第1章 第10話 A組
「えっ!? あのビルってA組の寮なのっ!?」
「知らなかったんだ……」
「ほんとなるべくしてZ組になったって感じね」
かなり遠くからでも見えるほどの高く、綺麗な二本の高層ビル。敷地のちょうど中心にあり、引くほど目立つからシンボルだということはわかっていたが、たかだか寮のためだけの施設だとは思わなかった。
「でもA組って3学年合わせてもせいぜい100人くらいだろ? それだけの人数のためにビルを二棟って……」
「もっと少ないんじゃないかな。ほら、入試って100点満点だったでしょ? 同じ点数の人がたくさんいるから、1クラスの人数に偏りがあると思うんだ。96点の凧さんもB組相当らしいし、たぶん100点か99点の人しかA組に入れなかったと思う」
「そもそも両方共寮ってわけじゃないわ。片方が寮で、もう片方は教室棟。渡り廊下がいくつかあるでしょ? あれで専用の教室に行くのよ。レストランとか色んなショップも入ってるらしいし、一生外に出ないでも暮らせるようになっているらしいわ」
へー……めちゃくちゃすごい……。
「ていうかやりすぎだろ……」
「桂来学園の象徴って感じね。頭さえよければ最高の人生を歩める。極端だけどまさにシンボルだわ」
目の前まで来たはいいが、なんか見上げる首が痛くなってきた。
「上だけ見てたら駄目ってことか……!?」
「珍しく頭使ったと思ったら発想が負け犬ね」
「上を目指してがんばろう! ってことじゃないかな」
はーん……。まぁB組とかならそう思うだろうが、Z組だとどうもな……。文字通り住む世界が違い過ぎる。
「まぁいいや。とりあえず入ってみようぜ」
「ほんと馬鹿ね。こんなセキュリティが凄そうなところに侵入できるわけないでしょ」
「いや寮はそうだろうけどさ、教室棟は大丈夫だろ。どこまで行っても教室なんだから。上級生の教室が入りづらいみたいなもんだ。それにもし駄目だったならごめんなさいすればいいだけのことだろ」
「……一理ある。こんなすごい建物見たら普通はそんなこと考えられないわ。ほんと発想がトんでるわね」
「? ありがとう」
「褒めてないわよ。どちらかというとね」
「ところで蓮司くんってその……ヤンキー……ってやつ?」
「なんで? 馬鹿だから?」
「まとめるとそうだけど、恐れ知らずって感じよね。さっきも喧嘩しようとしてたし」
「中学の頃はヤンキー漫画にハマってたから憧れてたけど、実際見てみたら怖かったからやめた」
「ださ……」
「いいことだと思うけどね」
「でも喧嘩では負けたことないぞ?」
「どうせしたことないからとかでしょ?」
「いや俺喧嘩では金的しか狙わないから最強なんだ」
「やっぱださ……」
色々話したが、とにもかくにも。
「行くか、桂来学園のトップに!」