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灰神の臥薪嘗胆  作者: 夜猫
幼子の絶望
3/6

三話 門の兵士

夜が明けて、昼になる頃には都が見えてきた。死んだニエベの体は、昨夜死んだまま私の隣に置いてある。

馬車の床に染み込んだ血はまだかすかに濡れていて、触ると手に付いた。

私の服はかあさまとニエベ、二人の血をかぶって赤黒く染まり、もともとそんな色だったかのようだ。

綺麗だった私の銀髪も血で染まり、来ている服と同じように、赤黒くなっている。

昨夜から馬たちは馬車を引き続けている。


「ニエベさんだったら、あなたたちがどうおもっているとか、わかったのかな?えへへ、わたしにはわからないや...。ごめんね...?」


馬は気にするなと言わんばかりに、それでも少し寂しそうに嘶いた。

しばらく、息づかいと、風の音だけが鳴り、何も無くなってしまった...。そう感じた。


「そこの馬車!止まれ!」


そう、声がして、馬車を牽引していた馬たちが、大きないななきを発して、止まる。

私が馬車の中から、ひょいと顔を出すと、馬車は都の城門の前で止まっていて、鎧を着た一人の兵士が持っている槍を、馬車の前に突き出していた。

兵士は、顔を出した私を見ると、一瞬狼狽して、ぎょっとした顔をした。

それでも、訓練されているのか、すぐに落ち着きを取り戻して、何があったのかと問いただした。

私は、私の住んでいた家が、骨によって襲われてたこと。

逃げ出したところを、旅人に助けてもらったが、その人も骨のせいで死んでしまったことを話した。


「本当か?馬車の中身を確認させろ!」


兵士は強引に馬車の中に押し入り、中を確認しだした。

すると、兵士の手がピクリと止まる。


「おい!これはどういうことだ!」


そう言って、兵士は私に白い粉の入った袋を見せてくる。


「これはこの都への持ち込みが禁止されている薬物だぞ!貴様、こんなものを持ち込もうとしたのか!」

「えっ!?」

「貴様、馬車から降りろ!貴様を連行する!」


兵士はそう言って、私の手を痛いほど強く握り、無理やり馬車から降ろし、城壁の方に連れて行く。


(どういうこと?ニエベさんがそんなものうるようなひとにはおもえないし...)


怪訝に思い、私の手を引っ張る兵士を見ると、その顔は醜く歪んでいた。


(このひと....、なんでこんなにわらってるの?...そんなことしてどうするの?もんだいなんて、ないほうがいいんじゃないの?)


「ほら!ここに入れ!」


兵士は私の手を引いて、詰所だろうか、砦の中の小さな、木の扉が付いている部屋に入れ込んだ。

兵士は私が部屋に入ったのを確認してドアを閉めると、私に向き直った。


「さて、お前が持ち運ぼうとしていたこの薬だが、この都どころか、国全体で禁止されてる代物だ。それを、なんでお前が持っている?」

「しらないです!ソルはそんなくすりもってないです!ソルはばしゃのもちぬしのたびびとさんにたすけてもらっただけです!」


自分を助けてくれたニエベさんを悪く言うようで心が痛んだけれど、そんなことも言ってられない。下手をすれば私が犯罪者になってしまう。そう思って、事実をそのまま話した。


「黙りやがれ!この際てめぇが助けてもらったかどうかは関係ねぇんだ!てめぇが薬を持ち運ぼうとしたのが問題なんだよ!」

「ソルはわるくないのです。いけないくすりをソルはもちこもうなんてしてないです。」

「許して欲しいのか?」

「...ゆるしてくれるのですか?」

「ああ、その体で対価を払ってくれたらな!」


そう言って、兵士が私の手をさっきよりも強く押さえつけ、服を脱がそうとする。


「やめてください!」


そう言いながら、私がジタバタと抵抗していると、部屋の木の扉が勢いよく開かれた。

兵士も私もハッとして、身動きをやめて扉の方を見ると、そこには、そこの兵士よりも少し豪奢な鎧を着た女性が立っていた。

とても綺麗な女の人だった。

彼女は金属光沢のある鎧に負けないほど綺麗なブロンズの髪をしていて、立ち姿からは気品が感じられる装いだけれども、飾り気のない頭の後ろで一つに結われた髪からは、彼女の戦いに対する姿勢が伺える気がした。


「あなたは何をしているのですか?」


彼女が、そう問いかけをした途端、私を捕まえている兵士の表情が焦っているように見えた。


「あなたは、何をしているのですか?」


彼女が再度問いかける。


「いや、その、こいつが禁止されている薬物を持っていまして、それを調べているのですよ。」


兵士がどもりながらも、そう説明する。


「それで?」

「それで、...他に持っていやがらねえか探していたんですよ。」

「あなたの仕事は何ですか?」

「へ?」


兵士が思わず、素っ頓狂な声をあげる。


「あなたの仕事は、何ですか?」

「こ、この都に変なものが入らないようにすることです。」

「そうですね。では、なぜ、門に人がいないのですか?」


兵士は問われている理由が思い当たったのか、先ほどよりも、動揺が激しくなる。


「お、俺、い、いや、私がこいつ、この少女の取り調べをしていたからです。」

「あなたが取り調べをしていたから、...少し違いませんか?私は別に、あなたがこの少女の服を脱がしてまで、()()調()()をしようとしていたことに怒っているのではありません。あなたが取り調べのために、門から離れることを連絡しなかったことに対して、私は怒っているのです。私たちの仕事は、外からやってくるものからこの都を守ることです。あなたが門から離れている間に、それこそ、<骨>などが入ってきたらどうします?あなたはもっと自身の仕事に責任を持つべきです。いいですね?」

「...はい。」


説教を貰った兵士は、うつむきながら、渋々といった感じで、返事をした。


「わかったのなら、早く戻りなさい。この少女の取り調べは私が行います。」

「...わかりました。」


兵士はまた、渋々と、扉を開けて、部屋から出て行った。


「さて、それじゃあ、何があったのか、教えてもらいましょうか?」

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