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ゲーム脳クズ オブ ザ・デッド  作者: おぱぱるごん
2/2

第二話


「とりま会うか」


『お、遂にお前さんのブス顔を拝見出来るのか』


「会ったらとりま刺すわ」


『その顔面凶器で?』


『刺すわ』


「取り敢えず互いの状況把握の為にも通話は繋げたまま行くぞ。あ、そいえば仕事は?」


『いえーい!オフパコオフパコ!オーフパコッ!!あ?仕事!?んなもん勝手に抜け出してやったわ!』


「やるやん。そして浮かれ過ぎ。あとキモい死ね」


前々から顔を晒せ晒せと言って来る事があったが、ここまでとは。

正直他人に自慢出来る顔では無いので過度は期待は辞めて欲しいのだが、と内心で零す。


何やかんや雑談をしつつ互いに帰路に着き、先に帰宅したのは俺の方だった。


「よし、着いたぞ。俺の勝ちな」


『は?せこ』


「とりま俺がそっちに向かうわ」


『なんで?どっかで待ち合わせでもよくね?そっちの方が早いし。あと俺ももう家着く』


「さっき言ってた住所だとお前ん家の方が都心部から離れてるからな。さっき色々と送ったリンクの中にあっただろ事件発生場所の一覧を纏めたリスト。あれで分かっただろ」


『あったけど、結構色んな所で起きてる事しか分からん』


「期待はしてなかった」


『死ね』


「まぁ、簡単な話起きてる場所と色んな所で起きてる事が問題なんだよ」


『はぁ?』


こいつは天才肌で直感力には優れているが、勉学に興味が無いせいか学力的な面では残念な事この上ない。


通話を続けながら俺は自分の部屋の中を土足のまま物色し、取り敢えず必要になりそうな物を片っ端からボストンバッグやらリュックやらに詰め込んで行く。

物の少ない部屋なのでこの調子ならすぐに終わる。


「まず、そのリストに乗ってた地名だ。ちょいちょい田舎も混じってるが残りの大半が県の主要都市なんかの人口密集地帯だ。そんで、発生時刻は何れも今日の深夜の二時頃から今現在までの間。さっき送ったリストは日本国内だけの物だが、実は世界各国の主要都市で同じ事件が発生してる。同じ時間帯にな」


『おいおい、世界規模だったのかよ。最高かよ』


「そして、数十分程前の最新ニュースによれば暴動の原因である人間はウイルスだか細菌だか寄生虫だとかそんな感じの物に感染している可能性が高いそうだ。細かい話は端折るがそもそも今まで何度も新種のウイルスや細菌が流行ったが発生源は一箇所だ。発見の遅れや潜伏期間的な問題で複数箇所で確認される事もあるが、今回は違う。世界各国でほぼ同時多発的にこのウイルスが確認されている。そんな事自然界で起こりうる確率はまずありえん」


『あーなるほど。つまり人為的な物ってわけか。確かに考えてみればその通りだわ。それに過疎地に向かってのもそういう事ね。把握。てか主要都市をピンポイントで狙って来てる辺り大分殺意高いな。相当世界を憎んでそう』


「それな。まぁ動機やら目的なんぞはどうでも良いけど俺達にとっては随分とハッピーなサプライズプレゼントだな。狂気的な終末思想の持ち主だろうけど、もし会うことがあったらお礼の一つや二つ言いたいわ」


『せやな。俺もチーズバーガーのピクルスをくれてやるわ』


「くそいらねー」


その言葉共に数年間過ごしていた部屋を後にする。

部屋にこれといった思い出は無いが置いて来たPCには数多くある。

と思ったが、真に思い出が詰まっているのはメモリ内で、そのデータも今は外付けHDDの中に詰め込み鞄の中。

所詮は抜け殻か、と思い改めそれ以上考えるのを止め過去ではなく現在の事に頭を巡らせる。


「取り敢えず荷物纏めたからそっち行く」


『何で来るん?』


「ぶーぶ」


『あー買ったけど使って無いとか言ってたぶーぶね。維持費だけでも金の無駄とか言ってた癖にまだ売ってなかったんかよ』


「折角買ったのに乗らずに売るとかそれこそ無駄金だろ?いつか乗るつもりで置いてたんだよ」


『出たその貧乏性。お前いっつも俺の捨てたゴミアイテムとか拾い集めて置いてるよな』


「逆にお前さんは捨て過ぎて必要な物まで捨てとるやんけ。それにゴミアイテムは大概後から必要になるんだよ」


『はいはい』


「ファック」


『てか運転出来んの?』


「んなもん余裕よ。教習卒業してから一度もハンドル握ってないし、操作方法も殆ど忘れた。けど、この前マリホカートの実況動画見たから」


『あーなら余裕やな。 事故ってそのまま死ねばかなりおもろい』


「ん?今何か言ったかね?」


『いや?何も?』


「ほな、行こかー」


そう言いつつ、久し振り過ぎて少し手間取りつつもエンジンを掛け発進する。

数ヶ月に一度リアルでたまたま近所だったゲーム友達に貸しているお陰かバッテリーは上がっていなかった。その事に安堵しつつも運転に集中する。


『子供は五点。男性は二十点。女性も二十点。カップルは二億点。ジジババは六十点な』


「最高スコア叩き出すわ」


そんな事を言いつつも軽く安全運転はしつつ道程を進む。

まだ教習に通っていた頃の癖が残っているらしい。

スマホで住所の詳細な位置を確認しつつ、到着予定時刻を見る。

今から二十七分との事だが制限速度は二倍まで、場合によっては二乗までオーケーと習った覚えがあるので二十分もあれば着く。


「後二十分くらいな。それまでに準備よろ」


『おけー既に荷物纏めてるとこ』


了解と、伝えようと口を開きかけたその時スマホから何度か聞いた事のあるメロディーが大音量で流れる。

すぐにJアラートの物であった事を思い出す。

その音に顔を顰めながらも内容を確認する。


未知の病原体の発生により避難指示…取り敢えず最寄りの避難所指定場所に避難か自宅に避難して待機、不用意に屋外へ出ない事か。


他にもマスクを着用だとかうがいと手洗いが等と書かれているが読み飛ばす。

アラートが鳴り止むと同時に先程の音に負けず劣らずの声が聞こえてくる。


『うっぜぇぇぇえ!?無駄に音がでけんだよボケが!!』


「お前も大概な」


『え?』


「ん?」


「てか避難指示だとよ」


『それが?』


「避難準備でも勧告でも無く指示ってことは、相当緊迫した事態って事なの?おけい?しかも指定区域は日本全域」


『あーなるほも。ボーナスステージ突入なわけね』


「んまーそゆこと。ちょいと予定よりも遅くなるかも知れんが待っといて。あと、こういった災害時に民衆は馬鹿だから安否確認の電話やら不安解消の為に電話を掛けまくったりネットで情報を確認する。そうなると電話回線は速攻で死ぬだろうし、ネット回線も落ちるか重くなるだろうな」


『あーね、じゃあ先に俺の判別法を教えとくわ。サンタ帽子な』


「なら俺はーーーーーー」


3D眼鏡、そう続きを言いかけた所で通話終了を知らせる音が鳴る。すぐに掛け直すが繋がらない。

予想よりも早過ぎる回線落ちにムカついたが、まぁ良いかと思い直す。

あいつの判別法はギリギリ聞けたし一応問題は無い。

それに俺の持ってきた3D眼鏡。一昔前のレンズが赤と青のタイプの物だ。こんなTPOの全てを履き違えた物を今着用しているのは全世界探して俺くらいだろうし向こうもすぐ気が付くだろう。

それにあいつの驚愕する姿を考えればそれはそれで面白い。


その反応を笑ってやりたい一心で、避難する人々でごった返し始めた公道を進む。


それから五分程して信号に引っかかり待っていると、歩道の様子が目に入る。

避難している途中なのか、歩道を歩きながら下を向きスマホをしきりに確認している女性。

ふとその女性の後ろを見れば覚束無い足取りの男が目に入る。

スマホを見ている訳でもないのに下を向き…?

その時謎の違和感を感じる。

違和感の原因は何処かと目を凝らすと、違和感の正体にすぐに気が付いた。

男の白い服装の所々にある赤黒い模様。それはプリントされた模様等ではなく血である事に。


モヤモヤが解消された事で晴れやかになった気持ちを味わっていると、血をプリントした服の男は覚束無い足取りのまま信号待ちをする前方の女に背後から抱き着く。


車の窓越しからでも聴こえる高い悲鳴。噛み付かれたのか歩道に広がるピザソース。

斬新なプリント方法だなぁ。と、くだらない事を考えていると二台前に止まっていた高級車の中から男が飛び出してきた。

そのまま男は歩道でイチャついている男女の元まで近寄り大声と共に二人を引き剥がそうとする。


車の窓を閉めているせいで何を言っているのか分からなかったので適当にアフレコする事にした。


「おいてめぇ!俺の女に何しやがる!」


「僕はながらスマホに家族を殺された!だからこれは復讐なのだよ!!」


「しくしく、肩にピザソースを吐かれたわ…もうお嫁に行けない」


「貴様ァ!!」


思いの外あっさりと二人を引き剥がせたのか、地面にはピザソースの女が倒れている。男二人はというと、引き剥がしたと言うよりも標的が男に移っただけなのか仲良くやっている。


「貴様もピザソースにしてやるぅぅぅう!!」


「やめろ!俺はホワイトソース派なんだよ!!」


次第に他の車の運転手やら通行人やらが集まり俺のアフレコが間に合わなくなって来た。

倒れた女を介抱したり、ホワイトソース派が男の加勢に加わったりと慌ただしくなっているのを口元を歪めつつ眺める。

もうとっくに信号は青になっており後ろの車がクラクションを鳴らすが、二台前の車の運転手が車から離れているし俺はこの演劇を見ることで忙しいので無視する。


「我らホワイトソース三銃士!!」


「こいやぁぁぁぁあ!!」


格闘技に自信ニキでも居たのか地面に三人がかりで組み伏せられるピザソース狂信徒、そこで最初に噛まれていた女が介抱されている場所から悲鳴が聞こた。


「ぴ…ざ…ぴぴぴ…」


女の異常な様子に悲鳴やら大声を出して、介抱していた連中がその場を離れる。


「一分と少しか…」


地面に倒れていた女は手足をばたつかせ、手を地面に叩き付けたりと異常な行動を取り始めていた。

そのまま少しの間軟体動物の様に暴れた後、その動きの意味を何となく察する。


手足を地面に叩き付け、四足で立ち上がり近場の人間に近付こうとして中断し手で地面を押し二足で立ち上がる。


近くの人達が不安そうな顔で口々に何かを言うが女は何も言わない。

そして、今にも前にコケそうな程覚束無い足取りで一番近くの男の元へと向う。

虚ろな目をした女が血塗れで近寄って来た事もあり、男は後ずさるが残念な事に背後には縁石があった。それに躓いた男は後ろ向きに転ぶ。

その隙に女に近付かれ足首を噛みつかれている。


「鈍臭ぇー」


男が絶叫し、周りの者は短い悲鳴を上げてその場を走って逃げたり引き剥がそうと近寄ったりと行動を始めた。


「あー面白かった」


その言葉共にアクセルを踏み込む。

後ろの車の運転手が無駄に車間距離を詰めてきたせいで、ハンドルを切る隙間が無いので無理矢理作る事にした。

車間距離が狭かったので俺の車の全面が潰れる事は無かったが傷と凹みは間違いなく出来たと思われる。


アクセルを全力で踏み前の車を押し退け、開いた空間を使ってハンドルを切り渋滞から抜け出す。


二台前の高級車の持ち主の男はピザソース狂信徒を抑えつつもこちらを見て驚愕の顔をしていた。

その顔を見て吹き出しそうになるのを我慢してその場を去る。

反対車線から来る車と正面衝突しかけるが何とか躱し元の車線へと戻る。


「いやー流石3Dは迫力があるなぁ」




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