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第1章 第3話 諦め

 一目でわかった。



 詰んだ。完全に詰んでいる。テストの問題がひとっっっつもわからない。



 問題自体もそうだが、そもそも選択できる科目自体がわからない。



 まず国数英社理は必ず解かなければいけないそうだが、数学Ⅰってなに? 日本史Aってなに? そんな授業受けた覚えないんだけど。



 それに加え、自由選択科目5科目。たとえば必須枠で現代文を選んでも自由枠で古文、漢文なんかを選択できることはわかったけど、勉強系科目をこれ以上増やす意味はない。



 認めたくないが、俺は馬鹿だ。でも運動ならそれなりに自信がある。そう思って体育を選択してみると、普通に文章問題が出てきやがった。動けるだけでバレーが何人でやるスポーツかとか知るわけがない。こちとら人数無制限の遊びしかしたことがないんだ。



 まぁつまり、お手上げ。配布されたペンはさっきから無駄にスクロールさせることにしか使っていない。



 そもそも地面に座りながらテストを受けること自体ありえない。なんか腰が痛くなってきた。



「ふぅ……」



 思い切って横になってみたが、前の方でパイプ椅子に座ってこちらの様子を窺っている南先生はなにも言ってこない。これありなんだ。



 ……にしても本当にわからないな。選択問題を探してみたけど見当たらないし、これは本当にアウトかもしれない。



 0点をとったら4月を所持金0で過ごさなければならない。もう野宿は仕方ないとして、タダで飯食えるのだろうか。答えによってはマジで死にかねない。



 それに今の季節ならいいけど、夏や冬を空調なしで過ごすというのも地獄。それにそれに……。



「……ん?」



 あ、れ……。俺、寝てた……? 確か今はテスト中で……。



「やばっ!」

「外村くん、静かに」



 学校から支給されたものではなく、反射的に自分のスマホを確認すると、時間は昼2時を回っていた。……あ、やばい。無意識にツイッター開いてた。爆睡してたけど今はテスト中。さすがに巡回するわけにはいかない。



「やべー、1万5千しかとれなかったわー」

「俺なんか1万2千だよテント買えっかなー」



 後ろの方からそんな自虐風自慢の声が聞こえてくる。もうみんな終わったのか……いや。終わったのは俺と同じ純粋に0点をとったと思われるチャラ目の連中だけ。凧さんのような事故で0点をとってしまったと思われる人たちはまだタブレットに向かっている。



 だがあれは朗報だ。あんな馬鹿そうな連中でも1万は手にしている。俺が圧倒的に劣っているわけではないだろうし、俺もそれくらいとれるのかもしれない。



 なんとかがんばって……と座り直してみると、視界の隅に止まった。



「っ……!」



 画面の光量を限界まで落として焦りを露わにしている女子が。



 テストが始まってから5時間近くが経過している。充電なしで点けっぱにしていればそろそろ限界か。でも当然この野外にはコンセントなんて大層なものは引かれていない。もし途中で電源が落ちてしまったらおそらく。また0点になってしまうだろう。



「せんせー!」

「どうかした?」



 手を挙げて先生に呼びかける。別にあの子を助けたいとかではない。でもこのタブレットもせっかくなら有効活用してくれる人のところに行きたいだろう。



「たとえばサインアウトしたタブレットを拾ったとして、それにサインインすればその人のものになったりしますか?」

「そうだね。落とした人が悪いし、その認識で間違ってないよ」

「おっと手が滑った!」



 答えを聞いた俺は、テストの答案を送信し、サインアウトしてからタブレットを前の女子の方に投げる。



「ぇ……。え……?」

「しまったタブレットを失くしてしまったー。先生新しいのくださーい」

「後で持ってくるね。それとキョロキョロしないように」



 俺とタブレットを交互に見て困っている女子に南先生が注意する。俺のタブレットはスリープモードになってたからまだ充電はあるはずだ。



「ぁ、りがと……」



 タブレットを拾った女子の小さな感謝の声と共に、スマホに通知が来る。



 開いてみると画面にはテストの結果が既に届いており。



「0点、か……」



 段ボール拾いの旅に出発することになった。

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