52 とある場所のとある少女
お話の都合上、いつもよりかなり短い回となります。
ご了承下さい。
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ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。
規則正しい電子音が小さな室内に響いている。どこか遠くから聞こえてくる話し声と聞き慣れない音の騒がしさに、少女は顔をしかめた。
「う゛っ、……んんっ……」
喉が渇いていて、痛い。おまけに身動きを取ろうにも鉛のように重い身体。
わたくし、どうしたんだっけ?
少女はおぼろげな記憶を手繰り寄せる。倒れる直前のことはハッキリ思い出せなかったが、お茶会の翌日に熱を出して倒れたことだけは覚えていた。
すごく楽しみにしていたから、はしゃぎすぎて身体が驚いちゃったのかしら?
少女はぼんやり考えながら、ゆっくり目を開く。すると、その瞳に白い天井が映し出された。
「??」
いつもの自室ではない景色に少女は頭が混乱する。
「ここは、……どこ?」
ガラガラ声で呟くと衣擦れの音がして、それから「りりあ?」と女性の声がした。
知らないその声の主が少女の顔を覗き込む。女性は少女が目を開いている姿を確認すると、途端にくしゃりと顔を歪めて大粒の涙を溢した。
「っ!? うっ、……あぁっ!! りりあ!! 目が覚めてっ! 本当に! 本当に良かったぁ!!」
ぎゅうっと、女性が少女を痛いぐらいに抱き締める。抱き締めるその強さから、彼女がどれだけ少女のことを心配していたかを表しているようだった。
「っ、りりあ! ……ちょっと待っててね! 直ぐに先生を呼んでくるからね!!」
抱き締めていた少女から身体を離した女性は言いたいことだけ告げて、ドタバタと足音を響かせながら遠ざかって行く。
りりあ?
それは誰のこと?
そして、貴女は…………誰?
自分が置かれている状況を確かめるべく、少女は動かせる範囲で視線を動かした。
見知らぬこの場所は、少女が初めて目にするものだらけだった。
「……っ」
それらの存在は少女を不安にさせ、更に彼女の疑問を増やしたのだった。




