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骸漁りは欺けない

作者: もななな
掲載日:2026/09/28





 大いなる魔術師が国を救った。

 しかし彼の願いは聞き届けられなかった。

 

  ────詩人マイヤーの手記





「月落ちたとて、呪文の警句」


 誰かが歌っている。誰なのかはわからない。

 瞼を閉じているから。


「夜に外れし紅蓮の乙女。花咲き乱れし常若の国」


 眼前で歌っている。目の前から聞こえるから。

 俺は眠っている。背中の地面が硬いから。


「常在破れて忌み地となさん。おお、結ばれてあれ。結ばれてあれ」


 しかし枕はふわりと柔らかい。 

 誰かの膝を枕にしているのだ。けれど、いったい誰が。


「貴公の剣は揺るがない」


 俺がやっとの思いで、目を見開く。

 そこにはフードで覆われた少女の顔が見えた。

 白銀の髪に、パチリと見開かれた海色の瞳。

 まだ幼さを感じられる相貌が、焚き火の炎に照らされている。


「…………おや、起きたようだね」


 ビードロを鳴らすような、凛とした声だった。

 聞くものを全てを落ち着かせ、癒やすような。


「誰だおまえは」

 

 くるりと回転し、離れる。しかし手にも腰にも武具はない。

 よくよく見ると、女の後ろに置かれている。

 誰とも知らない相手だ。武具を奪っていてもおかしくない。

 そんな当然のことを俺は失念していた。


「恐れないでくれ。君は蘇らせたのは僕なのだからね」

「蘇らせた? なぜ? そもそもなんで俺は死んだ」


 そう言うと、女は天井を指差した。

 見ると大穴が開いている。思い出した。

 俺はあそこから落ちてきたのだ。


「落とし穴の罠──引っかかるお馬鹿さんがまだいるなんて」

「俺は引っかかってなどない」

「じゃあなぜ落ちてきたのかね」

「落とされたのだ」


 ああ、思い出してきた。

 俺は迷宮を探索する冒険者。

 戦士と神官、三人で迷宮を下っていたのだ。


 ある部屋で出くわしたのは、無数の小鬼。


 ゴブリンと呼ばれ、緑色の猿のような連中には、小さな角が二本生えている。

 思い思いの武具を持ち、俊敏に駆け巡っては、冒険者を襲うのだ。


「ゴブリンに落とされたのかい?」

「いいや、そんなはずがない」


 ゴブリンにやられるほど、俺は落ちぶれちゃあいない。

 問題は戦闘中発生した。部屋の中の罠が起動し、大穴が開いたのだ。

 当然、それを避け背後に下がろうとしたところで──。


「何者かに押されてしまった、と」


 ふむ、と女が自分の顎を撫ですさる。

 しかしコイツはなぜこんなところにいるのだろうか。


 まさか、俺と同じように落ちてきたわけでもあるまいに。

 俺が猜疑の目で観察していると、それが伝わったのか、ニコリと女は微笑んだ。


「ああ、僕のことは骸漁りで構わないよ。君は?」

「貴様が名乗らないのに名乗るはずがない」

「しかし呼び名は必要だろう?」

「では俺のことは落人とでも呼べ」

「落人か。面白いじゃないか」


 落人。物理的にも世間的にも落ちた俺にはふさわしい二つ名だ。

 しかし骸漁りといったが、どういう職業なのだろうか。

 少なくとも死んでいた俺を蘇生したようだが……。


「僕は迷宮内で死んだ冒険者を蘇生することで生計を立てているのさ」


 そんな俺の疑問を悟ったのか、骸漁りはそう言った。


「ああ、蘇生屋ということか。あまり褒められた仕事ではないな」

「皆そういうよ。魂が縛られる迷宮とは言え、蘇生することは理に反するからねぇ。

 しかし必要な職業じゃあないか?」

「まぁな」


 実際、いなければ俺はそのまま死んでいたのだ。

 だがこの女、単独でこんな階層までやってきたのだろうか。けっこう深いと思うのだが……そんなふうにまじまじと見つめていると、のそりと立ち上がり、頭を下げてきた。


「では蘇生料、聖ベルグ金貨三枚だよ」

「…………待て、今は持ち合わせがない」


 聖ベルグ金貨。

 一枚で家族が一ヶ月暮らしていけるだけの額だ。それを三枚となると、なかなかに高額。もちろん命には代えられないし、冒険者という職業は時折それを一括で支払える程度には儲かる職業ではあるのだが……なにはともあれ、そう。


 持ち合わせがない。

 第一、金が無いからと迷宮に潜ってきたのだ。

 金があれば、俺は落とし穴に落ちて死んでなどいない。


「そうだろうね。手持ちの財布にもグリー銅貨八枚しか入ってなかったし……

 今日の宿賃だって怪しそうだ。な、の、で」


 ニコリ、と微笑んで骸漁りは上を指差した。

 それは穴の上。さらにその上。地上を示している。

 つまるところそれは……。


「僕の帰還を手伝ってくれたまえ。それでしばらく待ってあげよう」


 チャラにする気はないようだ。

 武具がなくても、相手は一人。しかも女だ。

 素手で斃すことだって出来るだろうが……そうする気はない。


 助けてくれた恩を仇で返すような行為だし、信条に反する。

 なにより蘇生屋を殺したなどと知られれば、二度と彼らを利用することは出来ない。


 彼らは集いであり、無礼には応酬を持って贖わせる。


 目の前の骸拾いにも、印が一つ。

 蘇生屋であることを示す”聖ベルグ協会”のバッジがローブに止めてある。

 太陽を思わせるアスタリスクに丸を追加したようなデザインだ。


 中央に描かれた独特の顔はなかなか慣れない。

 あれはたしか彼らの信仰する太陽神を象ったんだったかな。


 ま、そんなことはどうでもいい。


「いいだろう。他に選択肢もない。地上に戻れということだろう?」

「ああ、このベディグル墳墓からね」

「だったら渡すものがあるはずだ」


 俺は手を骸漁りに向けた。当然、後ろの武具をよこせというサインだ。

 骸漁りは少し戸惑った様子だったが、結局俺の大剣と小盾を返却してくれた。


「しかしその剣、折れているよ?」

「わざとだよ。狭い迷宮では短い方が有利なこともある」


 盾を左腕に備え付け、大剣を腰に吊るす。

 大剣と言っても、今の指図通り半分から少し先が折れている。

 幅広の直剣という感じだが、何とも使いやすいので愛用している。

 折れ方も絶妙だから刺突だって可能だしな。


「ではいこうじゃないか」


 骸漁りがカンテラを取り出し、焚き火を消した。

 カンテラの柔らかな光が辺りを照らす。


 部屋から出ると、そこは廊下。

 白石の壁や床、それらの合間から生えている草木がなんとも牧歌的だ。


「あ、そういえばコレも忘れていたねぇ」


 ……と言って、少し部屋に戻ると、ひしゃげた兜を持ってきてくれた。

 残念だが、もう使えそうにない。少なくとも修理が必要だ。

 こんな場所の素人修理では難しそうだが……。


「流石に使えないだろう」

「うむ、でもこんな屑鉄でも端金にはなるのさ」

「俺の兜なんだが?」

「僕に借金があるだろう?」


 ふふふ、と猫のように目を細めながらそう言う。

 そのまま肩から吊るしている鞄に入れてしまった。

 だいぶ宝物を回収したようで、もうパンパンだ。


「そういえば誰が貴方を落としたんだろうね」

「さぁな、ゴブリンではないだろうが……」

「そうだね。ゴブリンには貴方の背中を押すなんて無理だ」


 俺はそこそこに背丈がある。ゴブリンは俺の腹程度ぐらいにしか手が届かないほどだ。

 わざわざ背中の中心を押すとなると、手を伸ばしでもしない限りは無理だろう。

 第一ゴブリンに押された程度で俺は落ちたりしない。


 たとえ体勢を崩していたとしても、だ。


「そもそもゴブリンに背後を許すわけがなかろう、俺が」

「後衛がいれば実に自然なことだね。そしてそうなると犯人も絞れる」

「………………何が言いたい?」

「君の背を押したのは、後衛の神官ではないかな?」


 考えてみればごく自然なことである。

 戦士は俺の前で戦っていた。


 第一、奴が一番の前衛なのだ。俺の後ろに突然回ることなどありえない。

 ゴブリンたちには俺を押すような背丈も力もない。


 奴らにはそれほど膂力もない。俊敏で群れるだが、それだけだ。

 ならば俺を押せる人間は一人だけに絞れる。



 …………連れてきた神官だ。




「ありえない。奴らとは同じ村の出身だ」

「全ての状況証拠が物語っているけれど」

「しかし、なぜ」


 金欠で、特に分けるような宝物も手に入れていなかった。

 俺と神官、そして戦士の三人は幼馴染だったし、それなりに親しかったと自覚している。


 なんせ、騎士になる夢に破れて、冒険者になると出ていく俺と戦士。

 それを放っておけないとついてきたのが神官だ。

 奴には出世街道があったというのに。


「戦士と付き合いたいのに邪魔だった、とかじゃないかなぁ?」

「ありえない。むしろ歓迎してやるぐらいだぞ」

「君が浮気でもしたのでは?」

「そもそも恋仲でもないし、俺には女の気配もなかった」

「ふ~~~~~む……」


 悩みつつも廊下を進んでいく。

 不思議と魔物の気配はない。もっとも奴らは部屋を縄張りとしている。

 あまり廊下をうろつくという趣味はないのだ。


 であれば、廊下さえ動き回っていれば安全かと言えばそうでもない。

 縄張りを追われた魔物だって多少は出てくる。


 そもそも宝箱は基本的に部屋の中にしか出てこない。

 リスクを冒さなければ、わざわざ迷宮に来た意味がないのだ。

 もっともそういった特性は、こうして帰還の際には便利なのだが。


 大体、階段は部屋の中にある。

 つまり、階層を移動するには、リスクを冒す必要があるのだ。


「ここだよ」


 既に階段のある部屋を見つけていたようで、骸漁りが扉を指差してそう呟く。

 俺をわざわざ雇ったということは、ココを通り抜けられない何かがあるということだ。

 魔物かあるいは……ともあれ、気を引き締めて入ろう。


 そこはエントランスホールとでもいうべき吹き抜けの部屋。

 階段は螺旋状になっていて、上階へと繋がっている。

 それを守るように立つのは、角の生えた兜を来た、大男。


 ─────俺のパーティに入っていた戦士、グリアールだ。


 俺を見ても、剣と盾を収めるつもりがない。

 それにどことなく動きがぎこちない。まるで糸で操られている人形のようだ。


「おい!! 大丈夫か!?」


 返事がない。やはり誰かに操れている。

 おそらくは”ココを通すな”という記号的な命令以外受け付けなくなっている。

 もちろんそんなことは相手が生きていれば、不可能。


「あれは……死霊術だね」


 骸漁りがそう呟く。

 だろうな。生者を意のままに操る魔術など、存在しない。

 それになんとなく魂の気配を感じない。亡者である証拠だ。 


「面倒な」

「勝てるかい?」

「ただの傀儡ならな」


 剣と盾を構え、じわじわと近づく。

 それを見た戦士がひとまず盾を押し付けてきた。

 シールドバッシュである。


 戦士の膂力は俺を上回る。まともに受けては勝ち目がない。

 ……が、所詮は傀儡だ。

 

 俺は盾の攻撃を受け流すように左手へとくるりと回り込む。

 そのまま横薙ぎに折れた大剣を打ち付けた。


「ガァッ!?」

「まず、一撃」

 

 鎧は固く、簡単には崩せない。しかし俺の大剣は重く、幅広い。

 鎚としても上々に使えるのだ。そしてその衝撃は鎧を通り抜ける。


 戦士は衝撃でわずかに体制を崩すも、すぐさま立て直し、剣を突き立ててくる。

 俺はそれを小盾で受け流し、相手の間合いへと入り込んだ。

 そのまま大剣を相手の腹部に打ち付ける。


「ゴアッ……!?」

「二撃」


 今度こそ崩れた戦士の兜──。

 正確には鎧と兜の間めがけて、大剣を振り払う。

 折れていても刃は磨いてある。少しでも隙間があるのならば……。


 ザンッ、と強引に戦士の首を切り落とした。


「終わりだ。傀儡でなければ、あと三手はもったのにな」


 兜の中を確認すると、やはり赤髪の幼馴染である。

 それを骸漁りに投げ渡す。「ひゃあっ!?」という悲鳴が漏れた。


「蘇生できるか?」

「う~~~ん、魂がここにないね。それを回収しないと……

 傀儡として操っていた以上はそんなに遠くにいないはずだけど」


「そうか、降りてきたほうが良いんじゃないか?」


 俺がそう言うと、螺旋階段の柱に隠れていた少女が出てきた。

 金髪に神官のローブ。金の仮面で、顔の上半分を隠している、

 激しい乱眼であり、見るに耐えないなどと言って自分で隠しているのだ。


「見事ですね。さすがは騎士候補さま」

「なぜ、こんな事を? 戦士はおまえを好いていたのに」

「全ては私が聖女となるため」

「なに?」


 そう言うと、神官は両手をあげ、何かに祈るような姿勢をした。

 なにか魔術を使うつもりか。


 妨害しようにも、今から螺旋階段を上がったところで間に合わないだろう。

 俺は再び武具を構えた。


「幼馴染のために、出世を捨てる私……可哀想!!」

「自分で選んだ道だろう」


「そんな幼馴染を迷宮で失い、一人彷徨う私……可哀想!!」

「予定でも話しているのか?」


「ええ、可哀想な私は周りの同情を誘い、いずれは聖女になりえるでしょう。

 不幸とは、甘い蜜のようなもの。虫を誘うには十分なのです!!」


「誰かに操られてるのか?」


 俺は呆れてしまった。

 たしかに五~六歳の頃は、すぐ泣き出し、周りの同情を買うようなことばかりする女だった。

 しかし、そのために俺達を贄とするのはスケールが違う。


 動機にしては不十分に過ぎる。

 俺が戸惑っていると、骸漁りがふぅむと唸った。


「迷宮にあてられたようだね。

 あのように我欲だけが増大し、凶行を成すものが多いのさ。

 ならず者、と呼ばれている」


「俺達とパーティを組んだのまで迷宮のせいか?」

「………………前々からそういう思想ではあったんじゃないかなぁ?」


 天井に黄金の魔法陣が映し出される。

 そこから落ちてきたのは肉袋。醜悪な豚が二足歩行をしたようなデーモン。

 その癖、頭部のあるべき場所には、裸の女が上半身だけくっついている。


 ああ、いや、なんなら下半身は無数にスカートのように生えている。

 なんにせよ、とにかく気持ち悪い。


「ああ、なんと美しいのでしょう……!1」

「それに、悪魔と契約すらしてるみたいだしね」

 

 それを恍惚な表情で眺める神官。

 しかし次の瞬間には、そのデーモンの手に掴まれ、腹にある口で貪り食われた。

 戦士の肉も次の瞬間、踏み潰されてしまった。ああなると、蘇生はもう無理だろう。


「…………チッ」


 俺は骸漁りを抱きかかえる。華奢な体だ。

 「ひゃあっ!?」などと叫ぶが、抵抗する気はないようだ。


 俺に考えがあると気づいたのか。

 俺は魔術が使える。大したものじゃないが。


「”伸びろ”」


 一つは盾を固定するバンドに隠してある。

 木の種。これを急速に成長させる魔術だ。


 ”根の福音”と言い、あらゆるものに成長を促す事ができる。

 もっともアイテムによって伸ばしやすさは異なるが。


 これで伸ばした根を螺旋階段に引っ掛け、俺は飛んだ。

 次の瞬間、俺たちがいたところはデーモンの持っていた石斧によって叩き潰される。


「ひゃあああああああああああああ!?」


 しかし俺達はそのまま上階へと飛翔する。木の根が急速に縮んでいるためだ。

 凄まじい勢いで、骸漁りが叫んでいた。


 上がりきったところで、下のデーモンを見る。

 このまま放置しておくわけにはいかない。


「おい、なにか魔力を込められそうな古いものないか?」

「ああ、ええっと……旧ベルク銅貨の山なら」

「貸せ」


 骸漁りから強引に金貨袋を奪い、ありったけの魔力を込める。

 そのまま俺は、それを下階へと投げ捨てた。


「”爆ぜろ”」


 それが地下に落ちきった時、金貨袋は爆ぜた。

 上の階まで上がってくるような火柱。

 どうやらずいぶん古いアイテムだったようだ。


 今のは”朱の呪式”。

 こうしてあらゆるものに燃焼を促すことが出来る。

 こちらもアイテムによって燃えやすさは異なる。


 ……ずっと燃え続けているが、デーモンはまだ生きているようだ。

 しばらくすれば死に絶えるだろうか。


「もう放っておこう。帰ろうじゃないか地上へ」


 俺はしばらくデーモンを眺めていたが、骸漁りにそう言われ、階段部屋を後にした。

 その後は何事もなく、無事、墳墓の外へ。外はまだ薄暗いが、太陽が登ってきている。

 ちょうど朝焼けの時間のようだ。


「しかし君、あんな魔術があったのならば落ちることもなかっただろうに」

「………人間、慌てるといつも通りのことができないよな」


 なんなら落とし穴から戻るのに”根の福音”を使ったってよかったが。

 仕方がない。魔術とは最後の最後まで秘するもの。

 人に知られていては対策されると、師から学んでいるのだ。


 それに、俺は大体誰に落とされたのか、察しぐらいはついていた。

 認めたくなかったから、なるべく急いで帰る気もなかったのだ。

 ああ、俺が死んだものと思って二人で帰っていれば良かったものを。


 俺は幼馴染を二人、失ってしまった。

 あるいは落とし穴から戻っていれば遭遇することもなかっただろうか。

 もうわからない。


「…………神官、イングヴェルトは悪魔にそそのかされたのか」

「さぁね、そそのかされてああなったのか、

 元からああだったから悪魔と契約したのか、

 それはわからないけれど……」


 骸漁りは手を大きく伸ばし、にこやかに笑った。


「僕たちは生きてるじゃないか」


 そうだな、と返すことは出来なかった。

 俺達は落人、冒険者。


 闇に落ちた国を救い、安寧をもたらすためにこの地にやってきた。

 現実は、その日暮らし。明日生きているかもわからない。


 今日生きていることを感謝して。

 ただ生き延びるためだけに生きる。


 けどそんなことが正しいのか?

 俺の仲間はそんな日々に殺されたというのに。


 俺が俯いていると、骸漁りは詞を紡ぎながら、街へと歩き出した。

 ずっと昔にその詩を聞いたことがある。


 大いなる魔術師が国を救った。

 しかし彼の願いは聞き届けられなかった。


 ゆえに救った国を、大いなる悪魔に捧げた。

 国は地獄とつながり、暗黒の迷宮と化した。


 王は救いを求めた。

 誰かを、誰かを、誰かを。


 また同じように使い捨てるために。

 それが迷宮の始まり。冒険者の始まり。


 始まり。始まり。


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