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いつか星になる物語

おそらにひかる星のように

作者: じうかえで

 ゆうくんは、ベランダで星を見上げていました。

 さむいさむい、冬のベランダです。ゆうくんは精一杯背伸びをして、星を見上げていました。

 隣には、仲良しのななちゃんもいます。


「さむいね」

「うん、さむいね」


 ゆうくんは、ななちゃんの手を握りました。

 「えへへ」と、ななちゃんが笑いました。ゆうくんも、なんだかこそばゆくなって「えへへ」と笑いました。


 真っ黒な夜空には、ちらちらと星が瞬いています。

 あっちにひとつ、こっちにひとつ。そっちにはふたつ。


「お星さまのおはなし、知ってる?」


 ななちゃんが尋ねました。


「うん」


 ゆうくんは頷き、話し始めました。

 いちばん有名な、お姫様とお姫様を守る騎士のお話です。


「むかしむかし、夜空にはたくさんの星がありました」




 けれど、お空の星は、だんだん見えなくなっていきました。

 それは人間のせいです。人間が、電気を使って地球を明るくすると、星の光がかき消されてしまうのです。


 むかしむかし、星にはそれぞれ、お話がありました。

 けれどそのお話も、星が見えなくなるのと同時に消えていきました。


 これではいけないと思った人々は、お話を集めて、一冊の本にしました。




「……なんだっけ」


 ゆうくんが覚えているのは、そこまででした。

 本の最初には、あの有名な『お姫様と騎士の物語』が載っていたはずですが、それも思い出せません。

 確かに知っているはずなのに。


「ゆうくん、忘れちゃった?」

「うん……ごめんね、ななちゃん」

「じゃあ、わたしが教えてあげる」


 ななちゃんはほほえみました。


「実はわたしもね、お話は覚えてないの」

「ななちゃんも? えへへ、なにそれ」

「でもね、覚えてることもあるの」

「なあに?」


 ななちゃんは胸を張って言いました。


「騎士はね、お姫様を愛していたんだよ」




 愛は見えないけれど、確かにあるものなんだよ。

 まるで、夜空に光るお星さまのように。




「それはぼくも知ってるよ」

「えへへ。そっかぁ」


 ななちゃんは笑いました。ゆうくんも笑いました。

 そのとき、部屋の中から、お母さんの呼ぶ声がしました。


「ゆうー、ななちゃんー、ごはんよー」


 ふたりは顔を見合わせました。

 また、お母さんの声がします。


「今日のご飯はシチューよー」

「「わぁい!」」


 ふたりは飛び跳ねて喜びの声をあげました。

 その拍子に、繋いでいた手が離れてしまいました。


「あ……」

「さむい、ね」


 ゆうくんは手を差し出しました。

 ななちゃんはその手を取り、「えへへ」とくすぐったそうに笑いました。


 ベランダは寒いけれど、手を繋げばあたたかいです。

 ふたりの心も、なんだかぽかぽかしてきました。

 まるで、見えない相手の心が、自分の心にぎゅっとくっついているみたいに。


「いこっか」

「うん」


 ゆうくんとななちゃんは、部屋の方へと歩き出しました。


お読みいただきありがとうございました。

あたたかい気持ちになっていただけましたら幸いです。


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― 新着の感想 ―
 電気で消えていく星やお話が幾つかあっても、未だになくならないゆうくんとななちゃんの絆や、シチューを用意して冷えた体を温めてくれるお母さんとの愛、ほほえましいですね。  そして間に火傷やケガで慌ててる…
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