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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
小学校 みたきちゃん係(知的障害)
22/107

みたきちゃんと修学旅行(下)

 修学旅行2日目。

 結局あまり眠れずに、調子の出ないまま僕は着替えて、隣のベッドで幸せそうに寝ているみたきちゃんを起こす。


「みたきちゃん、朝だよ」

「うにゅ、おはおー」


 目が覚めたみたきちゃんはベッドから飛び上がって、元気よく体操をしだす。


「みたきちゃん、僕はちょっとトイレに行ってくるから、その間に着替えておいてね」


 もう今更なのかもしれないけれど、女の子の着替えを見るのはよくないと思うからね。

 10分程トイレに行って部屋に戻る。流石にもう着替えているだろうと思っていたが、


「すぅ、すぅ」


 みたきちゃんは着替えている途中で二度寝してしまったらしく、下着しか身に付けていない。


『風邪をひいてしまいます。かと言って幸せそうに寝ていますし、着替えさせてあげましょう』

『こんな無防備な状態で誘惑してくるこいつが悪いんだ、悪戯してしまえ』


 頭の中戦う天使と悪魔。最終的には天使が勝ってくれたようなので、僕はみたきちゃんを着替えさせて、時間ギリギリまで寝かせた後、優しく起こして朝食を取るため部屋を出て広間へ。


「おいしーね」

「食べ過ぎちゃ駄目だよ、この後またバスで移動するからね」


 ホテルの朝食バイキングと言うのは、何故こんなに美味しいのだろうか。

 食べ放題というのも手伝って、みたきちゃんでなくてもついつい食べ過ぎてしまうだろう。

 特にカリカリベーコンが美味で、タッパーに入れて持って帰りたいくらいだ。



 ホテルからバスで出発して、僕達は長崎の原爆資料館へ。

 正直僕は嫌と言う程広島の原爆資料館に行っているし、6年生にもなってこんなとこに行きたくはなかった。

 それは6年生のほとんどがそう思っていたようで、ほとんどの生徒はそこらへんでお喋りに興じている。

 みたきちゃんは展示をちゃんと見る気満々だし、僕は勿論それに付き合うけれどね。


「かわいそーだね、うぅ」


 みたきちゃんは当時を描いた絵や、黒焦げになったお弁当箱を見て泣き出しそうになる。感受性が豊かなのは、いいことだ。

 それなのに僕ときたら、確かに可哀想だとは思っているが、その対象は全く別のとこにある。

 長崎原爆資料館、この存在そのものが僕にとっては可哀想なのだ。

 広島の原爆資料館に比べればお粗末で、名実共に広島の二番煎じでしかないと感じた。

 ほとんどの生徒は僕と同じことを考えているだろう。

 親に連れられて行った原爆資料館、遠足で行った原爆資料館……広島に住んでいると、どうしても行く機会が多くなるというものだ。はだしの●ンなど何回見た事か。

 こんなところに連れてくるくらいだったら、初めからハウステンボスで遊ぶ時間を増やせ!と皆思っている事だろう。

 とはいえ、修学旅行なのだ。例え面倒くさい、飽きた、そんなことを思っていても、僕達には学ぶ義務があるのだろう。何度も見て初めてわかる事だってある。真剣に展示を見るみたきちゃんに、僕は心を突き動かされていた。



 そして原爆資料館を出た僕達は、おまちかねのハウステンボスへ。

 今日はオランダへみたきちゃんと旅行に行った気分で、楽しむとしよう。



「ふーしゃすごい!」


 巨大風車を見て目を輝かせるみたきちゃん。

 僕もその壮大さには心を奪われてしまう。

 妄想騎士が巨人と勘違いしてしまうのも、無理はないかもしれない。


「観覧車みたいだね、乗れるかな」

「ちょ、ちょっと駄目だよ!」


 みたきちゃんは風車の羽根に飛び乗った。いくらなんでも危なすぎるので僕はとっさにみたきちゃんを抱きしめて羽根からはがす。

 気分はお転婆なお姫様を守る騎士だ、僕も妄想騎士の仲間入りかな。



「おいしーね!」


 佐●保バーガーを美味しそうに頬張るみたきちゃん。ケチャップが口元についているところがまた愛らしい。

 僕は長崎に来たのだからちゃんぽんを食べたかったけど、雰囲気に合わないししょうがないよね。



「あ、かんらんしゃ……はのらないでいいよね」


 観覧車を見つけて嬉しそうにはしゃぐが、急にトーンを落とす。

 ひょっとしてみたきちゃんは、僕とこの間遊園地に行った時、高所恐怖症な僕が情けなくも叫んでしまったことを気にしているのだろうか。


「の、乗ろうよ! 僕すごく観覧車に乗りたいんだ!」

「いいの?」

「いいも何も、僕は高い所が大好きなんだ! さあ乗ろう!」


 みたきちゃんに気を遣わせるなんてあってはいけないことだ。

 僕は無理矢理みたきちゃんを連れて観覧車に乗る。

 正直死ぬほど怖かったけど、終始ひきつった笑顔で耐えました。


「たかーい! すごーい!」


 みたきちゃんもすごく喜んでいるし、良かったです。



 ハウステンボスでたっぷり遊んだ僕達は、再びバスに揺られてホテルへ戻る。

 たっぷり遊んで疲れたのか、僕の横で寝息を立てるみたきちゃん。

 僕はみたきちゃんの口のあたりに耳を近づけて、疑似耳に息吹きかけられを体験してみたり。





 ホテルに戻って、夕食を食べて、昨日と同じく隠れてみたきちゃんをお風呂に入れて、

 後は寝て、明日すぐにバスに乗って広島まで帰るだけだ。


「てれびみよっと」


 みたきちゃんが部屋の中にあるテレビをつけると、丁度ホラー特集をやっていた。


「あうっ、ひー」


 みたきちゃんはホラーが苦手なようだけど、怖いもの見たさで結局食い入るようにそれを見る。

 大丈夫だよ、僕が側についているからね。



 側についているからねとは言ったけど、


「みたきちゃん、自分のベッドで寝ないと」

「やだ、こわいの、いっしょにねるの!」


 だから見回りの教師がいるからまずいんだってば。

 僕は自分のベッドにもぐりこむみたきちゃんをひきはがすが、すぐにみたきちゃんは再び僕のベッドへやってくる。

 お互いムキになって、そんな事を繰り返していた末に、本当のお医者さんごっこをしているような感じになってしまい、慌てて僕は中止して疲れちゃったねもう寝ようねと彼女を自分のベッドで寝かせ、どぎまぎしながら自分も寝る。

 翌日、起きた僕達は着替えて朝食を食べてバスに乗って僕らの町へと戻る。


「しゅーがくりょこう、たのしかったね!」

「そうだね」


 色々あったけど、まあ楽しかったのは事実だ。


「らいねんも、しゅーがくりょこういきたいね!」

「……そうだね」


 来年の事を言うと鬼が笑うらしいけれど、鬼に笑われなくたって、僕は来年の事は考えたくなかった。

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