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第1章 第16話 クラス替えゲーム

「……ごほん。取り乱しちゃったね、ごめんなさい」



 永夢さんにチョコを食べさせられ、落ち着きを取り戻した生徒会長、黒峰さんが一度咳払いをする。



「それでは改めまして。ただいまより1年生4月度イベント、クラス替えゲームの説明をさせていただきます。また、説明を繰り返すことはございませんし、教職員へも含め質疑応答は一切受け付けません。各自メモや録音などをとり、よく理解した上でイベントに臨んでください」



 はーん……なるほどこれは覚えられないパターンだな。後で龍華辺りに聞けばいいか。だがそんな呑気な顔をしているのは俺くらいで、隣のY組の生徒は真剣さと恐怖が入り混じった顔でステージを見上げている。おそらくほとんどはそんな感じだろう。



「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ルールはいたってシンプル。月末、4月28日に昨日行ったテストと似たような形式の5月分テストが行われます。その日の20時時点でポイント総数が多かった順にクラスが変動するというものです」



 よし、やっぱりわからない。かと言って聞くわけにもいかないしなー……と思っていると、黒峰さんがスマホを取り出した。



「みなさん、入学時に配布されたスマートフォンを見てください。初期アプリの中に、桂来学園の生徒、及び教職員全ての名前、連絡先、所持ポイントが載っているものがあるはずです。しばらくの間話をしてもいいので開いてみてください」

「どれ?」

「上の方……これだよ」

「こんなものがあったのね……知らなかったわ」



 許可をもらったので、奈々と一緒に龍華に助けを求める。タップしてみると、クラス毎に分かれた名簿表が出現した。本当に名前とポイントが表示されてる……。これ俺が0点だったってことが全校生徒にばれるってことだよな……恥ずかしい。



「開けましたか? それでは右上をタップし、ソート順を4月度イベントに変更してください」



 言われた通りにやってみると、トップがA組からJ組に変更される。その下はH、G、Iという順番。A組は遥か下に移動してしまっていた。



「これアルファベット順じゃないよな?」

「そうだね……。これはクラス全体の総ポイント順だよ」



 総ポイント? よくわからないが……1年J組と表示されている名前の隣には、343人、49,643,845ptと書かれている。その下のH組は、285人、47,683,225pt。どういう意味だ……?



「クラス全員の総ポイント順に並んでいますね? これが現時点での順位。つまり次回のテストが終わり、新たにポイントが配布されたタイミングで総ポイントが多い順にクラスが再編されます。わかりやすく言うと、このままイベントが終了すれば、J組が新たなA組。H組が新たなB組、ということになります」



 その説明を聞き、会場がわずかに揺れるほどのざわめきが起こる。ここまで聞けば俺でもわかった。



「人数が多いだけでめちゃくちゃ有利ってことか……!?」

「そうだね……。Z組はかなりピンチかも」



 そうだ……! J組が300人超えに対し、Z組はわずか15人。順位は……!?



「下から、3番目……?」



 どういうことだ。なんでZ、W、Yなんていう順番になってる……?



「私のおかげよ、感謝しなさい」



 考えていると、後ろからたいして誇らしげでもなさそうな奈々の声がした。そうか、Z組には30万ポイント越えが最低でも3人いる。人数がたいして変わらず、全体的な学力もそこまで大差がないのなら、Z組の方が総合ポイントが高くなるってことか。



「みなさん、だいたいのルールはわかりましたね?」



 マイクを通した黒峰さんの声が聞こえるが、ほとんど周囲のざわめきによってかき消されている。聞き逃したら終わりなのにこれはまずいんじゃ……。



「おい」



 そんな俺の不安をかき消すように、パン、という空砲の音が会場に木霊した。



「幻ちゃんが喋ってんだろうが。お前らゴミが邪魔してんじゃねぇよ」



 台詞だけ聞くと口が悪い大賀さんのもののようだが、その声は恐ろしく低いながらも女性の声。アイドル風の明日那さんがピンク色の拳銃を天井に向け、恐ろしい顔で俺たちを見下していた。



「明日那、ストップ」



 さっきも恐ろしいと思ったが、あれとは比べものにならないほどの恐ろしい表情に会場が静まり返り、黒峰さんの制止の声だけが響いた。



「では続けます。とは言ってもこれでルール説明は終わり。簡単にまとめると、次回のテスト終了時にポイント総数が多ければ多いほど上位のクラスに上がれる。単純でしょう?」



 ああ恐ろしいほどに単純だ。俺でもだいたい理解できた。



 だが単純だからこそ、恐ろしい。こんなの、クラスの人数が多ければそれだけで勝てるクソゲーじゃないか。



「それでは開始の宣言をさせていただきます」



 だが桂来学園は頭だけが全ての学校。つまり、頭を使えばこの現状を打破できるということか……? でも、どうやって……!?



「ただいまより、1年生4月度イベント、クラス替えゲームを開始しますっ!」



 理解できているが、理解できないままに。イベントが始まった。

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