表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつか星になる物語

おそらにひかる星のように

作者: じうかえで
掲載日:2026/01/20

 ゆうくんは、ベランダで星を見上げていました。

 さむいさむい、冬のベランダです。ゆうくんは精一杯背伸びをして、星を見上げていました。

 隣には、仲良しのななちゃんもいます。


「さむいね」

「うん、さむいね」


 ゆうくんは、ななちゃんの手を握りました。

 「えへへ」と、ななちゃんが笑いました。ゆうくんも、なんだかこそばゆくなって「えへへ」と笑いました。


 真っ黒な夜空には、ちらちらと星が瞬いています。

 あっちにひとつ、こっちにひとつ。そっちにはふたつ。


「お星さまのおはなし、知ってる?」


 ななちゃんが尋ねました。


「うん」


 ゆうくんは頷き、話し始めました。

 いちばん有名な、お姫様とお姫様を守る騎士のお話です。


「むかしむかし、夜空にはたくさんの星がありました」




 けれど、お空の星は、だんだん見えなくなっていきました。

 それは人間のせいです。人間が、電気を使って地球を明るくすると、星の光がかき消されてしまうのです。


 むかしむかし、星にはそれぞれ、お話がありました。

 けれどそのお話も、星が見えなくなるのと同時に消えていきました。


 これではいけないと思った人々は、お話を集めて、一冊の本にしました。




「……なんだっけ」


 ゆうくんが覚えているのは、そこまででした。

 本の最初には、あの有名な『お姫様と騎士の物語』が載っていたはずですが、それも思い出せません。

 確かに知っているはずなのに。


「ゆうくん、忘れちゃった?」

「うん……ごめんね、ななちゃん」

「じゃあ、わたしが教えてあげる」


 ななちゃんはほほえみました。


「実はわたしもね、お話は覚えてないの」

「ななちゃんも? えへへ、なにそれ」

「でもね、覚えてることもあるの」

「なあに?」


 ななちゃんは胸を張って言いました。


「騎士はね、お姫様を愛していたんだよ」




 愛は見えないけれど、確かにあるものなんだよ。

 まるで、夜空に光るお星さまのように。




「それはぼくも知ってるよ」

「えへへ。そっかぁ」


 ななちゃんは笑いました。ゆうくんも笑いました。

 そのとき、部屋の中から、お母さんの呼ぶ声がしました。


「ゆうー、ななちゃんー、ごはんよー」


 ふたりは顔を見合わせました。

 また、お母さんの声がします。


「今日のご飯はシチューよー」

「「わぁい!」」


 ふたりは飛び跳ねて喜びの声をあげました。

 その拍子に、繋いでいた手が離れてしまいました。


「あ……」

「さむい、ね」


 ゆうくんは手を差し出しました。

 ななちゃんはその手を取り、「えへへ」とくすぐったそうに笑いました。


 ベランダは寒いけれど、手を繋げばあたたかいです。

 ふたりの心も、なんだかぽかぽかしてきました。

 まるで、見えない相手の心が、自分の心にぎゅっとくっついているみたいに。


「いこっか」

「うん」


 ゆうくんとななちゃんは、部屋の方へと歩き出しました。


お読みいただきありがとうございました。

あたたかい気持ちになっていただけましたら幸いです。


よろしければ、ブックマーク、評価(☆)、リアクション、感想、イチオシレビューをよろしくお願いします。作者が飛び跳ねて喜びます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 電気で消えていく星やお話が幾つかあっても、未だになくならないゆうくんとななちゃんの絆や、シチューを用意して冷えた体を温めてくれるお母さんとの愛、ほほえましいですね。  そして間に火傷やケガで慌ててる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ