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槍と氷で頑張ります!  作者: 鹿鹿
1章 新しい人生
12/29

12話 ギルド

店を出ると、日が少し傾いてきていた。


ギルドは服屋から反対方向にあるので、少し歩く必要がある。この商業区?には色々な出店なども出ていて、見ながら歩くのは楽しかった。途中で中々良さそうな物があったので、ルーンにオネダリして買ってもらうw


奴隷と服の費用も出して貰ってるのに、図々しい奴だな。と自分でも思う。でもお金は持って無いし、稼げる様になったら、返して行くつもりなので、あまり気にしなかった。

それにこれは絶対に欲しかったのだ。


そんなこんなで寄り道しながら歩いているとある事に気づく。露天商の人や街の人はほとんどルーンの知り合いで、行く先々で声を掛けられていたのだ。


いくら第2の故郷とは言え、ここまで知名度が高いとは思わなかった。不思議がっていると。


「そんなに大きい国ではないですし、長い事住んでいましたから。」笑顔で言ってくる。


「ルーンは人の心が読めるの?」俺は意を決して聞いてみた。


「読めませんよ。ただランス君の考えてる事は大体分かります。」意外な返答だった。


「何で俺のは分かるの?」不思議なので、聞く。


「それは内緒です♪」悪戯に満ちた顔で言う。


「ねぇ、何で分かるんだと思う?」内緒にされたので、雪に聞いてた。


「分かりやすいからでしょ。」

えっ?何が?と思い続けて聞こうとしたが、ルーンに阻まれてしまう。


「ユキちゃん、教えちゃダメですよ。」面白く無いからと付け足しながら言っていた。

雪も了解したのか、それ以上は答えてくれなかった。

分かりやすいって何がだろう?雪も分かるって事はエリスにも分かるんだろうか?その後しばらくは考えながら歩いたが、分からなかったので、諦めた。後でこっそり雪に聞こう。



そうこうしてる内にギルドに着く。

扉が他の店に比べて大きかったので、驚いた。

中に入ると結構な数の人がいて、それぞれが好きな事をしていた。お酒を飲む人、武器の手入れをする人、ナンパをする人。本当に様々だった。それ以外で目についたのは、奴隷の扱い方だった。全部とは言わないまでも大体の奴隷が手に鎖をつけられていた。座る事もなく、食事をする訳でもない。ただ主人の側にいて、俯いている。


装備も大した物では無く、傷の治療も満足にされてない。そんな奴隷が大半だった。しかも全員男で、亜人か獣人だった。

それを苦い顔で見ていたら雪から声がかかる。


「あれが奴隷の使い方だから。」あんたの方が異常なのだと言われた。


「あんな使い方するくらいなら、俺は異常でもいいよ。」そう言う。あれが日常ならば、俺は異常でも構わないと。


「変なやつ。」短くそう言ったが、冷たさはなかった。


奴隷なんて、ファンタジーでは当たり前だが、実際に見ると、想像以上に過酷で辛い物だった。

だからと言って全員を救える訳ではない。そんな力もまだ無いし、維持していく為の金もない。嫌気は指すが、これが現実なのだと受け止める。俺の手の届く範囲で助けて行こうと。


雪はそんな俺の事をじっと見つめていた。


「2人共こっちですよー。」

ルーンから声がかかる。俺は決意を固め、雪の手を取ってルーンの所に向かう。


「ちょっ、1人で歩けるから。」雪はびっくりしてたが、無視して歩く。


カウンターに着くと、ウサギの亜人のお姉さんがいて、こちらを見ると挨拶してくる。


「初めまして。ランスさん、ユキさん。私はここの受付を担当している。ミシャです。」凄く丁寧に挨拶してくれた。


「ここではちょっとマズイので、奥の部屋で登録致します。付いて来て下さい。」


そう言われ奥の部屋へと付いていく。中に入ると見覚えのある亜人がいた。


「ルーン、大変だよ!!テンビンさんの所のゴリラが脱走してるよ!!」俺は慌てながら言う。


バシッ!!頭を叩かれる。


「失礼ですよ。ランス君。この人はここのギルドマスターですよ。」ルーンはちょっと怒っていた。怖い。


「えっ?」

確かによく見て見ると、この人の方が大きかった。それ以外はそっくりだがw

ルーンからもう一度頭を叩かれる。

俺はすいませんと謝る。


「気にしなくていい。さっきルーンも言ってたが、俺がここのギルマスのゴー・リラだ。

気軽にゴーと呼べ。」


まんまやないけ。心の中で突っ込む。ルーンからもう一度頭を叩かれる。理不尽だ。


「はい。よろしくお願いしますゴーさん。」

俺はそう言ってちゃんと挨拶する。これ以上叩かれたくないから。


その一部始終を悲しく、でも優しげな。両方の感情が混ざったような目でゴーさんは見ていた。


いつまでも入り口でワチャワチャしてる訳にもいかないので、中に入って、ソファーに腰をかける。


「一応エリスからは2人登録するように言われてるが、そっちのお嬢さんでいいのかい?」ルーンに尋ねていた。


「私戦うの?」雪から疑問の声がかかる。

しまったぁー!説明すんの忘れてた。


「まぁ、別に良いけど。戦った事なんてないよ。」説明する前に自分で納得してしまった。雪に戦う気があるのならば良い。でも命令とかで無理に戦わせる気はないのだ。


「無理に戦わせたりはしないよ。側に居てくれるだけでもいいから。どうするかは雪自身で決めて。俺の事は考えなくていいから。」そう伝える。


「奴隷に自分で決める意思なんてない。」やっぱりと言うか、何と言うか。


「今まではね。でも俺と一緒にいる内は雪は自分の意思を持っていいから。自分で決めていいから。」全部受け入れる訳ではないが、自分で考え、行動してほしかった。


「相変わらずあんたが言ってる事が分からない。何でそんな面倒な事すんの?」私は奴隷なのに。


「雪は俺のパートナーだから。嫌な事はさせたくないんだよ。」君は奴隷だけど、奴隷じゃないから。


「とりあえずこの事についての話しは終わり!ゆっくりじっくり考えるように!」

そう言って話しを終わらせる。雪は不満げだったがいいだろう。


登録の事だが、一応2人分してもらった。登録しら必ず仕事を受けないと行けない訳でもないらしい。まぁ、ランクによって違うらしいが。

ランクとはS〜Fで一番上がSで、下がFになっている。B以上の人は定期的に仕事を入れないと降格する事があるらしい。これには強い魔物の増殖を防ぐのと、腕が鈍った人が高ランクの依頼を受けられないようにする為の措置なのだと。

ちなみにちょっと気になったので、聞いてみた。


「ルーンはどんくらいなの?」


「えっ、ランス君も大胆ですね。Fですよ。」何故か顔を赤らめ言う。


「へぇー、まぁルーンは回復専門っぽいし、Fでも不思議じゃないか。」ならエリスはどうなのだろう?それも聞いてみる。


「エリスさんはEですよ。これ内緒にして下さいね。怒られちゃいますから。」微妙に話しが食い違ってる気がする。それにエリスがEなのはおかしい。


「エリスがEっておかしくない?それだとSの人って化け物じゃない?」


「Sなんて聞いた事ないですけど。いたら化け物ですね。」はて?っと言った感じで言う。


「何の話ししてんの?」明らかに食い違ってるので、聞く。


「バストのサイズですよね?」意外過ぎる答えに朦朧とする。ってかルーンデカイな。


「ちっ違うよ!ランクの話しだよ!!」朦朧とした意識を戻し、否定する。だが遅かった。雪はジト目でこっちを見ていたのだ。


「ランクは内緒です。それに私は回復専門ではありません。」胸を張りながら言う。意識した途端恥ずかしくなる。でも、そんな事が意識出来るくらいには心が回復しているのだろう。


「あのー、進めてもいいですか?」ミシャが申し訳なさそうに言ってきた。

こっちの方が申し訳ない。馬鹿なやり取りをしてしまったのだから。


「私はそんなに大きくないので、言わなくてもいいですよね?」ミシャは顔を赤くしながら言ってくる。


いや、そっちに進めんのかい!意外過ぎて突っ込んでしまった。誰かこの空気を変えてくれと思い雪をみる!

またジト目で見られ。一言だけ発する。


「私もE。」


オレは崩れ落ちた。


「ちなにみミシャさんはBですよ。」

ルーンが何故か付け足す。ミシャは言いたく無かったのに。



全員のサイズが出揃った所で話しが進む。


登録の仕方は簡単で、鉄のカードに血を垂らすだけ。そうすると自分の名前が浮かび上がってくる。それだけだった。

俺の場合はカードをインチキしたらしく、名前がランスになってる。血を垂らす都合上必ず自分の名前になるので、このカードは身分証明にもなるらしい。


そこで問題なのが雪だ。しかし、奴隷には正規の登録が無いらしく、大体が主人の荷物扱い。稀に登録したがる主人も居るらしいが、正規のカードは渡されず。身分証明にもならないらしい。


「雪は自分の本当の名前知りたい?」オレは聞く。


「興味ない。今の名前でいい。」

バスト事件が尾を引いてるのか、まだジト目だ。


「ゴーさん、この子の今の名前で正規の登録って出来ないですか?」身分証明になるなら、彼女にも持って欲しかった。


「悪いがそれはダメだ。奴隷に身分証を渡す事は出来ない。」

キッパリ断られてしまった。雪が奴隷だとバレる確率は高いのだから、しょうがないとも思う。


「分かりました。」そう言って下がる。


雪の登録も終わって、細かい説明はルーンとエリスがしてくれる事になったので、部屋を後にする。

ゴーさんにこれからよろしくお願いしますともう一度伝えて。


部屋を出て、ルーンがトイレから戻ってくるのを待っていると、柄の悪い奴らが話しかけてくる。


「よぁ、お前新入りか?新入りは先輩の命令に従うもんだ。その女貸しな。」ハゲで冴えない体だけが大きい男がそう言ってくる。


「嫌だよ、俺の大事な人なんだから。」短く言う。実際は怖かった。あの戦いでも負けた俺は自分がどのくらい強いのかも分からない。でもひく訳には行かない。絶対に貸したくなかったから。


「あー?お前オレの事知らねーの?前の街じゃそこそこ有名だったんだぜ?痛い目みる前に貸しとけよ。」男は脅しながら言う。


ここで気づく。ギルド内の雰囲気がおかしい事に皆何かに怯えている。ミシャさえも顔を青くしているのだ。


「知らないよ。それに知ってても嫌だから、どいてくれる?」少し威圧するように言う。


「お前らフードの女の方行け。俺はこいつ殺すから。」そう言うと連れの2人が雪の方に向かって行く。


こんな連中に触られたくなかったので、目の前の男を無視して、雪に向かって言った連中の相手をする。


俺がくると思わなかったのか、驚いている2人に間髪入れずに蹴りと拳を叩き込む。不意打ち&みぞおちで、膝をついてるので、方向を調節しながら頭に蹴りを入れる。上手く2人重なって倒れてくれたので、必殺技の足で押さえて凍らせるを使う。


「雪大丈夫?」2人を足蹴にしながら聞く。すると。


「ランス後ろ!!」初めて名前で呼んでくれた余韻などなんのその、俺は最初に無視した男から殴られ吹き飛んだ。

グヘッ、そのまま地面に落下する。あん時の痛さに比べれば全然ましだが、痛い事は痛い。まぁ油断した俺も悪い。


もう一度相対しようと起き上がってハゲの男を見る。しかし。

男は膝をつき、何者かに頭を掴まれていた。


「あらあら、私がトイレに言ってる間に随分な事があったんですね。」ルーンはニコやにハゲの頭を掴みながら言っていた。


俺は全身に鳥肌がたっていた。


「いっ痛い、ってか誰だあんた?俺が誰か知ってんのか?」

ハゲは痛がりながらも頑張って言う。


「おやおや、どなたなんですか?ハゲのお知り合いはいっぱい居ますので、分かりません。」さらに力を強めて言う。


「ひっ、いっ痛い痛い、クソ女が調子乗りやがって、俺はハゲルだ。分かったらとっとと離せ。


まんまやないけ。きっと皆内心で突っ込んでいた。

そして知る。なぜ、ギルドがざわついて、ミシャが青い顔をしていたのか。


「ハゲルさんですか、知りませんねぇ。それに私の大事な子達に酷いことして、ただで済むはずないですね。悪い子にはお仕置きが必要ですよねぇー。」ここでルーンの顔が変わる。穏やかで愛嬌があって、優しいルーンの顔が、般若の如く怒りの形相に。そしてトドメはこの一言だ。


『破滅させてやるよ。』どこまでも暗く深く、まるで闇が言ってるような声で。


男は気絶していた。泡を吹きながら。その場にいた人は一歩も動けず。ただルーンの次の動向に注視していた。


「さすがにやりすぎだろ、ルーン。」

ゴーさんの一言で、ルーンも収まったのか、いつもの顔でテヘっとしながら言った。


「だってムカついたんですもん。生きてるだけでマシですよ。」この時誓った。ルーンには絶対に逆らわないと。

俺が決心した所で雪が近づいてくる。


「大丈夫?」ちょっとバツが悪い顔をしていた。

「私の事は守らなくていいから。大抵の事は平気だし、主人が傷ついたら奴隷の意味ないし。」雪はそう言った。


「名前で呼んでくれて嬉しかったよ。雪が付けてくれた名前だしね。」全部を無視して、笑顔でそれだけを言う。


「本当にあんたは変わってるね。ランス。」

いつもの冷たさはない。むしろ少しだけ暖かくそう言ってくれた。


「ランス君大丈夫ですか?」そう言って後処理を終えたルーンも近づいてくる。


「ハッハイ!僕は大丈夫です。」心底怖かったので敬語になる。

バシッ!また頭を叩かれた。


「あんまり心配させないで下さいね。」凄く優しい顔で言ってくれた。再認識する。この人は本当に俺の味方なんだと。


「うん。ごめん。今はまだ弱っちいけど、必ず強くなるから!頼むよ、先生!」

先生と呼ばれて満更でもないのか、ルーンは嬉しそうだった。

俺の後には雪にも声をかけていた。


「ユキちゃんも大丈夫だった?」


「はい。大丈夫です!!」

雪も怖かったのか、敬語で、しかも今までにないくらいハキハキと答えた。


バシッ!雪も頭を叩かれていた。


そして俺達はギルドを出る!次は遂に王城だ。









「全く昔と変わらず、騒がしい奴だよ。」ゴーはそう言ってタバコに火をつける。


「変わったと言うよりは戻ったんじゃないですか?一時期は相当塞ぎこんでいましたし。」ミシャが少し悲しげな顔で続ける。

「あの男の子。ランス君でしたっけ?少し似てましたよね。」

心配そうに言う。


「フー。似てたな。でも大丈夫だろ、今度はあの時のようにはならないさ。あいつらも前を向く気になったんだ。信じて手伝ってやろうや。」そう言ってタバコの火を消し、ゴーは仕事に戻って行く。


「あー、そうそうテンビンの所のゴリラ買っとけよ。」最後に一言だけ残し。

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