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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校1年 こんにちは赤石さん(文学少女)
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こんにちは赤石さん

 始めましての方は始めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。高下中です。

 中学生になって、1ヶ月が経ちました。

 とりあえず軽く僕についてお話しましょうか。




「あたるくん、きのうね、せんせいにほめられたんだよ」

「えらいね、みたきちゃん」


 僕は毎日女の子と一緒に途中まで登下校します。

 その女の子というのは、知的障害者のみたきちゃん。

 小学校でみたきちゃんを世話する係になったのがきっかけで、彼女が養護学校に行くことになってもまだ付き合いがあります。



 さて、僕の趣味を簡単に言うと『ぼっちな女の子に優しくすること』です。

 中学校生活をそれなりに楽しみながら、ぼっちな女の子ができるのを待っていました。

 小学校の頃はどちらかというと僕もぼっちですが、中学校になって新しい友人との付き合いをしだして、僕の性格も少し活発になった気がします。

 そして1ヶ月も経てば、基本的にグループというのは形成されるものです。

 僕も大人しい男子のグループに混ざりました。

『知的障害者と付き合っている』等と言われることもありますが、大して気にしていません。



 そして1ヶ月も経てば、クラスに馴染めない子というのが浮き彫りになるものです。

 赤石京子あかいしきょうこさん。何と言うか、地味な女の子です。特徴と言えば僕っ娘なとこか。

 黒いおさげで、分厚いメガネをかけていて、どんな目をしているのかわかりませんし、ずっと本ばかり読んでいます。

 活発な女子グループにも、大人しい女子グループにも、腐った女子グループにも入れない彼女。

 僕としては、手を差し伸べずにはいられません。



 ただ、ぼっちな人間というのは2種類あります。

 群れることができない人間と、群れる必要性のない人間。

 後者の人間からすれば、僕のような存在はきっとおせっかいでしょう。



 まあ、まずは会話するところから始めましょう。

 僕はお昼休憩、教室の隅の席で黙々とお弁当を食べている赤石さんに話しかけることにしました。



「こんにちは赤石さん」

「……? え、と」

「僕、同じクラスの高下って言うんだけど」

「知ってますけど」


 表情を全く変えずに淡々と棒読みで喋る赤石さん。

 うーん、会話が続かない。僕の方にも問題はあるのだろうけど、なかなか強敵だ。

 そうだ、確か彼女は文芸部に所属していたはずだ。そこから糸口を掴もう。


「僕、文芸部に興味があるんだよ」

「入部希望ですか?」

「うん、そんなとこ」

「はぁ、わかりました。では放課後に部室まで来てください」


 それだけ言うと用は済んだと言わんばかりに赤石さんは食事に戻る。




 放課後になった。教室の掃除を済ませた後、僕は約束通り文芸部の部室へ。


「おじゃましまーす」


 扉を開けて中に入ると、そこには赤石さんしかいなかった。

 会議室によくある机に座り、ノートパソコンで何やら作業をしている。小説でも書いているのかな?


「ようこそ。これ、入部届」


 赤石さんは僕に入部届の紙を手渡す。


「ところで、部員は何人くらいいるの?」

「1人」

「へ?」

「僕だけ」


 おいおい、それって部活って言わないじゃないか。正式な部活として認められてないじゃないか。

 よく見ると、貰った入部届の部長の欄には赤石さんの名前が。部員1人ならそりゃ1年生でも部長になるよなぁ。


「ここって、正式な部活じゃないの?」

「まあ、誰も文句言わないし。僕はこの部屋が好きなの、落ち着くから」


 うーん、さっきから話していて思ったけど、赤石さんは一人になりたいタイプのぼっちみたいだ。


「あー、ひょっとして僕がいたら邪魔かな。ごめんね赤石さん、一人の時間邪魔して」


 後者のタイプの人間に無理矢理人付き合いを強要するのはよくない。

 何も同じクラスの子をターゲットする事もない、別のクラスでぼっちな子を探そうと僕は諦めて帰ることにしようとするが、


「待って、文芸に興味があるんじゃないの?」


 赤石さんに腕を掴まれて引きとめられる。


「いや、ないこともないけど。赤石さんこの部屋で一人で部活動するのが好きっぽいし、それを邪魔するのも悪いかなって」

「そんな事、僕は一言も言ってない」


 ずっと無表情で機械のような喋りだった赤石さんだが、ムキになっているのかちょっと口調が荒い。


「じゃあ、入部してもいいの?」

「してほしくなかったら、入部届なんて渡してない」


 それもそうか。僕は入部届にサインをする。

 これで文芸部の部員は2人となった。




「で、文芸部って何するの?」

「知らずに入部しようと思ったの?」


 いやあ、本当の理由は赤石さんだしさ。勿論そんな事言えないけれど。


「知ってはいるけど、色々あるじゃん。本を読むだけだったり、本を書いたり、内容について討論したり、そんなイメージなんだけど」

「……基本は、本を読むか、書くか。他校の文芸部と交流することもあるけど、部員2人じゃどうしようもないし」


 なるほど。とりあえず僕も本を読むことにしよう。赤石さんの向かいに座り、部室にある本を適当に1冊抜き出して読むことにする。

『ウチは家具屋姫』という、家具屋の娘が家具を売る小説だ。

 しばし流れる無言の時間。僕は無言で本を読み、赤石さんは無言で執筆作業。

 赤石さんは何とも思っていないのかもしれないけれど、僕としては気まずい。




「ところで赤石さんって、友達いないの?」


 何を話したもんだかと悩んだ末、僕は初手から突っ込んだことを聞くことにした。

 赤石さんはノートパソコンを閉じて、こちらを無表情で見つめてくる。怒っているのかな?


「いませんけど」

「作ろうと思わないの?」

「別に」


 もう会話は済んだと言わんばかりに、再び赤石さんはノートパソコンを開いてカタカタとタイプする。

 やっぱり僕がいると邪魔なのかなあ?

 気まずい空気の中、僕は赤石さんとのコミュニケーションを放棄するかのごとく読書にふける。





「ああああああああっ!」


 チラッと部室に飾ってあった時計を見ると5時半。

 そこで僕はとある重大な用事を忘れていた事に気づき、悲鳴を上げる。


「ひぃっ!」


 これには流石に赤石さんも動揺したようで、椅子から転げ落ちてしまう。 


「ご、ごめん赤石さん。怪我はない?」

「ええ、大丈夫」


 赤石さんを助け起こしながら何度も謝る。


「本当にごめん。今日はちょっと用事があって、帰らないといけないんだ」

「そう」

「それじゃあ、また明日」

「待って」


 カバンを手に、部室を飛び出そうとする僕を再び赤石さんは腕を掴んで引きとめる。



「基本は、僕はほとんど毎日放課後はここにいるけど、別に毎日が部活動ってわけじゃないから、気が向いたときでいいから」

「わかった」


 彼女の今の言い方、僕にもう来てほしくないのか、また来てほしいのか、どっちなんだろう。

 いや、今はそれより急いで学校を出ないといけない。




 学校を出て、全速力で下校ルートを走る。

 その途中にある養護学校の前で、


「みたきちゃん、もうお家に帰りましょう?」

「やだ! やだ! あたるくんがむかえにくるんだから!」


 みたきちゃんが、養護学校の先生相手にビービー泣いて暴れていた。

 そう、僕はいつも中学校が終わるとすぐに同じ時間帯に学校が終わるみたきちゃんを迎えに行っていたわけだ。

 そして今日は部活動をするなんて勿論みたきちゃんには言っていないわけで。

 その結果、1時間半以上もみたきちゃんは待ちぼうけ。


「本当にごめん!みたきちゃん」

「あ、あたるくん! えへへ、それじゃあせんせー、さよーなら」


 僕の姿を確認すると、みたきちゃんは瞬時に笑顔になる。




「その、みたきちゃん。僕、今度から、みたきちゃんと一緒に帰れなくなるかも」

「なんで?」


 他の女の子と一緒に部活動をするため、だなんて口が裂けても言えない。


「みたきちゃん、今日は一緒に寝ようね、お風呂も一緒に入ろう」

「うん!」


 まるで浮気がばれて体で黙らせる夫みたいだな、僕は。ははは。

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