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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
小学校 みたきちゃん係(知的障害)
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みたきちゃんと6年生

 4月になった。始業式の日、僕はみたきちゃんを迎えに行く。


「あけましておめでとうございます。ことしもよろしくおねがいします」


「みたきちゃん、ちょっと違うよ……今年度もよろしくね」


 季節外れの新年の挨拶をされてはにかむ僕。

 みたきちゃん、また背が大きくなった?





「いっちねんせーになったら」

「いっちねんせーになったら」

「ともだちひゃくにんできるかなー」


 学校まで2人で歩いていると、向こうから黄色の班長旗を持った上級生、それに続く黄色い布をランドセルにつけた1年生らしき3人の子供たちが通る。ついこの間まで幼稚園か保育園に通っていた子が。

 うちの学校では1年生は同じ地区の上級生が先導して学校へ連れて行くことになっている。




「おはようございます!」

「おはよーございます!」


 みたきちゃんが1年生に挨拶をすると、1年生は元気よく挨拶を返す。

 精神年齢……と言ったら聞こえは悪いかもしれないけど、中身は同じくらいなのだろうか。

 しかし1年生は落ち着きがないね、全然違う道に行こうとしたり、蝶を見つけてそれを追いかけて行ったり、そのたびに上級生が大変そうだ。

 かつての僕みたいでなんだかほのぼのしてしまった。



 みたきちゃんをすごく体の大きな小学1年生、もしくは幼稚園児くらいの子だとみなすだけでも、大分イメージは違うのだろう。

 みたきちゃんは飛び級で小学6年生になった小学1年生なんだ、知的障害者ではなく。

 仮にそうだとしたら、周囲の風当たりは強くなっていない気もする。




 学校へつき、始業式を受ける。教師にも1年生や転校生がいるようだ。

 僕の学校は5年から6年になる際にクラス替えをしない。

 クラス替えをするタイミングは3年生になった時と5年生になった時だ。

 だから5年生の時とクラスメイトは同じだし、担任も同じ。

 そのため僕はいまいち6年生になった!という事を実感できない。

 確かにカレンダーを見れば、6年生でしかできないイベントはあるけどさ。

 違ったことといえば、みたきちゃん係を決めるまでもなかったということか。



 今日は授業が無いため、半日で学校はおしまい。

 みたきちゃんと学校を出て、いつものように帰り道。


「みたきちゃん、来月は老人ホームに行くんだよ」

「ろーじんばっぐ?」

「老人ホーム」


 どこでみたきちゃんはロージンバッグを覚えたのだろうか。

 6年生限定のイベントで、来月は老人ホームへ行きそこで老人達と交流をする。ボランティア活動の一環だ。





「ねえねえ」


 みたきちゃんが立ち止まって僕の服を掴む。


「どうしたの、みたきちゃん」

「きょーはおいしゃさんごっこしてくれないの?」

「……」


 みたきちゃんの言うお医者さんごっこは、単なる添い寝だ。単なる添い寝だけど、僕にとっては単なる添い寝ではない。毎日のようにこんなことをしては、僕の精神が持たない。


「毎日やると逆に身体によくないんだよ。だから別のことをしようね。ほら、サクラが綺麗」


 だからはぐらかす。四月だし、ちょうどいい感じにサクラの木が近くにあるし、お花見でもしようよと誘導するのだが、みたきちゃんにそんな通常の誘導が通じるはずもなく、


「いっしょにおふろはいる!」


 何故かグレードアップしてしまう始末。ここでもう一度拒否してしまえば機嫌が悪くなってしまうだろうと、僕は諦めて彼女を再び家に連れ込んで、一緒にお風呂場へ。


「えへへ、ごしごししてあげるね」

「うん、ありがとう」


 羞恥心で顔を赤く染める僕の背中を、思い切りごしごしと洗う彼女。明日は背中が真っ赤になりそうだ。

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