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婚約解消寸前まで冷えきっていた王太子殿下の様子がおかしいです!  作者: 大月 津美姫
2章

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33 幼い頃の記憶~ベアトリスとアルバートの出会い~

「いいかい、ベアトリス。今日はお前と同年代の子どもたちが王城で行われるお茶会に招待されている」


 父であるリュセラーデ侯爵の言葉に、ベアトリスはパッと顔を輝かせて「はい! お父様」と返事をすると、数日前にフランク本人から聞いた話を報告する。


「今日のお茶会はフランクも呼ばれているそうです」

「あぁそうだな。エセッレ公爵令息のフランクも勿論、招待されている。でも、だからと言ってはしゃぎすぎてはいけないよ」

「どうしてですか?」

「今日のお茶会で、次期王太子であるアルバート様の婚約者候補が絞られるともっぱらの噂だ」

「婚約者候補?」


 難しい言葉にベアトリスが首を傾げると「王子様のお嫁さんになるお姫様のことだよ」とリュセラーデ侯爵が説明する。

 年頃の女の子にとって夢のような響きの単語に「お嫁さん! お姫様!!」とベアトリスはピョコンと跳ねて反応した。


「だから、リュセラーデ侯爵令嬢として恥ずかしくない振る舞いをするように」

「分かりました! お父様、お任せください」


 元気に返事をしたベアトリスは幼いながらにも優雅な仕草でカーテシーを披露する。


「ははっ、良いぞ! ベアトリスならアルバート様の婚約者候補に選ばれるだろう」


 上機嫌で笑うリュセラーデ侯爵。そこへ一人のご婦人が近付いてくる。


「貴方、勝手なことを言わないで下さい。ベアトリスはまだ恋を知りません。この子はフランクと仲が良いから、フランクを好きになるかもしれないわ」


 母の登場にベアトリスは「お母様!」と駆け寄って抱きついた。そんなベアトリスを受け止めながら、ムッと頬を膨らませた侯爵夫人に侯爵は機嫌良く笑う。


「それならそれで、その時に考えれば良い」


 フランクの母であるエセッレ公爵夫人は、ベアトリスの母と友人だ。彼女たちは自分たちの子どもが仲良く遊んでいる姿を見て、二人が婚約したらどれだけ素敵なことかしら? とお茶の席で何度か話していた。そのことを互いの夫も認識しており、会えば婚約の話が話題になることもあった。

 このままいけば、自然とベアトリスとフランクが婚約する流れになることもあり得ない話ではないのだ。


「まぁ、随分と能天気ですこと」

「何をを言う。それに、もしもアルバート様の婚約者候補に選ばれたなら、ベアトリスにはリュセラーデ侯爵家のために頑張って貰わねばならない。ベアトリスとて貴族令嬢に生まれたからには優先すべき順位を守って貰わねば」


 そう言ったリュセラーデ侯爵の視線がベアトリスに向けられる。それに気付いたベアトリスが父を見上げると、その顔は侯爵の顔から優しい父親の顔に戻った。


「とは言え、親としてはベアトリスが一緒にいて幸せだと思う人と結ばれて欲しいものだな。……私たちみたいに」


 そう呟いて、リュセラーデ侯爵は夫人を抱き寄せた。


「えぇ。そうですわね。それが一番素晴らしいと、わたくしも思いますわ」


 侯爵夫人はそう答えると、愛おしい人に寄りかかった。そして、娘の未来に想いを馳せながら、未だに抱き付いたままのベアトリスの頭を撫でた。



 ◇◇◇◇◇



 王城で行われるお茶会の会場に入ったベアトリスは、侍女のマリーナのみを連れていた。

 集まった貴族の子どもたちはまだ社交界に出ていない年齢のため、初めましての顔ぶれが多い。そんな中、ベアトリスは数秒で見知った顔を見付けた。


「フランッ……フランク様、ごきげんよう」


 いつものように呼び捨てにしそうになったベアトリスは慌てて呼び直す。


「やぁ、ベアトリス嬢。今来たところかい?」

「はい。フランク様は?」

「私は少し前に着いたんだ。そうだ! 君に私の親友を紹介させてくれ」


 フランクに手を引かれて、ベアトリスは会場の中を進んでいく。


「いたいた! アルバート!!」


 アルバート……?


 呟かれた名前にベアトリスは聞き覚えがあった。


『今日のお茶会で、次期王太子であるアルバート様の婚約者候補が絞られるともっぱらの噂だ』


 父の言葉を思い出したベアトリスはハッとする。


 次期王太子の王子様の名前! ということは、アルバート・アーサー・ウォルシュ殿下のことだわ!!


「フランク、良く来てくれたね!」


 フランクの呼び掛けに気付いた一人の男の子がパッと笑顔を見せてそう言った。


 この方が、アルバート様?


 ベアトリスは目の前の人物を失礼にならない程度に観察する。

 彼は金髪碧眼の優しげな顔立ちに、見かけも見目麗しく、まさしく理想の王子様像そのものだった。


「アルバート、彼女がベアトリスだ」


 フランクに紹介されて、ベアトリスは何度も練習した挨拶を優雅に行った。


「リュセラーデ侯爵家のベアトリスです」

「君がベアトリスか! 君のことはフランクからよく聞いているよ」


 アルバートの発言にベアトリスは「え?」と、固まる。フランクは王子様にベアトリスの話をよく(・・)しているらしい。

 一体どんな風に自分のことを伝えられているのか、ベアトリスはドキドキしながら彼の言葉を待った。


「良く笑う可愛らしい幼なじみの女の子がいると。本当にその通りだね」


 にこっとスマイル付きで言われて、ベアトリスの頬が赤く色付いていく。


「かっ、かわっ、可愛らしい!?」


 ベアトリスは思わずアルバートとフランクを交互に見た。

 フランクから可愛らしいと思われていた事実と目の前の王子様にもそれを肯定されたことで、ベアトリスの胸に恥ずかしさに似た気持ちが溢れてくる。


「あ、ありがとうございます……」


 それがお世辞だったとしても、面と向かって異性から“可愛らしい”と言われたことが、ベアトリスは素直に嬉しかった。

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◇完結済みの連載作品はコチラ
悪役令嬢にされてしまった公爵令嬢は未来の旦那様を探す旅に出たい〜それなのに、婚約破棄だと言ってきた王太子殿下が止めてきます〜
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