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事はその日の夕暮れに起きた

「リザ、やっぱり様子がおかしいんじゃないかい?

さっきからずっとぼーっとしているけど」

リザは日が落ち始める頃にぐったりとソファに横になっている

「きっと先生のスープのせいですよ、大したことじゃないです」

「それくらいならいいけど

そろそろ暗くなるから夜ご飯にしたいのだけど何か食べたいものはあるかい?」

「あ~…えっと…」

「リザ?寝てしまったのかい?リザ?」

言葉を途中にして寝ていた

「待ってて、今かけものを持ってくるから」

ルネが自室からブランケットを持って戻るとリザの表情が険しくなっていた

額には汗をかき

息も荒く辛そうに見える

「リザ、どうしたんだい?」

いくら呼びかけても目を覚まさないリザを不審に思い頭をかすめたのは昼頃の出来事だった

(背中…?)

ルネは心の中で謝ながらリザの服をたくし上げた

暗くなった部屋の中、外から入る街灯の光に照らされたリザの背中にはあの時にはなかった黒いマークが浮かんでいた

「魔法陣?でもなさそうだな」

初めて見るそれに軽く触れるとリザがバッと目を開いた

リザは素早く体勢を変え腰から杖を引き抜くとそのままルネに振り上げた

「っリザ!?」

間一髪のところで避けるが空いた即座の蹴りには対応できずルネを下敷きにして倒れこんだ

首元は杖で抑えられている


「あの魔法陣は誰のものだ」

リザは虚ろな目で言った

「あれは僕が師から譲り受けたものだ」

「手記があったはず、それはどこへやった」

「僕は知らない、君たちが盗んだんじゃないのか?

それよりリザに何をした」

ルネはそう言いながら床を静かに二回叩いた

「リザ?この女のことか?

少し体を借りてるだけだ、そう怒るなって」

「お前は誰だ、王宮の人間か」

「さぁな」


ルネは少しため息をついた

「リザの体にあまり手荒なことはしたくないんだけどな

ウリエル、ウンディーネ来い」

そう言うや否や部屋は眩しいほどに輝き

リザの体を包むように水の球体が出来た

水の球は部屋の中央に浮かび壁には水の影の中に苦しそうにもがくリザとは違う影が映っていた

「そこか、ウンディーネ逃がすなよ」

水の中のリザは光に照らされた瞬間動かなくなった

代わりにリザの影はもがき苦しむように暴れている


「早く吐かないと溺死するぞ?

それともなにか呪いでもかけてやろうか」

ルネは腰から杖を抜き影の胸のあたりに突き立てた

その瞬間水のなかのリザが何かを喋り出した

「ウンディーネ、解放して」

すると水は弾けるように跡形もなく消え去った

「酸欠で動けないでしょ?

言うの?言わないの?」

「この女の影を切ったんだ

俺は言えねえんだ、やめてくれ、もう逃がしてくれ

言えねえ、言えねえ、やめろ、言わないし言ってないだろ?なぁ、やめてくれよ、なぁ!」

突然慌てだしたリザの向こうの人

ルネはおもむろにリザから伸びる影に手を突っ込んだ

壁のはずなのに通り抜け奥で何か掴み引っ張り出した

「ひぃっ」

情けない声とともに床に崩れ落ちたのは30代ほどの男

その装いは王宮の制服だった


「君がリザを操ってたんだね

王宮の者がなにをしてる」

ルネは鬼のような形相で見下ろした

「お、俺は知らないんだ

たまたまこういう遠隔系の魔法が得意でそれを買われただけなんだ

本当だ、信じてくれ」

ルネには怯えた様子の男は嘘をついているようには見えなかった

「わかった、そういうことにしといてやる

だから答えろ、リザはどうしたら戻る」

リザはピクリとも動かず意識もなく影もない


「王宮の牢獄の中に影が囚われてる

俺がそれを彼女に戻さなきゃ意識は戻らないんだ」

「お前戻って連れてこい」

「無茶言うなよ!お前がこうして連れてきてくれなきゃ殺されるところだったんだぞ!?」

男の顔は真っ青だ

ルネは指を鳴らした

「サラマンダー、今から僕は出かけてくる

その間こいつをこの部屋から出ないよう見張っててくれ

他の部屋に行こうとしたり外に出ようとしたら焼き殺せ


ノーム、君はリザの身体に何か危害が加わらないよう守るんだ

頼んだよ?


あとウリエル、君は戻っていいよ

ありがとう」


サラマンダーは一度空を一回転してから男の肩にとまり、シルフはにっこり微笑んでリザの元へ飛んで行き、優しく強い風でリザを動かし側のソファに寝かせた

「おい、どこ行くんだよ」

「お前には関係ない、大人しくしてないと灰にするからな」

ルネはそう言い残し足早に家を出た

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