表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校1年 こんにちは赤石さん(文学少女)
27/107

おはよう赤石さん

「みたきちゃん、僕文芸部に入ったんだよ」

「ぶーんげーむ?」

「本とかを読んだり、書いたりするんだよ」

「わたしもえほんとかよむよ!」


 文芸部に入った翌日の朝、僕はみたきちゃんと一緒に登校しながら昨日の事を話します。


「だから、これから学校が終わった後、一緒に帰るのは難しくなると思うんだ」

「えー、そんな、あたるくんといっしょにかえりたい」

「ごめんねみたきちゃん、我慢してね」

「うん……」


 寂しそうな顔をするみたきちゃんと、途中の養護学校の前でお別れ。

 ああ、ものすごく僕は悪いことをしている気がする。ごめんよ、みたきちゃん。




 通っている中学校に到着。教室へ入ると、赤石さんが自分の机で本を読んでいるのを見つけました。


「おはよう赤石さん」


 積極的なコミュニケーションが大事だと思った僕は赤石さんに話しかけますが、


「……まだ部活の時間じゃないけど?」


 赤石さんは僕を一瞥すると、読書に戻ります。

 部活の時間じゃないのに話しかけてくるのはおかしいということなのでしょうか。


「部活仲間なんだから、朝の挨拶くらいしたっていいじゃないか」


 しかしここで引き下がるわけにはいきません。

 コミュニケーションはまず挨拶から。赤石さんに挨拶をさせることからはじめましょう。


「はあ。おはよう」


 赤石さんはこれ以上僕と会話するのが面倒だと思ったのか、棒読みで挨拶をするともう用は済んだと言わんばかりに読書にふけります。

 うーん、とりあえずおはようという単語を彼女の口から言わせたのだ、よしとしよう。





 授業中の彼女を観察してみましょう。

 教科書を読んでると見せかけて小説を読んでいるというわけでもなく、真面目に授業を受けていますね。

 しかし随分とつまらなそうな顔をしています。

 おっと、あまりじろじろ見ていると怪しまれる。僕はストーカーでもなんでもないからね。



 お昼休憩になりました。

 赤石さんはお弁当と本を持って、教室を出て行きました。

 普段は教室で食べていたのだけど、どこへ行くつもりなのだろうか。

 気になった僕は、いつも一緒に食べている友達達にお弁当忘れたから学食で食べると言って教室を抜け出します。

 まずは屋上へ行ってみました。

 天気もいいし、屋上のベンチに座って本を読みながらお弁当というのも乙だなと赤石さんが屋上へ行った可能性は高いです。

 屋上への階段を上り、扉を開けます。


「うっ……」


 屋上へ足を踏み入れた瞬間僕は戦慄してしまいます。

 何故なら屋上はカップルだらけだったのです。


「はい、あーん」

「うーん、由美子のお母さんの作ったお弁当は美味しいなあ」

「ばかぁ」


 屋上を見渡すとどこもかしこも2人組のカップルだらけ。

 赤石さんの姿も確認できないし、僕はすぐに退散します。

 まさか屋上があんな魔窟だったとは。

 別に悔しくなんてありません、学校は違うけど、僕だってみたきちゃんが……っ!

 屋上から逃げ出した僕は、続いて学食へ。

 学食で食べる友達に合わせて、お弁当を学食で食べる子もたまにいます。

 赤石さんが実は別のクラスに友人がいて、その人達と食べているという可能性も捨て切れませんからね。

 しかし学食を見回しましたが赤石さんはいませんでした。

 ふーむ、他に赤石さんが行きそうな場所は……図書室? いやしかし飲食は禁止だ。

 彼女にとって恐らく図書室は神聖な場所。そこを汚すような真似はしないはず。





 そうだ、文芸部の部室だ。どうして最初にその発想が出なかったんだ。

 落ち着いた場所で食事がしたいと思った彼女が部室で食事をとる、自然な流れじゃないか。

 彼女は食事の邪魔を望まないかもしれないけれど、僕だって文芸部員だし、部室で食事をとる権利はあるよね。

 というわけで文芸部の部室の前へたどり着いた僕はドアを開けて、


「おじゃましま……」

「……えっ?」


 着替え中の赤石さんを目撃。みたきちゃんに比べるとお子様体型だな……じゃなくて!

 即座に僕の顔を冷や汗がダラダラと流れます。


「……あの、閉めてください」


 叫び声をあげることもなく、赤石さんは淡々と、僕を見下すような口調で言い放つ。少し顔が赤い気もします。


「ご、ごめんなさい!」


 ドアをバタンを閉めて謝る僕。きちんとノックをしていればこんなことにはならなかったのにと自分の浅はかさを責めていると、


「あの、もう入っていいですよ」


 ドアが開いて、中からジャージ姿の赤石さん。恐ろしいほどジャージが似合いますね。

 顔を赤くしながら僕は部室の中へ。


「赤石さんが教室抜け出したから、部室で食べるのかな? って思って気になってさ。ほんとごめん」


 事故とは言えど着替えを覗いてしまったのは事実。誠心誠意謝ります。


「……次の授業体育だから、ご飯食べるついでに着替えようと思って」


 ジャージ姿で、本を右手にサンドイッチを左手に持ちながら呟きます。

 僕も彼女の向い側でお弁当を広げて食べ始める。

 まずい、会話が続かないというか、どうすればいいんだよこの状況。


「僕の身体、貧相だったでしょ」

「……っ、げほっ」


 突然赤石さんにそんなことを言われて、飲んでいたお茶を噴出してしまう。


「なんでいきなりそんなこと聞くのさ」


 机にかかってしまったお茶を吹きながらしどろもどろに答える僕。


「男の人の感想とか、ちょっと気になっただけ」


 相変わらず表情を変えない赤石さんですが、口元が少し緩んでいる気がします。

 ひょっとして僕、からかわれてる?


「それより高下君、早くしないと着替える時間無くなっちゃうよ」


 部室にある時計を指し示す赤石さん。見ると確かにもうすぐ昼休憩が終わってしまいます。

 僕は急いでお弁当を食べ終えると、


「それじゃ、また体育の授業で!」


 部室を出て着替えるために教室へ戻ります。




「……今日の体育、男女別々だけどね」


 部室を出るとき赤石さんが、くすっと笑った気がします。





 放課後、僕は掃除を終えて文芸部室へ。


「やあ」


 赤石さんはこちらを見ることなくそう呟きます。執筆に集中したいようです。

 僕も昨日同様に彼女の向いに座って本を読みます。

 話す内容がありません。僕も彼女のことを馬鹿にできないくらい人付き合いが苦手だと思い知らされました。


「そうだ赤石さん、赤石さんの書いた小説読ませてよ」


 気まずい空気を打破するため、苦し紛れに赤石さんの書いた小説が読みたいとおねだりしますが、


「人の作品が読みたい時は、まず自分の作品を読ませることね」


 そんな自己紹介のノリでこちらに原稿用紙を手渡してきました。これに書けということなのでしょう。

 その後ずっと原稿用紙の前でどんな話を書けばいいのか悩んでいるうちに、今日の部活動は終わってしまいました。


「それじゃあね」


 方向が逆なので学校の正門で赤石さんと別れて帰路につく。

 みたきちゃんと一緒じゃない帰り道というのは寂しいね。

 ……そうだ、みたきちゃんだ。

 僕の小学校時代、みたきちゃんとの出来事を小説にしよう。

 家に帰った後、僕は赤石さんに貰った原稿用紙に、自伝のようなものを書きだす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ