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【外伝追加】傷ついた心を癒すのは大きな愛  作者: 雪本 風香


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デート2

 あまり焼物に詳しくない武史は、色々な窯元の商品を販売している店へ千尋を連れて来た。

 目的地に着いた武史は千尋を起こす。

「着いたけん、起きや」

 大きなアクビをしながら、目覚めた千尋はまだ半分夢の中のようだ。

 寝ぼけて焼き物を割らないか心配をしたが杞憂だった。

 焼物を見ると、千尋は目の色が代わり物色を始める。一緒に来た武史のことは意識から飛んでいるようだ。


 一つ一つ丁寧に、それこそ穴が空くように見つめ、時折手に取って感触を確かめる。

 店内をじっくり一周した千尋は、気に入ったものがあったようで店員を捕まえてあることを聞く。

「このお茶碗のデザインって個別には売っていないんでしょうか?」

「ごめんなさいね。これは夫婦茶碗限定のものなんよ。こっちと対になっとるでしょ?」

「やっぱりかぁ。……ありがとうございます。もう少し悩みます」

「いーえ、じっくり選んでちょうだい」

 店員が離れたのと入れ違いに千尋の側に行く。

 同じ工房の似たようなデザインの茶碗を手に取り確認しているが、どうやらしっくりこないようだ。

 焼物にはこだわりがない武史にはどちらでも良いものに映る。

「そっちやったらいかんのか?」

「うん。何か違うの」

 そう喋っている間にも視線の先は先程の夫婦茶碗だ。

「欲しい方にしいや。後悔するやろ」

「でも……」

「なんや?」

「一個使わないの勿体ないじゃん」


 流石に千尋も、夫婦茶碗を進んで買う気にはならないようだった。

「俺が使えばええやろ」

 なんの気なしに言うと、驚いた様子の千尋に武史の方がビックリする。

「変なこと言うたか?」

「だって、ペアだよ! 夫婦茶碗なんだよ!」

「わかるわ、それくらい。2つ一緒やないと買えんのやし、千尋はそれが気に入ったんやろ? 一個使わんのが勿体ないと思うんやったら、俺が使ったらええだけやけん」

 ごく当たり前のように言う武史の言葉に、それでもしばらく迷っている風な千尋にダメ押しの一言を添える。

「それとも他のでええのあったんか?」

 ブンブンと首を振った千尋は、やっと覚悟を決めたようだ。

「ないならそれにしたらええ。半分出すわ」

「いいよ。タケちゃんにお世話になっているから、これは私からのプレゼント」

 千尋は夫婦茶碗とその他にいくつか目星をつけていた皿や箸置き、マグカップを手に取るとレジへと向かっていった。


「皿とか小物、1つずつでよかったんか?」

 販売所の隣にあった定食屋で早めの昼ごはんを取りながら、武史は千尋に聞く。

 隣に販売所があるからか、器はすべて隣で販売している窯元の作品のようだ。千尋は一枚だけ写真をとると、料理に舌鼓をうつ。

 食事が口にあったのか夢中で料理を食べていた千尋は、武史の質問の意図がよく分からない表情をする。

 武史は目の前の料理を指差しながら話す。

「この小鉢、同じもんが入っとるから同じ器やろ? 同じ形の器が1つしかなかったら、違うもんに入れるしかないから不便やないんか?」

「......あ、そっか」

 今初めて気づいたというように千尋は話す。

「今まで同じお皿を複数買うことなかったから。実家には元々お皿複数あったし、一人暮らししてからは自分のためにしか買ったことないから抜けていた」

「そうなんか。......敢えて避けとんかと思ったわ、ペアとかお揃いとか」

 少しだけ踏み込んだ質問だった。吉と出るか凶と出るかわからなかったが、聞かずにはいられなかった。

 千尋は武史の言葉に一瞬目を見開き、次の瞬間吹き出す。

「それはないよ。元々食器が好きだけど、昔はお金なかったから少ししか買えなくて。その時の癖かな。それに……」

 そう言ってどこか吹っ切れた顔をしながら続ける。

「あの人は私の料理殆ど食べなかったから、お揃いとか持ってなかったの。扱いも雑でお気に入りの食器割れたことあるからそれ以降、あの人の分は百均で買ってきた食器とマグカップでしか出したことないし」

 そう言って笑う千尋の表情に影は見られなかった。

 その様子に安心したように武史も笑う。

 質問したことは吉と出たようだ。ホッと息をついた武史に神様はもう一つご褒美をくれる。

「確かに同じお皿ないと不便だから、ご飯の後でもう一回寄ろうよ。タケちゃんの分のお皿買い忘れちゃった」


「……ええよ」

 予想外の言葉に驚いた武史は、何とか言葉をひねり出す。

 上擦りそうな声を抑えようとしたからか、ぶっきらぼうな答えになった。

 素っ気ない言い方は武史の照れ隠しだと気付いた千尋はクスクス笑っている。

「その代わり、今まで以上にご飯食べてよ」

「当たり前やろ。千尋の飯ならこれから先もずっと食いたいわ」

 自分の顔が赤くなるのを自覚しながらも、武史は今言える範囲で、心の底からの思いを伝えた。

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