第1章 第7話 レッツゴー他クラス!
「朝よ! 起きなさいっ!」
……なんか、声が、する……。女の声だ。だが母さんや妹のものではない。
目を開けると……テント? ああそういえば高校に入学できたと思ったら野宿生活になったんだっけ……。
「……おはよう、斬華」
「おはよう外村くん。あなたが一番最後よ」
テントの外に出て起こしてくれた斬華に挨拶すると、ちょっと心にくる一言と共にラップで包まれたおにぎりを渡してくれた。
「これもらってもいいの?」
「ええ。外食はコスパ悪いからね。やっすいアパートを借りてそこで作ってきたのよ。数は限られるけど充電もできるし、お風呂やトイレも使える。鍵はかけてないから自由に使っていいわ。でもZ組みんなのものだから私物化しないように」
「ありがとう。昼飯にするわ。おやすみ」
「はいストップ。あんた本当に馬鹿ね」
なんだよまだ朝8時じゃないか。まだまだ起きるのには早すぎるぞ。
「今日は午後からの入学式だけだろ? それまで寝たい」
「あんた自分の立場わかってる? 私たちは頭が全てのこの学校で一番下にいるの。誰よりも努力しないといけないのよ」
「いやでもまだ授業も始まってないし勉強は……」
「勉強も大事だけど、今はもっと大事なことがあるじゃない」
「勉強より大事なことが高校生にあるわけないだろ!」
「なんであんたがそんな正論言うのよ!」
「悪い、冗談だ」
「お願いだから冗談で済まさないで……!」
なんか斬華さん怒ってるなー。朝だから機嫌悪いのか?
「いい? 私たちは最底辺。だからこそ何かしらのアドバンテージが必要になるの」
「ああ、美味いよな」
「いつまでそのネタ引っ張る気……?」
斬華は落ち着くためか一度息を大きく吐き、そして言う。
「私たちに最も必要なのは、情報よ」
「ああ、美味……いやさすがに情報はわかるわ」
つまるところ桂来学園のことを他のクラスの奴らよりも先に理解しておきたいということだろう。
頭が全て。それは勉強の能力だけでなく、考える力や発想も含まれるということが昨日わかった。
カンニングが認められていたことをどれだけの人が知っているだろうか。そもそも本当にカンニングができたのか。
知る必要がある。そうしないといつまでもこの野宿生活のままだ。つまり、
「敵情視察に行くわよ」