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第13話   優しさの質量①


明けましておめでとうございます…!(\初日の出/)


書き貯められたので年始から毎日12時に投稿します。

暇つぶしに見てもらえると幸いですm(__)m




 一週間が過ぎて七月に入る。

 暦の上では夏にあたるのだが今年は冷夏らしく梅雨が長い。整備された歩道沿いの花壇には色とりどりの紫陽花が咲いていて、道行く人たちの多くは厚着の恰好をしていた。



 ノベル・コミック編集部のデスクに座る深夏はひざ元にブランケットを乗せて、デスクトップのディスプレイを見つめていた。


「今日ちょっと寒いよね」

 デスクで『なれる』の投稿作品を読んでいた有希は、隣の席の深夏に声をかける。

「そうですよね。私冷え性持ちで……。天宮先輩は寒くないんですか?」

「全然大丈夫」

「でも今ちょっと震えていたような……」


 先輩というワードに気を良くして震えたと正直に述べたらこの後輩に何と言われるだろう。不安に思った有希は「休み明けだからかも」と体よく嘘をついた。



「先週、有給を三日使っていましたよね。風邪ですか?」

「先月残業多くてさ。その日も残業明けで疲れていたのと、高校野球の地方予選も始まるから思い切って三日休んじゃった。女子と男子、どっちも追いかけるととにかく時間がかかるんだよね」


 有希はデスクの隅に置いていた高校野球を特集した雑誌を深夏に見せる。


「充実した時間の使い方じゃないですね」

「そうかな?」

「母校の試合は見に行くんですか?」

「時間が合えばね。でも夏コミやら即売会イベントがあるからライブ配信で見るかも」

「私は新卒なので今年の夏コミは自由参加だと備前さんから言われてます」

「コミカライズの作家さんが参加してたら挨拶するのが礼儀だし、それに良さそうな作家さんがいて仕事に結びつきそうなら編集会議で挙げることもあるからね」

「編集にとってはスカウトの場でもあるんですね」

「深夏さんの場合だと女性向けイベントの方がメインになるかも。ちょうどいいからイベントスケジュール表、共有しておくね」


 深夏のパソコンの通知に、有希のパソコンから送信されたデータがポップで表示される。


「ありがとうございます」

「でも忙しくなるのは来月からだから、それまでは比較的やることが少ないかも」

「しいて言えば編集会議が今日あるくらいですね」

「月初めの会議だから備前さんのありがたいご説法が聞けるね」


 ノベル・コミック編集部では毎週火曜日に編集部員のみで行う編集会議がある。ただし、第一週目の編集会議だけは社内会議と合同となり、そこでは会社の方針や部内売上など社内情報の共有、ハラスメント対策、各セクションで進行している大型プロジェクトの進捗、その他報告、そして社内の偉い人たちの統括などが各所属長から伝達される。有希と深夏は聞くだけだからまだいいものの、小一時間しゃべり続けなければいけない備前にとって月初めの編集会議は悩みの種で、いまちょうど会議資料を見ているだけなのにすでに気だるげだった。


「面倒くさいなぁ……」

 編集長のデスクに座る備前は手元のタブレット端末を眺めながらため息をつく。

「会議無くせないかなぁ……」

「役職の備前さんがそれを言うのはどうかと」

 そう言って有希は苦笑した。

「だってハラスメント対策なんて社外のニュースを扱うんだよ。最近だと『パーカーおじさん事件』とかあったじゃない」


 『パーカーおじさん事件』とはとあるコラムニストが書いた四十歳くらいの中年男性がパーカーを着るのはおかしいという記事がネットニュースになり、その後各方々へ飛び火してネット上の大騒動に発展したもので、備前は先月の編集会議においてその騒動の情報を一字一句余さず読み上げた。


「『おじさんがパーカー着てました』――だから何? って天宮さんも思わない?」

「要は、人の装いを無暗に否定しちゃ駄目ですよという諭しじゃないんですか」

「切り口によっては思考の転換が得られるかもしれないけど、社員の労働時間を削ってこれを共有する必要があるかと問われると絶対違うでしょ」


 備前の口が歪んだまま戻らない。普段は色々な面で寛容な上司だけど違うと思ったことに対しては割と反発する気質で、こうなると聞く耳を持たなくなることを知っている有希はそそくさと『なれる』の閲覧に戻った。



 有希は『なれる』で良さそうな候補作を片っ端から読み進めていくいつもの作業。隣では深夏が作家とのやり取りを順調にこなしている。

 日常において人生を揺るがすような大事などめったに起こることもなく、日々の暮らしは今日も何事も無く進んでいく。

 しかし時には予測しない事態が起きることもまた日常の一つである。


「こんにちは」

 ノベル・コミック編集部に一人の来客がやってきた。


「はい、どうしまし――」

 反射的に挨拶して顔を上げた有希がその場で固まる。


 編集部に現れたのは詩海だった。





伊達巻きはおいしい。


――――――――――――――――――――――――

※本作品は実在の法律的根拠ならびに過去の判例を参考に執筆しているエンターテイメント作品のため、

 法律または法律的助言の提供を目的としたものではありません。

 法解釈における正確性や妥当性に関しては努めて配慮しておりますが、

 作品外における作品内容の利用に関してはご自身の判断でご利用ください。


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