誘拐されちゃいました!?の魔女 その1
サラはミナがココアを持ってきてくれるのを待っていた。するとドアをノックする音がした。もしかしたらミナかも、手が塞がってきっとドアを開けないんだ。そう思いサラはベッドから降りドアの方へと向かった。ドアをゆっくり開くとミナではない人物が立っていた。サラが言葉を発する前にその人物はサラの口元にハンカチを当てた。あれ、意識が遠のいてく。サラは意識を失った。
『もしかして君がアイツの...。いやそれはない、だって...。』
サラが目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。部屋は薄暗かったが置いてある家具などはとても洗練されていて目が奪われた。辺りをウロウロ見渡していると誰かが話しかけてくる。
『お目覚めかい?』
サラはその声の主の方を向く。サラは恐怖のあまり固まった。その人物は普通の人に見える。でもサラは気付いてしまった、その人物に影がないことに。よく見るとシャツの襟元に赤い染みのような汚れもついていた。サラは体を起こして逃げようとした。でもサラがどんなに体を動かそうとしても体が言うことを聞かない。
『そんな焦った顔をして何してるの?もしかして逃げ出そうとしてる?無駄だよ、君に嗅がせた薬の効果がまだ切れてないからね。下手なことはしない方がいい。それに結界を張ってある、君の魔法を無力するための。』
その人物は不気味な笑みを浮かべながら話を進める。
『君は僕について何ひとつ知らないだろう。そのアメジストみたいな瞳は本当にあの人そっくりだ。まさかとは思うけど...。君からは不思議な力を感じる、その気配を感じ取って君に会いに行ったってわけ。』
私のような瞳って?この瞳を持っている人なんて見たことがない。サラは少しこの国では珍しい瞳の色をしていた。この国ではこのアメジストのような瞳を持つものはサラ以外にいないだろう。この人はなんか勘違いをしているのではとサラは思った。
『私と同じ瞳を持つ人なんていません。あなたは何か勘違いを。』
『僕の知り合いにね、君みたいな目の人が。なんでか知らないけど君の力からは2つのものを感じるから。アークによって授けられたものと...。まあ君をここに連れてきたのには理由がある。』
『理由とは?』
『私はこう見えて200歳は超えている。私はアンダーワールドに戻りたいんだよ、そのためには君に手伝ってもらわないと。』
『なぜ、アンダーワールドに?再び扉を開けたらまずいことになる。』
『ふーん、アンダーワールドについて少しは知っているようだね。教えてあげようではないか、本当は何があったのか。』
そして彼はサラの額に手を触れる。すると誰かの記憶だろうか、サラの頭に誰かの記憶が流れ込む。
ここはおそらく数百年前、人間が魔法を得る前。この目の前に立っている人は...、この時代の王様、ケニー・ハサン。
家で勉強していて時の本にこの人について記載があった、確かブリンデル王国を大災難から救い出すのに貢献した内の1人だったはず。
『この国の民が困ればこの僕をもっと頼るようになる、スベン、もっと悪魔たちに民に害を加えるように言え。しかし、アンダーワールドに代々伝わる予言の少女は少々気になるな。善にも悪にもなれる少女。もしその少女が現れたらここに連れてこい。こちら側に引き込んでその力を利用したいからな!』
『はい。』
アンダーワールドにも代々伝わる予言が!?アークの予言とは違うのかな?そんなことを考えてると次の記憶が流れてきた。辺り一面に炎が燃え上がる。悪魔たちが街を燃やしていく。あのケニー王の言われた通りにしている!?ということは王族にアンダーワールドは昔から協力してる?まだこの時代、人間は魔法を使えない。きっと思い通りに国を動かすために王族は悪魔に人を襲わせてきたのね。
『こんな所で何してる、ファル?』
『もう人を襲うのはやめてくれ、あの人もそう言ってる。』
『人間の君に一体何ができる?僕を止められないだろ?本当に止めたかったらアイツが来ればいい。それにこれはこの国の王様、君のお兄さんが望んだことだ。』
『やっぱり、王族は悪魔と手を組んでるのか、薄々感じていた。ケニーお兄様の偉業は普通の人間では成し遂げないことばかり、君たちが助けていたんだな?』
『ああ、そうさ。僕達も人間を襲えるからね、怯える顔がすごくいいんだよ。んじゃ、失礼するよ君と違って暇ではないんでね。アイツによろしくって言っといて。』
この会話に何度も出てくるアイツって?すごく気になる。そしてまた次の記憶が流れ込んでくる。
大災難から数年後ね、ここは。
そこは小さな部屋だった。そしてこの記憶の持ち主が喋る。
『まさか。アイツが自分の父上に逆らうとは、誰が予想できたか。まさか人間と結婚して子まで。てっきりあのレナがアンダーワールドの予言の少女だと思っていたがもしかして...。アイツの子について調べないとな。』
また次の記憶が流れ込んでくる。どうやら記憶の主は影から様子を伺っているようだ。
ここはどこかの小さな村?目の前には赤子を抱えた女性とたくましい男性がたくさんの人に罵られている光景が。赤子は顔が隠されていてよく見えない。
『お前、悪魔との子を授かるなんてどうかしてるぞ!』
『いくら君のお陰で魔法が使えるようになって悪魔と対抗できるようになったとしてもその子は殺さなければ!』
ああ、そういえばケン王子が言ってたな。悪魔とアークの力を持つ者の間に生まれた子にはとてつもない力が宿っていてそんな力を持った子皆恐れた。レナとその悪魔は子を守ろうとした。そこで悪魔は唯一の友人とレナを除くすべての人からアンダーワールドについての記憶を消したと。もしかして今がちょうどその場面!?
たくましい見た目の男性がレナに言う。
『その子を連れてどこか違う場所に行くだ、とりあえずファルのところに。ここは僕が何とかする。』
そう彼が言うとレナは魔法を使ってどこかに消えた。よく彼の顔を見ると彼の瞳はサラと同じアメジストのような瞳をしているように見えた、少しここからでは距離が離れているのではっきり見えなかった。彼は手を上に振り上げた。すると次の瞬間村の人々が倒れていく。どうやら記憶を消しているようだ。そして村人が皆倒れた後彼は言う。
『そこの影から君がこの状況を観察しているのは知っている。今から僕は国全体の人のアンダーワールドについての記憶を消す、君の大好きな王様も含めてね。そして人間界との扉を閉ざす。もしそれまでに君がアンダーワールドに戻らないとどうなるかな。』
きっと彼はこの記憶の主に話しかけているのだろう、だとしてもすごい緊張感がサラにも伝わってくる。
『俺は戻らない。』
記憶の主がそういうのと同時にサラの誰かの記憶を見て回る旅は終わった。
『もしかして、今の記憶ってあなたのですか?』
『分かちゃった?うんそう、今の記憶は僕の、数百年前の記憶ね。人間界に残った悪魔たちはどうなったと思う?』
『どうなったんですか?』
『今から見せてあげる。』
そう言うと彼はサラに近づいて首元をパクリと噛みつく。サラが気付いた頃には生暖かいものが首を伝っていた。
『いいかい、今から君は僕の....だ。いいね?』
サラは彼の顔から目が離せなくなっていた。




