表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
小学校 みたきちゃん係(知的障害)
24/107

みたきちゃんと初詣

「模試B判定だったよ……」

「いいじゃん、俺なんてD判定だったし」


 冬休み直前、クラスメイトのそんな会話が聞こえる。

 そう、僕達はもうすぐ小学校を卒業して中学校へ。

 そのまま地元の公立中学へ行く人が大半だが、受験をする人間もいる。

 僕も、受験をする予定の1人であった。

 大半のクラスメイトは公立中学へ行く。

 僕とみたきちゃんを迫害してきた彼等とうまくやっていける自信が、僕にはなかった。

 頭がいいから先生に受験を勧められたというのもあるし、公立中学の評判が悪いから親が受験を勧めてきたという理由も勿論ある。

 それに、どうせみたきちゃんもそのまま公立中学へは行かないだろうし。




 受験勉強をしながら、みたきちゃんと遊びながら、冬休みになって。

 今年のクリスマスは、家族と過ごした。

 みたきちゃんも家族と過ごしたようだ。

 聞いた話によると、再婚したらしい。新しい家族がみたきちゃんの理解者になってあげられることを、切に望む。




 大晦日。

 家族と年越しそばをすすりながら、赤白の歌番組を見ていた時のことだ。

 ピンポン、と家のチャイムが鳴る。僕が玄関に一番近かったので僕は玄関へ出向く。


「はい、どなたですか」

「あたるくん! あけましておめでとう!」


 それは着物姿のみたきちゃんだった。


「みたきちゃん、まだ30分くらい早いよ。……そうだ、みたきちゃん、除夜の鐘つきに行かない?」

「じょやのかね?」

「自分の悪い所を、取り除いてもらうんだ。お菓子やジュースも貰えるよ」

「うん、いく! あたるくん、はやくいこ!」

「はいはい、ちょっと待ってね」


 僕は寒がりなので、こんな冬の日に外に出る時は着こまなければいけない。

 両親に除夜の鐘をつきに行くと伝えて、防寒具を着込んでみたきちゃんとお寺へ。


「あたるくんのふく、もこもこであったかそうだね! ……くしゅん」


 みたきちゃんがくしゃみをする。そりゃこんな冷え込む夜中に着物は寒いよね。


「みたきちゃん、寒いでしょ。ほら」


 僕は自分のつけていたマフラーとジャンパーを、みたきちゃんに着けさせる。


「それだとあたるくんがかぜひいちゃう」

「僕はいいんだよ、子供は風の子だからね……くちゅん」


 カッコつけて見たが、早速可愛いくしゃみをしてしまう。


「そうだ、このまえてれびでこういうのやってたよ」


 みたきちゃんはマフラーを僕の首にも巻きつける。俗に言う二人マフラーだ。


「みたきちゃん、恥ずかしいよ」


 これじゃまるで恋人みたいじゃないか。そりゃあ僕とみたきちゃんの関係は、周りから見れば完全に恋人のそれかもしれない。

 僕だってみたきちゃんを恋人か何かだと勘違いしてしまうこともある。


「わたしはうれしいよ!」

「……そっか」


 だけどみたきちゃんは、そういう概念をきっと理解していない。

 ライクであって、ラブではないのだ。



「さて、ここで除夜の鐘をつくんだよ」

「おっきなすず!」


 地元にあるお寺へ到着。列に並んで、年が明けるのを待つ。

 やがてゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴る。年が明けたのだ。


「あけましておめでとう、みたきちゃん」

「ことしもよろしく、あたるくん!」


 やがて僕達の番になる。


「ぼんのーよ、きえろ!」


 みたきちゃんが元気よく鐘をつく。みたきちゃんに煩悩なんて、ないと思うけどね。

 それに比べて僕は煩悩だらけだろう。みたきちゃんへの劣情、周りの人間への不信感、挙げていったらキリがない。それを清算するためにも、僕は全力で鐘をつく。

 除夜の鐘をついただけで煩悩が消えるなんて有り得ない。結局は自分次第ということは勿論わかってはいるけれど、それでも僕は力強く鐘をつく。



「おいしーね、あたるくん」


 お寺の人に貰った甘酒をこくこくと飲みながら、どうせならお参りもしていこうと神社へ。

 けど、こんな深夜にみたきちゃんを連れ出して、みたきちゃんの家族の人はどう思っているのだろうか。

 そもそもみたきちゃんは家族に了承を得て僕の家にやってきたのだろうか。

 今でこそ小学生でも携帯電話を持つのが当たり前であったが、当時は全然普及しておらず、女子高生がポケベルを持っているくらいのものだった。

 まあ、多分大丈夫だろうと都合のいい判断をして、みたきちゃんと近くの神社へ。

 五円玉を投げ入れて、手を二回叩いてお参りをする。

 さて、何をお願いしようか。受験に受かりますように?それとも、みたきちゃんと――



「あたるくん、なにおねがいしたの?」

「ひみつ」

「ふーん、じゃあわたしもひみつ! あ、おみくじがある!」

「引いていこうか」


 みたきちゃんとおみくじを引く。実はここのおみくじは大吉しか入っていないのだけどね。


「やった! だいきちだ!」


 まあ、知らぬが仏。大吉で皆ハッピーになれるならいいことじゃないか。


「ついでに御守りも買おうかな」

「あたしも! これください!」


 僕はお寺の側で御守りや破魔矢を売っている巫女さんに合格祈願の御守りを売ってもらう。


「みたきちゃん、安産祈願なんて買ってどうするのさ、別のにしなさい」

「うーん、それじゃこれ」


 みたきちゃんは恋愛成就の御守りを買った。



「ところで、みたきちゃんは小学校卒業したら、どこに行くの?」


 お寺からの帰り道、僕はみたきちゃんに聞いてみる。


「えーとね、ぱぱとままがおはなしして、やまびこってところにいくんだって」

「そっか」


 やまびこ……最近この町に出来た養護学校だ。

 小学校レベルならまだしも、中学校レベルにみたきちゃんがついていけるとは彼女を成長させた? 僕でも思っていない、両親の判断は妥当だろう。


「あたるくんは?」

「僕は、くさなぎ中学校を受験するつもりなんだ」


 それなりに近いし、共学だし、進学校としての評判も高い。

 ただ倍率もかなり高いので、もっと頑張らないといけないだろう。


「そうなんだ、がんばってね!」

「うん、それじゃ、さよなら」

「うん! さよなら!」


 みたきちゃんの家についたので、彼女と別れ、一人自分の家へと歩き出す。

 別れる。別れる。別れる。



 僕達は小学校を卒業したら、別れる。

 みたきちゃん係ではなくなる。彼女との接点はなくなる。

 そう思うと、自然と涙が溢れてきた。

 できることなら一生小学校を卒業したくない、なんて考えたり。

 だけど、受け入れないといけない。前に進まないといけない。

 僕は涙をぬぐって帰宅。冬休みだからとサボりがちだった過去問を解きはじめるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ