三歩目
山を下り、マーモットは、不意に足を止めた。
光が一面に見えた、きらきらと
次の瞬間、枝の上に現れたのは、信じられないほど鮮やかな鳥だった。
長く流れる翡翠色の尾、胸元の赤、濡れた宝石のような羽。
ケツァール。
本来は中米の深い森に棲む鳥。
アンデスのこの場所で出会うなど、偶然というより、奇跡に近い。
鳥は鳴かなかった。
ただ一瞬こちらを見つめ、風とともに森の奥へ消えていった。
マーモットはしばらく動けなかった。もちろん
綺麗な鳥しか認識はないのだ。
その時世界は広い、故郷と比べると知らない世界、普通とは何かと問う
その出来事を胸に抱いたまま、マーモットはさらに山を下った。
やがて視界が開ける。
谷の向こうに、白い建物が立ち並ぶ街が現れたた。
キトだった。
赤道直下の首都。これは決まり文句である。
太陽は真上から降り注ぎ、影は短い。
石畳の道、教会の鐘、屋台から漂う甘いトウモロコシの匂い。民族衣装なども盛んに売られている。新発見ばかり、
学生が放課後に開放された気分である。
スペイン語がなりわめく、人々の声が街を満たしている。
静かな山とは違い、時間そのものが動いている場所だった。どの建物の中にもこの時計とやらがある。人間の存在より、時計のほうがレアであった。針が2つ、片方がじーっと見てると動く。
トーキョーとはなんだろうか?
情報が必要であった。
この街は分岐点なのか通過点か
あの森で見たケツァール。
本来なら、もっと北の地で出会うはずの存在。
──北。その方向に呼ばれてるきがする。
火山と太陽、色と音が混ざり合う土地。
神話と市場が同じ呼吸をしている国。
ピラミッド。
メキシコ。
南米に似ている。ちらほら、キト街にメキシコの国旗が見えた。赤白緑のイメージ。
まだ名前しか知らないその場所が、
次の目的地になることを、マーモットは疑わなかった。
本来群れで過ごす、穴を掘り
素早く逃げる、短距離型である。
なので冒険家ではなく、
移動する観察者のマーモットである。
キトの空を見上げながら、
マーモットは静かに、北へ向かう旅の準備を始めた。




