みたきちゃんとお医者さんごっこ
「それでは、6年生の教室でまた会いましょう」
担任がそう言うと共に、終業式の帰りの会が終わる。今日で5年生はおしまい。4月から6年生、最上級生だ。
「みたきちゃん、みたきちゃんは今日掃除じゃないよ」
「はやくかえりたいもん」
教室の掃除をしている僕を、みたきちゃんは手伝った。早く僕と帰りたいから、そんな理由で。
一緒に教室の掃除をしていた生徒が掃除の手を止めて驚く。みたきちゃんが足を引っ張ることもなく、掃除をしてるからだ。
「皆みたきちゃんが手伝ってるのに、手を動かしてよ」
「あ、ああ悪い悪い。みたきちゃん、ほら、ちりとり持つからここにゴミ入れてくれ」
「うん!」
嫌味ったらしく僕が言うと、男子の一人がそう言ってちりとりを手にホウキでゴミを掃いているみたきちゃんの元へ。
掃除を終えて、僕とみたきちゃんは学校を出る。
「春休みが終わったら、僕達6年生だよ」
「ろくねんせい! いちばんうえ!」
なんだかんだ言ってあの日からもうすぐ1年が経とうとしているのか。
「みたきちゃん、これから僕の家、遊びに来ない?」
「うん! あそびにいく!」
何となく、みたきちゃんと遊びたくなったから僕は彼女を誘ってみると、満面の笑みで応えてくれた。
父親は仕事だし、この曜日、この時間帯は母親は買い物に出かけている。
家には誰もいない。僕は鍵を開けて家の中にみたきちゃんを招く。
「僕の部屋、こっち」
「おへや? はじめて!」
適当にお菓子を持って、2階にある僕の部屋の中にみたきちゃんと入る。
僕の与えたお菓子を美味しそうに食べるみたきちゃん。
そんなみたきちゃんを微笑ましく眺めながら、何かしたいことはある? と聞くと、
「おいしゃさんごっこがしたい!」
と答えるみたきちゃん。思わず僕は飲んでいたジュースを噴き出してしまった。
「み、みたきちゃん? 意味知ってるの?」
「くらすのこが、いってたよ! たのしそう!」
「……」
お医者さんごっこ。僕も健全な男子、意味くらいは知っている。彼女がしたいならするべきか、いや、それはまずいんじゃないか、というか僕だってしたいけど、いやいや……色々と葛藤した挙句、マイルドな方向に誘導することにした。
「えーと、お医者さんごっこってのはね、二人で一緒に寝て、お互いの心臓がドキドキしているのを確かめて、生きてるね! って確認することなんだ」
「いっしょにおひるね! たのしそう! やりたい!」
「うん、わかった。それじゃあ一緒に寝ようか」
部屋にある一人用のベッドに横になると、ニコニコしながらみたきちゃんが隣に潜り込む。とてもドキドキする。この心臓の高鳴りはどう考えても異常だ。病気だ。けれどそれは健全なことなんだ。
「なんだかね、こうしてると、すごくおちつくの」
「僕は落ち着かないかな」
「びょーきなの?」
「うん、そうだね。みたきちゃんが一緒に寝てくれたら治るよ」
「じゃあねる! おやすみ!」
ドギマギしながら横になることしばらく、隣からすうすうと可愛らしい寝息が聞こえてくる。僕にはその寝息すら耐えられなくて、寝相が悪くて転げ落ちたことにしようとそっとベッドから出て床で寝る。僕達はまだ子供だから、これでいいのだ。




