を瞑っちゃ駄目じゃないか」

「怖いものは怖いよ、僕だって女の子なんだから」


 今更女の子アピールをする赤石さんに練習は難航しましたが、根気よく練習した甲斐があったのか、ついに赤石さんはコンタクトレンズをはめることができたのです!




「え、誰あの可愛い子……」

「嘘だろ? 赤石ってあんなに可愛かったかよ」


 コンタクトレンズをはめて学校に来た赤石さんに男子は驚愕の色を隠せない。


「うう、やっぱり違和感が……」


 慣れないコンタクトレンズにもじもじしているのが、また可愛らしい。

 そんな赤石さんを、まるでアイドルのプロデューサーのような目で僕は微笑ましく見るのだった。


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