第1章 第13話 支配者
「「なんでっ!?」」
生徒会への勧誘を断ると、なぜか両隣の龍華と斬華から激しいツッコミが飛んできた。なんでって言われてもそんなの……。
「俺がそんな真面目っぽい仕事やりたいと思うか?」
「生徒会特権その1~。このビルの一層丸々使えるよ~」
「やりますっ! 俺がんばりますっ!」
話が一気に変わった。一層って……え!?
「Z組みんな住めるじゃんっ!」
「蓮司くん覚えてる? ここから教室まで電動自転車で30分近くかかるよ?」
「確かに! やっぱやめますっ!」
「生徒会特権その2~。毎月100万ポイントのボーナス~」
「やりますっ! 俺がんばりますっ!」
話が一気に変わった。100万ってテストのマックスじゃん! やばっ!
「でも本当にすごいですね……」
「ちなみに一層使えるのはA組も同じだよ~。人少ないから余ってるんだ~。だから永夢いま激アツ~」
「噂には聞いてましたけど常軌を逸してますね……A組と生徒会は」
「そんなにいいものでもないんだよ~? 結構クラス頻繁に変わるから引っ越し大変で数部屋しか使ってないし~生徒会も辞めさせられることもあるし~。しかもどの学年も4月終わりは移動激しいからめんどいって気持ちの方が大きいっていうか~」
「えっ!? いいも……」
「外村くんは黙ってなさい!」
「いやそうじゃなくて! 4月終わりにクラス替えがあるって言いましたっ!?」
「!」
いつもの調子で俺を否定した斬華が驚愕の顔を浮かべる。俺だってびっくりだ。
「すぐこの環境から抜け出せる……?」
驚くことしかできない俺たち3人を見て、永夢さんがニィッ、と口角を上げた。
「当然だよ~。入試なんてただの学力自慢。桂来学園はもっと弱肉強食だもん。クラス変動イベントがあれば、ポイント増減のイベントもある。毎月一度行われるイベント如何によってはZ組から一気にA組に上がることだってできるよ~。事実永夢は、Aから一気にXまで落とされたこともある」
イベ、ント……? その意味から大きくかけ離れてるが……。
「じゃああのテストは4月分のイベントってことか……?」
「まさかぁ~。あれは生活費のための毎月の定期試験。たかだかカンニングの可否に気づけるかどうかの試験がイベントになれるわけがないでしょ~?」
やっぱカンニングありだったんだ……じゃなくて。
「イベント、っていうのは。あれ以上に難しいものなんですか?」
「そうだね~。君たちの4月分イベントはこの後の入学式で発表されるけど、まぁ次元が違うよ~。たぶんだけど、今のA組は……おっと失言! これ以上はここでは言えないかな~」
A組がなんなんだよ……! 気になる言い方しやがって……!
「そろそろ時間かな~。とりあえず生徒会の話は保留ってことにしとくからもう少し考えといて~」
のんびりと立ち上がった永夢さんは「でも一つ」と付け加え、この場を閉じる。
「生徒会に入れば、この学園の支配者になれる。これだけは事実だよ」
支配者、という言葉が何を指しているかはわからない。
だがソファーが。両隣からの揺れによってわずかに震えていることだけは気づくことができた。