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氷の騎士団長からの求婚〜補佐官に溺愛は不要です〜

作者: 漆原 凜
掲載日:2026/05/18

「カレン嬢愛してます。」


騎士団長の執務室で壁の隅においやられている。私は何故こんな事になっているのだろうか…。


ーーーーー


「婚約解消?」


お父様が帰宅してすぐ来るようにと呼ばれた。私が婚約解消されたのだと言う。ロビン様とは数年前に婚約し、お互い愛情は無かったが仲が悪いわけでは無かったと思う。


詳しく聞けばロビン様に好きな人が出来て、婚約の見直しをして欲しいとの申し出があったそうだ。親同士が親交があったため結ばれた婚約だったので、当主同士の話し合いで解消の形になった。好きな人が出来たなら仕方ない話だ。


「カレンどうする?新しい相手を探すか、仕事を探すか…」


「私働きます!」


高校卒業後すぐ嫁ぐ予定だったため、今更嫁に行かず実家にいつまでも居るわけにはいかない。後継者のお兄様に迷惑がかかってしまう。うちは平凡な伯爵家だ。さらに見た目も茶髪に茶目と普通なので今から新しい婚約者を見つけるのは難しい。


結婚しないなら文官になりたかった。採用試験が直近にあったはずだ。仕事をして独り立ちする事にした。


ーーーーーー


採用試験まで猛勉強をし元々成績の良かった私は問題なく試験に合格する事ができ一安心した。


初出勤の日、制服である紺色のワンピースを着て家を出る。私地味じゃない?と不安になりながら、新しい職場へと行く。


「はじめまして。ルーカスです。今日からよろしくね。わからない事があったら何でも聞いてください。」


ルーカス様は騎士団の事務官に配属になった私の上司だ。茶髪に茶目。同じ色合いで安心する。眼鏡をしててとても優しそうな方。


私は席に着き教えて貰いながら与えられた仕事をこなしていく。あっという間にお昼休みになり、ルーカス様が食堂に誘ってくれた。


遠くでざわざわと騒がしく聞こえる。誰かいるようだ。食堂に向かうときらびやかな集団がそこにはいた。真っ白い騎士服に身をつつみ歩いている。騎士団はとても人気がある。


一番華やかで目立つのが銀髪に青い目、スラッとした細身で見たもの全てを魅了する。しかし誰に対しても凍てつくような目を向け笑わないと有名な『氷帝』こと騎士団長のアルフレッド様。初めて間近で見ると迫力が凄い。恐ろしく男前だ。目がつぶれてしまうのであまり近寄りたくはない。


騎士団の皆様が通り過ぎ周辺に平常が戻る。


ルーカス様とお昼を食べ、昼からも同じように仕事をこなしていく。手際を褒めてもらえ明日からも頑張ろうと帰路についた。



ーーーー



「悪いんだけど今日から補佐官室に行って貰えるかな…うちとしても優秀な君を手放したくないんだけど向こうからのお願いで…」


朝出勤すると申し訳無さそうな顔をしたルーカス様に移動を言われた。補佐官室で怪我人による欠員が出て人手が欲しいそうだ。事務官の皆様も忙しいのでまだこちらに慣れてない新人の私が行く事になったと説明される。


たった1日で移動とは。楽しくやっていけそうだったのにと気落ちしながらトボトボと補佐官室に向かう。


「カレンさんは採用試験も1番だったし、ルーカス君も昨日手際が良かったと褒めていたよ。今日から騎士団長補佐よろしくね。」


新しく上司となったアガット補佐官からとんでもない事をつげられる。新人ですよ無理ですと軽く抵抗したが受け入れられず騎士団長補佐になってしまった。


「騎士団長のアルフレッドだ。今日からよろしく頼む。」


騎士団長の執務室に入ると机で書類から目を離さず挨拶をする無表情の氷帝がいた。近くで見るとさらに作り物のように綺麗。見ないでおこうと私は密かに決意する。眩しすぎて目がつぶれてしまう。


軽く挨拶をした私は席に着き、先輩に教えてもらいながら書類をこなしていく。気付けば退社時刻になっていたため周りに挨拶をし、帰路についた。


帰る姿を書類の間から氷帝が見ていた事など全く気づかなかった。


ーーーーー


「カレン嬢は婚約者いないんだよね?」


働き出して数カ月たったある日先輩達が離席し執務室に2人きりになった時、氷帝が話しかけてきた。


補佐官になってから徐々に話すようになり、雑談をするくらいには関係は築けている。


「いないですよ。」


仕事を辞めないかの確認なのかな。慣れてきた頃に辞められたら困るんだろうなっと考えいた。


「私と婚約して欲しい。」


見目麗しい方が書類に目を通しながら言ってきた。よくわからなかった。婚約と聞こえたが。ん?聞き間違えか?意味がわからない。


聞き間違いだと思いたずねると、やはり婚約して欲しいと氷帝は言う。やはり意味がわからない。驚きのあまり言葉を返せず困っていた。


「カレン嬢が好きなんだ。」


「あ…退社時刻なので失礼します。この話は持ち帰らせていただきます。では失礼します。」


氷帝がまだ何かを言っていたがパニックに陥った私は退社時刻を理由に慌てて執務室を出る。意味がわからない。詐欺か?私を騙した所で何もない。きっとからかわれたのだと決めつけ明日に備えて寝た。


ーーーーー


「カレン嬢少しこちらに来てください。」


次の日帰ろうとしたら少し不機嫌な氷帝に呼び出された。美形の不機嫌は怖い。少しずつ朗らかな態度になっていたのに今日の騎士団長様は表情筋が仕事をしていない。


「持ち帰った結果どうでした。婚約してくれますか?」


「…からかったのでは?」


「大真面目です。」


「…詐欺?」


「何のですか…」


不機嫌そうに眉をよせ額に手を当てている。わからないが詐欺でもなければ何だ。


「あ、偽装?!」


「違います。好きだと伝えましたよね。」


「え…本当に…」


え?本気なの?本気で言っていると気づいた瞬間顔が赤くなる。赤くなったのを見逃さなかった氷帝はグイッと近づき手を取った。


「そんな可愛い顔を見せてくれるって事は期待しても良いですよね?」


氷帝が手を取りながら詰め寄ってくるので私はジリジリと下がってゆく。トンッと壁に当たる。部屋の隅まで来てしまった。逃げ場が無い。


「カレン嬢愛してます。」


さっきまで不機嫌な顔をしていたのに、ニコッと綺麗な顔で微笑みかけてくる。逃げられる気がしない。



「…善処します。」



私に対する激甘な態度に氷帝の氷が溶けたと噂が駆け巡る事になるのはもう少し先の事。




ーーーーー





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