表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【外伝追加】傷ついた心を癒すのは大きな愛  作者: 雪本 風香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/61

似た者姉弟1

 抱き合っても千尋の心は離れていく。分かっていたが、武史は何度か千尋を求めてしまった。

 千尋も拒むことはしなかった。

 千尋も、心の傷を埋めるように武史を誘う。そんなことをしても埋まらないのに、濡れていない状態で強引に挿入してもらうと、つかの間だけ心の痛みを忘れられる。

 最初はそんな抱き方はイヤだと抵抗した武史も、最終的には反対に武史から求める時は大事に抱くことを条件に、しぶしぶながら千尋が望むならと受け入れた。

 正面から抱くと辛そうな武史の顔が見えるため、後ろからねじ込んで貰う。


 そういう時は大概行為が終わったあと、千尋は武史に背を背けながら謝る。

「ごめんなさい。……また、タケちゃんのことを……」

「ええんや。利用して欲しいって言うたんは俺や。俺も千尋が欲しいからお互いの利害一致しとるけん、謝ることはないわ」

 後ろから抱きしめながら、武史は囁く。


「盆過ぎたら遊びに行こうや。その頃には仕事落ち着いとるやろ?」

「うん」

「どこがええ? 橋渡って本州行ってもええし、橋の途中の島にも見せたい場所ようけあるけん」

 どこがいい、と言われても思い浮かばないが、何か言わないといけない気がして、必死に考える。

 少し前に駅の観光案内で見た一枚のポスターを思い出し、武史に伝える。

「……お相撲さんが」

「ん?」

「お相撲さんが一人で相撲取るのがみたい」

「一人相撲の神事やな。秋にもあるから見に行こか」

 他にも連れていきたいところあるから、予定合わせていこうな、と言う武史に流されるように、千尋は微かに頷いた。



 一足先にに来た敏子と共にお盆の準備をする。

「ちーちゃんもここでの暮らし馴染んでいるようでよかったわ!」

「タケちゃんのおかげです」

 敏子と一緒に話しながら準備をして、当日の流れを確認する。

「おっさんには電話しといたわ」

「おっさん?」

「あー、この辺はお坊さんのことおっさん言うんよ」

「へぇー」

 2日後の11時にお坊さんがお経を上げに来て、その後車で墓参りに行き、敏子達夫婦は解散する。父方の墓参りに行くらしい。

 武史や智史は行かなくていいのか聞くと、ええんよ、と言う。

「秋に法事あるけん、そん時でええんよ。辺鄙な場所にあるけん、行くだけで大変やけんね」

 敏子に盆準備を教えて貰いながら、千尋も久しぶりに武史以外の人とこの家で過ごす時間に、ホッとしていた。



 敏子と三人で早めの晩御飯を食べ終わった頃、智史が訪問する。

「久しぶりだな、二人とも。武史は?」

「あんた、もっとはよ来いや。ウチもう帰るで」

「悪い、電車乗り遅れたんだ」

 今日一度帰宅し、明後日再び来る予定の敏子の小言を聞き流した智史は、夕飯の残りを指でひょいと摘むと口に入れた。

 お行儀悪い、という敏子を躱すように台所から立ち去ろうとするが、智史の気配を察知した武史が台所に現れた。

「兄貴、来たんか。遅かったな」

「武史、久しぶり。元気か?」

「まぁ」

「相変わらずだな」

 智史は気にも止めず笑う。


 敏子を見送った後、夕飯を食べている智史に付き合い千尋は台所にいた。

「千尋、いいよ。仕事あるだろ?」

「せっかくだから喋ろうよ。タケちゃんはもう寝ちゃったし」

 明日仕事という武史は早々に部屋に引き上げている。

 コーヒーを飲みながら智史に付き合う千尋は、取り留めのない話をする。

 仕事の話や大学の同期の話で盛り上がった後、智史 は千尋に切り込んだ。

「武史と何があったん? お前、精神的に不安定だろ?」

「そんなことないよ」

「まさか、誤魔化せると思っていないよな?」

 千尋は息を呑んだ。智史とは大学が同じということもあり、親戚の中では仲がいい方だ。

 また智史は出版社に勤めていたため、大学卒業した後も比較的付き合いがあった。

 まだ大学の時は今より自分を隠せなかった。不安定になった千尋がどうなるかも智史は知っている。

「柳田先生の時はそこまで不安定にはなっていないだろ?」

 千尋はため息をついて観念したように話し出した。


「タケちゃんに告白されてキスされたの。一度は拒んだ。忘れてくれって。でも忘れられると腹が立って二度目は受け入れたの。……それから何度もタケちゃんと関係を持って、その度に宝物のようにしてくれる。

なのに、タケちゃんに大事にされればされるほど、自分と向き合わないといけなくて。タケちゃんはそれでも、と受け止めてくれるけど、私は……」

「私は?」

 智史の問いに何度か息を吐き、目を伏せながら答えた。

「タケちゃんと一緒にいると苦しい……。愛されるのが怖い……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ