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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
小学校 みたきちゃん係(知的障害)
21/107

みたきちゃんと修学旅行(上)

「着替えとか、ちゃんと全部準備した?」

「うん!」


 学校のグラウンドで、バスに乗る前にみたきちゃんの荷物を確認する。


「あ、あとこの酔い止めを飲んでおこうね」

「うん!」


 僕はポケットから酔い止めの薬を取り出すと、みたきちゃんに飲ませた。





 秋休みの今日は、修学旅行。2泊3日で九州へ行く。

 吉野ヶ里遺跡、原爆資料館、ハウステンボス……あまり楽しそうなところへは行かないみたいだが、修学旅行は遊びに行くのではないのだから当たり前か。


「よし、全員いるな。それじゃあバスに乗るぞ」


 担任の教師に従って、バスへ乗り込む。




「ながさき、いつつくの?」

「お昼の3時くらいかな」

「まだかなー」


 僕の横、窓側の席で外の景色を見ながらみたきちゃんははしゃぐ。

 信じられないことに広島から九州までバス移動。2泊3日と言うが、実際には3日目は起きたらすぐに広島に帰ることになる。てっきり新幹線を使うと思っていたのに、経費削減ということか。

 朝8時にバスに乗っても、吉野ヶ里遺跡につくのは昼の3時。7時間近くバス移動しなければならないのというのは正直僕だってきつい。だからみたきちゃんにはあらかじめ酔い止めを飲ませておいた。


「ぽっきー☆」


 みたきちゃんは早速お菓子を取り出して食べ始める。酔い止めを飲んでいても甘い物ばっかり食べてたら吐くから程々にしようね。


「ん」


 みたきちゃんはポッキーの先端を咥えたまま、僕の方に顔を近づける。え、これって……


「……」


 僕は顔を赤らめながら、もう一方の先端を咥える。ポッキーゲームだ。

 たまに電車に乗っている時、いちゃいちゃしているカップルに殺意を覚える事があるが、今の僕は他の生徒達から殺意を向けられているのだろう。

 それもただのカップルではない、周りから迫害されてきた、まるでブサイクなカップルのように。

 そのままさくさくとポッキーを両端から食べていく。みたきちゃんの顔が目前に迫った時、僕は口を離してしまう。


「むー」


 みたきちゃんは何だか不機嫌そうだ。そ、そんなこと言ったって、このままじゃキスしちゃうじゃないか。

 不機嫌そうなみたきちゃんの顔を見ることができず、僕はしばらく寝たふりをする。と思ったらいつのまにか本当に眠っていたようで、起きた時には12時となっており、同じく眠っていたみたきちゃんが僕に肩を寄せてすうすうと寝息を立てていた。


「みたきちゃん、そろそろサービスエリアで、ご飯食べる時間だよ」


 できることならこのままでいたかったが、みたきちゃんを揺さぶって、起こしてやる。




 お昼ご飯を食べて、再びバスに揺られて、吉野ヶ里遺跡へ。

 正直僕は、興味を惹かれないね。

 社会の問題でよく出てくるが、こんな昔の事覚えて何になるってんだ、僕は将来考古学者になるつもりなんざない。

 自由行動、みたきちゃんと一緒にその辺をぶらつく。


「あはははは! へんなの!」


 みたきちゃんは展示品である埴輪を見て大はしゃぎ。僕もみたきちゃんくらい素直に喜びたい。

 2時間ほど自由行動をした後、僕達は勾玉作り体験へ。

 こういうのは好きだ、やっぱり何かを作るというのはいいね。勾玉作り自体も、型抜きみたいで面白い。

 僕はデフォルトな、霊魂のような形の勾玉を作ったが、


「おほしさまー」


 みたきちゃんは星形の勾玉を作った。形にとらわれない、流石はみたきちゃん。


「えへへ、はいこれ」


 みたきちゃんは作った勾玉を、僕に差し出す。


「それじゃ、僕も」


 僕も自分の勾玉を、みたきちゃんにプレゼント。ほっこりした気分になった。




 吉野ヶ里遺跡の見学も終わり、僕達は長崎の原爆資料館近くにあるホテルへ再びバス移動。


「まがたまー、あらみたまー、くしみたまー、さきみたまー、にぎみたまー」


 みたきちゃんはバスの中で、僕のあげた勾玉を見つめながら、上機嫌でよくわからない歌を歌っている。

 僕もみたきちゃんに貰った勾玉を見つめる。綺麗にできている。みたきちゃんは装飾系の仕事が向いているんじゃないだろうか。大事にしよう。



 ホテルへついた。

 さて、ここで問題が1つある。



「えへへー、べっどふかふかー」


 僕の寝る部屋で、みたきちゃんがベッドで飛び跳ねている。

 問題、それは部屋の割り当てで僕とみたきちゃんの2人部屋ということだ!

 いくら、いくらなんでもそれはないだろう!余り者グループに無理矢理入れてでも、男女は別々にするべきだろう!

 学校側の対応に疑問を覚えながらも、夕食の時間になったのでみたきちゃんと共に宴会場へ。

 ホテルのご飯でよく見る、青い炎を出すあのろうそく、どこで売っているのだろうか。



 ご飯を食べた後、再び部屋へ戻る。このあとはお風呂に入って、就寝だ。


「おふろはいろー」


 みたきちゃんがバスタオルや着替え等の準備をして嬉しそうに僕を誘うが、


「みたきちゃん、ここではみたきちゃんは一人でお風呂に入らないといけないんだよ」


 男湯と女湯は別々、当たり前だ。


「うー」


 不満そうな顔をするみたきちゃんだが、こればかりはどうしようもない。

 男湯と女湯の入り口まで一緒に行くが、途中で男子の会話を聞いてしまう。



「なあなあ、女湯って覗けるらしいぜ」

「まじで?よっしゃあのぞきにいこうぜ」

「ちなみに誰のが見たいよ」

「スタイルでいったら、みたきちゃんとかありだよな~」



「みたきちゃん、もう少し後になったら、一緒にお風呂に入ろう」

「……? うん!」


 みたきちゃんを連れて部屋へと引き返す。

 みたきちゃんの裸体を、あんな男共に見られてたまるか!

 気分は父親状態。僕は入浴時間ギリギリまで待って、みたきちゃんを連れて男湯へ。


「ごしごしー」


 誰もいない男湯で、みたきちゃんと洗いっこ。

 念のため勝手に男湯の入り口に、本日終了の看板を勝手に立てておいた。




「きもちよかったー、あ、あれやろ!」


 お風呂からあがって、浴衣姿のみたきちゃんは卓球台を見つけるとぴょんぴょんと飛び跳ねる。そんなに飛び跳ねたら浴衣がはだけちゃうよ。




「さぁ! さぁ! さぁ!」


 アニメのオープニングを歌っているのではないし、赤ちゃんを育てるアニメのタイトルを間違えてるわけでもなく、卓球選手の真似をしながらラケットを振り回すみたきちゃん。みたきちゃんは卓球のセンスがある、相手のところに返すだけで僕は精一杯だ。


「たのしかったね!」


 そろそろ消灯時間だ、部屋に戻らないと。

 僕とみたきちゃんは部屋に戻って、歯磨きをして寝る準備。


「それじゃ、電気消すよ」


 電気を消して、僕は自分のベッドに寝っころがるが、


「おやすみ」


 みたきちゃんは僕のベッドにやってきて、僕の隣で寝ようとする。


「ちょ、みたきちゃん、それは、だめだって!」

「なんで? このまえもしてるじゃん!」

「見回りの教師がいるんだよ!」


 別にみたきちゃんと一緒に寝ることが嫌なわけではないが、ここは僕達だけの二人きりの場所ではない。教師にでも見られたら色々とまずい。いや、何がまずいんだ? やましいことなんて何もしていないのに、僕達はただ仲良く寝ているだけなのに。改めて考えてみると、よくわからなくなる。こんな不安定な精神状態ではとてもじゃないけどみたきちゃんの添い寝の相手なんてできないから、ごめんねと言いながら別々に寝るのだった。


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