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「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞  応募作品

ブラウン管の叫び

作者: マガミアキ

※ホラー作品です。

 小学四年生の頃、祖母宅の使っていない部屋で古いブラウン管テレビを見た。

 これテレビ?

 何も映らないよ。電源は入るけどアンテナに繋がっていないからね。

 祖母とそんな会話をした。

 ブラウン管テレビを初めて目にした僕は興味本位で電源を入れてみた。画面に映ったのは白黒の砂嵐だけだったが、チャンネルのダイヤルをカチカチと回すたびに砂嵐が縦に流れるように動き、その様子が新鮮だった。

 ダイヤルを回しているうちに、スーツ姿の男性らしき影が見えた。何だ、映るじゃん。

 ニュース番組だろうか、何か喋っているようだが、灰色の画面は上にいったり下にいったり安定しないし、音声も不明瞭だ。

 だ……う……あ……だ……お。

 何かは聞こえるが、意味が取れない。ダイヤルを回したりテレビの横を叩いたりするが、画面が調整できずにぐるぐる動く。

 止まったと思ったら、画面の下だけ動いて、お陰で映っているスーツの男性の顔の部分がにゅーん、と下に引き伸ばされた。

 目と、鼻の穴と、口とが下に大きく引き伸ばされて、丁度ムンクの「叫び」に描かれた人物の顔みたいになった。

 ううい……や……あ……だあ……も。

 縦に引き伸ばされた顔が、もごもごと不明瞭な音を出している様子が奇妙で、僕は一人でけらけらと笑った。

 おおう……いいい……ああ……だああ……。

 音声も少し拾えてきたようだ。間延びした声が、これまた面白い。

 もおおお……う……いい……や……ああ……。

 何だか同じ言葉を繰り返している気がする。最初は声出して笑っていた僕だけれど、歪な顔をした男が、もごもごと間延びした声を出している様子に、ちょっと気味悪く感じ始めていた。

 おおおう……いい……あああ……あああ……。

 もおおおう……いいいやあああ……だあああ……。

 もおおおう……いやあああ……だあああ……。

 え? 意味のある言葉が聞こえた気がして、思わず僕はテレビの電源を切った。

 暗くなったブラウン管のガラス面に僕が映り込む。

 それなのにスーツ姿の縦に引き伸ばされた男の顔は、消えていない。

 おかしい、ガラス面には僕の顔がちょうど鏡のように――。


 反射的に振り返った。

 目と、鼻の穴と、口とが下に大きく引き伸ばされて、丁度ムンクの「叫び」に描かれた人物みたいな顔が目の前にあった。

「もういやだあああ」

なろうラジオ大賞2 応募作品です。

・1,000文字以下

・テーマ:ブラウン管

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