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婚約解消寸前まで冷えきっていた王太子殿下の様子がおかしいです!  作者: 大月 津美姫
5章

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71 王城図書館の禁書庫へ

 城の一角にある両開きの大きな扉を開けば、そこには本好きには堪らない空間が広がっていた。

 広い空間に綺麗に並んだ棚。壁一面を覆う本棚は二階建ての高さがある天井まで延びている。室内の真ん中には調べ物や勉強が出来るよう長机が設置されており、王族は勿論、城で働く誰もが自由に使えるスペースになっている。


「ここが王城の図書館! 素敵ですわぁ!!」

「とても広くて、迷ってしまいそうです!」


 ケイティとジェマが感嘆のため息を漏らす。特に本が好きなケイティは興味津々で、視線を忙しなく動かしていた。


 アルバートの婚約者であるベアトリスはここに何度も訪れたことがある。ベアトリスも最初に訪れた時は、ケイティたちのようにはしゃいだことを思い出して懐かしくなった。


 そんな王城の図書館は更に奥へ進むと階段があり、広い部屋の三分の一程のスペースに二階のフロアがある。一階ほど広くないそこは主に歴史書が保管されていて、その奥に禁書庫へと続く扉があるのだ。

 そこから先は鍵が掛かっており、王族と王族の許可を受けた関係者しか入れない。禁書閲覧の許可を受けている官僚が禁書を閲覧する場合は、まず司書に声をかける決まりになっている。


「エルバート、ケイティ嬢とジェマ嬢の案内を頼んだよ」

「はい。アルバート兄様、お任せください」


 兄から頼りにされて嬉しそうなエルバートは、「それでは行きましょうか」とケイティたちに声を掛けて、早速案内を始めようとしている。


「ティルダもエルバートたちに付いて行くと良い」


 アルバートにそう言われて、フランクがいる方に付いて行くつもりだったティルダは「えっ?」と声を漏らす。


「複雑な話をする予定なんだ。それに、禁書は難しいからティルダは退屈すると思うよ」


 これから話す内容のこともあり、アルバートは妹を想ってそう勧めた。だが、ここまで付いて来たティルダの意思は固かった。


「いいえ。わたくしも禁書庫に行きますわ」

「無理しなくて良い」

「無理などしておりません!」


 一瞬、フランクを見たティルダはサッとベアトリスの腕に抱き付く。


「ベアトリス様とフランク様がいらっしゃいますもの。わたくしはこちらにご一緒したいです!!」


 珍しく禁書庫に入りたがるティルダをアルバートは不思議そうに見た。

 ベアトリスはティルダの恋心を知ったこともあり、彼女がフランクと少しでも一緒に居たい気持ちをよく分かっていた。たとえ、ほんの少しの間だとしても、好きな人と過ごす時間はそれだけ特別なのだ。


「アルバート様。せっかくですし、わたくしもティルダ様とご一緒したいです」


 ベアトリスはティルダを見て、それからアルバートを見ると微笑む。


「私も賛成だ。別に、ティルダ王女に聞かれて困る話ではないのだろう?」


 フランクがそう確認すると「仕方ない」とアルバートが呟く。


「……そこまで言うなら、好きにしてくれ」


 こうして、アルバートはティルダの同席を認めた。


 目的の扉の前にたどり着くと、アルバートが禁書庫の鍵をポケットから取り出して、扉を開ける。この部屋に入るのはベアトリスも初めてだ。アルバートに続いて中に入ると、図書館よりも少し狭い間隔で本棚が並んでおり、こちらも壁一面が本棚になっていた。


 天井は通常の部屋の高さと変わらないが、所狭しと本が並んでいる。それなのに、不思議と圧迫感はない。

 部屋の中央に机があって、図書館よりは少ないが、本を読んだり、調べ物をするスペースが確保されているからかも知れない。


「禁書って、希少本で少ないイメージでしたが、こんなに数がありますのね」


 ベアトリスが呟くと、アルバートが「あぁ」と頷く。


「本自体は一般的でも、大昔に発刊された貴重な初版本もここに保管してある。だから数が多いんだ」


 言われてみれば、確かに背表紙だけでも経年劣化が窺える書物が幾つかあった。


「一先ず座ってくれ」


 それだけ言うと、アルバートは目的の本棚へ一直線に向かって行く。

 ベアトリスたちは机の椅子を引いて、ベアトリスとティルダは隣同士に座り、フランクは向かい合う形で腰を下ろした。その直後、アルバートが本を手にして戻ってくる。


「それは?」


 フランクの問い掛けにアルバートは全員に表紙が見えるよう掲げる。


「魔女の遺した遺物や、その時代の不思議な現象について書かれた本だ」


 アルバートがフランクの隣に腰掛けて、ベアトリスたちに見えるよう、机の真ん中に本を置いた。そして本を開くと、目的のページを探し始める。

 三人は本の中身を覗き込むように顔を近付けた。


「まず、魔女の残した遺物とは主に魔女の秘薬だ。今では失われたものもあるが、数十種類の秘薬のレシピが現在も残っている」

「もしかして、それがこの本に載っているのかい?」


 フランクの問い掛けにアルバートは「あぁ」と頷く。


「だが、今回知りたかったのは、魔女がいた時代の不思議な現象についてだ」

「それって、魔法のことですか?」


 ベアトリスの問い掛けに「それも関係あるが、私が知りたかったのは魔法とは少し違う」とアルバートが答える。それから、アルバートはベアトリスとフランクを禁書庫へ連れてきた本題を話し始めた。

【おしらせ】

「婚冷え」の感想欄を閉じることにしました。

詳細は「「婚冷え」の感想欄に関して」というタイトルで活動報告に上げていますので、気になる方はそちらをご確認ください。


切りが良いところまでお話が進んだ時か、作品が完結した時にまた感想欄を開く予定ですので、その際は是非ご利用頂けると嬉しいです。


これからも婚冷えを応援よろしくお願いします!

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◇完結済みの連載作品はコチラ
悪役令嬢にされてしまった公爵令嬢は未来の旦那様を探す旅に出たい〜それなのに、婚約破棄だと言ってきた王太子殿下が止めてきます〜
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