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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校1年 こんにちは赤石さん(文学少女)
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ひどいや赤石さん

「みたきちゃん、僕今小説書いてるんだ」

「しょーせつ? かいたらみせてね!」

「うーん、それはちょっとなあ」


 登校中に小説を書いていることをみたきちゃんに伝えると目を輝かせるが、

 恥ずかしくて見せるのはちょっと無理かな。




「高下くん、本当に小説書いてるんだ」

「うん。1週間くらいで出来上がる予定だよ」

「ふうん」


 部活動中ずっと僕は原稿用紙に向き合って筆を進める。




 僕はみたきちゃんとの2年間を題材に小説を書くことにした。

 まず出会いだ。僕達の出会いは小学5年生。

 あの頃のみたきちゃんは、ロクに会話すらできなかったなぁ。

 小説なんだし、ちょっと大げさな展開にしてみるか。

 主人公が道端を歩いているとヒロインに襲われてしまい、そのまま懐かれたことにしよう。

 ……何だかこれじゃあ僕がみたきちゃんに襲われたい願望を持っているみたいだな、却下。

 逆に主人公が道端を歩いているヒロインを襲う……いやこれはもっと論外だ。

 なかなか小説を書くのは難しいね。

 主人公の心情の変化を描くため、じゃんけんで負けに負けて嫌々ヒロイン係になったことにしよう。

 最初は他のクラスメイト同様ヒロインを気持ち悪がって、冷たくあしらうんだ。

 それでも忠犬よろしくついてくるヒロイン。

 全くこの主人公は最低な奴だな、ヒロインをほったらかしにするなんて。



 ストーリー中盤、主人公がヒロインを理解するようになるにつれ、周りから孤立していき、

 ついには主人公はいじめを受けてしまう。

 いじめを受けていることを親にもヒロインにも話せない主人公。

 しかしある日ヒロインは主人公がいじめを受けている現場を目撃。

 怒ったヒロインはその場でいじめっ子達を倒そうと暴れだします。

 それを制止する主人公。

 ただでさえ変な目で見られているのに、ここで暴力事件なんて起こしたらヒロインの立場が危ないと思ったのです。

 暴れるヒロインに殴られても蹴られても制止する主人公。

 そんな主人公の姿を見て、いじめっ子達は何故主人公がここまで必死になれるのかが理解できず恐怖を覚えるようになります。

 結果的に主人公へのいじめはおさまりました。



 その後、主人公とヒロインはいじめっ子達がガラの悪い中学生に絡まれているのを発見します。

 主人公は無視しようと言いますが、ヒロインは中学生達に立ち向かって撃退します。

 ヒロインに感謝するいじめっ子達。

 これがきっかけで、ヒロインはクラスに段々と馴染むことができるようになりました。



 主人公のしつけの甲斐もあり、クラスメイトとも大分コミュニケーションが取れるようになったヒロイン。

 クラスメイトと仲良さそうにしているヒロインを見て、主人公は苦労の甲斐があったと微笑ましく思っている反面、嫉妬という感情が生まれてしまいます。

 そしてその感情が恋であることに気づいた主人公はヒロインに告白し、二人は無事に結ばれる。けれど、主人公は段々と苦しみ始めます。彼女の眩しさに、純粋さに耐えられなかったのです。最終的に主人公はヒロインから逃げ出してしまい、寂しそうな表情でずっと待つヒロインの描写で終わり、と。



「……完璧だ」


 僕は出来上がった原稿用紙の前で高笑い。

 僕とみたきちゃんの2年間を題材にするつもりが大きくストーリーは変わってしまったけれど、

 間違いなくこれは芥川賞だって直木賞だって沢村賞だって取れる。

 さあ、これを赤石さんに見て貰おう。





「赤石さん、小説書いたんだ、読んでよ」


 完成した翌日、放課後に既に部室で本を読んでいた赤石さんに原稿用紙を手渡す。


「……わかった」


 赤石さんはそれに目を通し始めた。向かいの席で僕はその様を眺める。

 自分の書いた小説を読まれている、すごくドキドキする。


「あの、気が散るから見ないで」

「ごめんごめん」


 赤石さんが小説の山場などでどんな反応をするのかが気になってずっと見つめていたが、指摘されて仕方がなく本を読みながら待つことにする。




「読み終わった」


 1時間後、赤石さんはそう告げる。


「どうだった? 面白かった?」


 文芸部の人間に僕の書いた小説はどう評価されるのかが気になって、僕はわくわくしながら批評を待つ。

 処女作とはいえど自信作だ、きっとべた褒めしてくれるに違いない。




「誰が読みたがるの、こんな小説」

「……え?」


 しかし赤石さんは冷たい口調で、のっけから作品を否定しだした。

 結構真面目に読んでくれてたから、好感触だと思っていたのに。


「知的障害者との恋愛? 誰がこんなの読みたがるの」


 作品を否定されて僕はむっとしてしまうが、赤石さんの言いたいこともわかる。

 普通の人間が気味悪がってきた、目を背けてきた、蔑んできた、そんな存在と真っ向から向き合って恋愛をするのだ。

 普通の人間からすれば受け入れられない題材なのだろう。


「それから暗すぎるのよ。読者は主人公に感情移入するのに、その主人公がいじめにあうだなんて」

「……」


 その後も赤石さんの容赦ない批評が僕を襲う。ひたすらダメ出しを食らって俯くしかない僕。


「何より許せないのは、ハッピーエンドにしないこと。正直途中までは悪くなかったけど、最後で台無し」



 確かに最後は普通に結ばれた方がよかったかもしれない。けれど僕的には意味があった。僕自身がみたきちゃんに釣り合っていないと、彼女の純粋さと向き合うには汚れすぎていると感じていたから、今のままでは幸せにはなれないと悟っていたから、ああいう終わり方しか考えられなかったのだ。そんな僕の思惑なんて全く知らないであろう彼女は最終的に面白くない、つまらないと切り捨てて、バラバラと僕が必死に書いた原稿用紙をその場に投げ捨てると、部室を出て行ってしまった。残された僕と散らばった原稿用紙。


「ひどいや赤石さん」


 原稿用紙を拾い集めながら僕は涙をぽろぽろとこぼします。

 確かに僕は文学についてはド素人。

 けれど原稿用紙を叩きつけるだなんて。

 赤石さんはどうしてあそこまで怒ったのだろうか。

 原稿用紙を回収し終わった僕は、とぼとぼと家に帰る。

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