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第1章 第15話 第2学年生徒会

 1年生4月度イベント。生徒会の穂火さんは確かにそう言った。



 永夢さんが言っていたイベント、っていうのがこれなんだろう。だがその存在を知っているのは俺たち3人だけ。



「イベントってなんだ……!?」

「ってか生徒会って、『あの生徒会』だよな……!」

「あのアイドルっぽいのが生徒会……!? 冗談だろ……!」



 この場にいるほとんどはイベントやら生徒会やらとは初対面。周りのざわつきが止まらない。



「アイドル! 俺初めて見たっ! 誰だか知らんけど!」



 たぶん有名人とかだよな……! 一般人があんな格好するわけないしかわいいし! さすがにテンション上がるっ!



「うんうん。元気だねー……」



 かわいいけ……ど……あれ? ピンクの拳銃なんて持ってたっけ……?



「……誰が喋っていいって言った?」

「あぶなっ!」



 拳銃が、火を吹いた。俺を含め、今喋っていた生徒全員に向けて。



 なんとか俺は避けられたけど……当たった生徒は、当たった部位がピンク色に染まっていた。



「あのさー……アイドルの現場と一緒にされちゃ困るんだよねぇ……」



 さっきまでの甘い声とは全く毛色の違う、低く重い声音に全員の視線が壇上の穂火さんに向けられる。



「明日那ちゃんのライブにコールなんていらない。黙って明日那ちゃんのパフォーマンスを見てなさい。ピンクペイント3つで強制退場だからね」



 顔自体は変わらない。とてもかわいらしい顔だが、その視線は鋭く、強く俺たちを見下ろしていた。いや俺たちっていうか……俺だけ?



「それと。誰が避けていいって言った?」

「っぶね、マジ! うわぁっ!?」



 さっき避けてしまったからだろうか。拳銃なのにガトリングのような乱射が全て俺へと注がれる。



「……? なんで当たらない……?」

「反射神経には! 自信! あるんスよっ!」



 頭が残念な分、運動方面にはそれなりの自負がある。いやでもさすがにきつっ……!



「は~い。明日那ちゃんストップ~」



 いい加減まずいと思っていると、穂火さんの身体に後ろから誰かが抱きついた。あれは……間違いない。



「永夢さんっ!?」

「だめだよ明日那ちゃ~ん。あの子永夢のお気に~」

「……そう。なら今回は特別に見逃してあげる。彼の後ろの女子ーっ。ごめんねーっ。あとでポイントとサイン書いたげるから許してーっ」



 銃撃が止まったのはいいが……後ろ?



「あ、ごめん、気づかなかった……」

「でしょうね……」



 俺が避ければ、当然後ろにいる奈々へと当たってしまう。奈々の全身は穂火さん以上に真っピンクになってしまっていた。



「ちょうどいいからご紹介! 第2学年生徒会会計、永夢楠ちゃんですっ!」

「よろしく~」



 奈々をどうしたものかと慌てていると、ステージの上で永夢さんを紹介している声がする。いや今はそれよりも奈々を……。



「おい。そんなので慌ててんじゃねぇ」



 さすがに今回の声を気にしないわけにはいかない。さっきまでの女子のものとは違う、明らかな男性の声がステージからしたからだ。



「その無能っぷり。さすがはZ組ってところだな」



 その声の主。派手な金髪をオールバックにした男子生徒は、めちゃくちゃ怖い顔で俺を見つめていた。



「ごめんねー。彼は第2学年生徒会副会長、大賀蹴人(たいがしゅうと)くん。顔と口は怖いけど、ほんとはとっても優しいんですっ。今も『人に向けて撃ってるんだから拭けば落ちるよ。そういうところを考えられるようになれればZ組から上がれるかもね』ってアドバイスしてくれたんだよ」



 いやさすがにそれはないだろ……。



「……いつも翻訳してくれて助かる」



 ほんとだったっ!?



「ほい、タオル。使っていいよ」



 あまりのツンデレっぷりに驚愕していると、制服を着崩して丸いサングラスをかけた何とも怪しい男子生徒がいつの間にか奈々にタオルを差し出していた。



「ありがとうございます……」

「いいよいいよ。つか明日那! 全員集めた理由がこんな雑用させるためだけなら自分帰んぞっ!」


「しょうがないでしょ、2年生徒会が説明するよう言われたんだから! そうそう、彼は第2学年生徒会庶務、連座太朗(れんざたろう)くん。見た目変だけど、爆速で雑用をこなしてくれる便利屋さんっ!」

「下の名前出すんじゃねーよだせぇからっ! ほんと帰っかんなっ!」



 そう言い返しながらも奈々が身体を拭くのを素早くサポートし、汚れたタオルをビニール袋に回収してステージに上がっていった。ものすごく仕事ができるって感じだ。



「今のところ変人集団って感じね……。相当な超人って噂は嘘だったのかしら」



 話がストップしているからか、汚れ一つなくなった奈々がため息交じりにつぶやいた。



「でもまだ生徒会長が……あぶなっ」

「そこ静かにっ!」



 また撃ってきたよ……。拭けば落ちるってわかったけど怖いもんは怖いぞ。



「4人紹介したんだから最後の1人も紹介しないわけにはいかないよね。じゃあラストは我らが生徒会長! 黒峰幻(くろみねまほろ)ちゃんっ! どぞーっ!」



 一層気合いの入った紹介と共にステージに現れたのは、いたって普通の女子。背が高く、美人で綺麗って感じだ。さっきは普通と思ったが、理想的な女子高生すぎてそう感じただけ。はちゃめちゃにレベル高いぞ。



「1年生のみなさん、はじめまして。先程ご紹介に与りました第2学年生徒会会長、黒峰幻です。それでは私の方から1年生4月度イベントについて説明させていただきます」



 うわー……。さっきまで変な人たちが暴れてたからかすごくまともに見える。いや実際まともなんだろうが……。



「1年生4月度イベントは……ククク。この、イベントはぁ……。あーはっはっはっ! ぶわぁーはっはっはっ!」



 ……んんん?



「おい幻の奴チョコ食べんの忘れてんぞ!」

「あははははっ! アツイアツイ激アツっ! このタイミングで発作とかアツすぎるよ幻ちゃん~っ!」

「チッ、めんどくせぇ。おい明日那、時間稼げ」

「了解! 幻ちゃんはね、頭良すぎて常に糖分を摂取しとかないとクレイジーになっちゃうんだよっ! かわいいねっ!」



 な、なんだこれ……。俺たちは何を見させられてるんだ……?



「俺が抑えておく。お前らはチョコ食わせろ」

「はい、あ~ん」

「おせーよっ! 自分に代われ!」

「だめだめそれはスキャンダル! 炎上しちゃうよっ!」

「私に触るなぁぁぁぁっ! あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



 これが……桂来学園の最高峰……で、いいのか……?

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