夢の中の魔女 その2
一方その頃魔法学校では不思議な現象が起きていた。学校内で生徒たちは感情がコントロールできなくなるという不思議な現象に見舞われていた。急に泣き出してしまう生徒もいれば喧嘩を始める生徒。この異変にいち早く気付いたのはケン王子だった。一体何が起きているんだ?こんなにも大規模で学校全体に魔法をかけられる人物なんてそうそういない。とりあえず皆の感情は不安定になっているということは気の属性を持つものの仕業?
気の属性を持つものは人の心を操ったり読んだり相手の心にリンクしたりいわゆるテレパシーやテレキネシスを使うが得意である。ルックもそれを応用したものである。地図を広げ呪文を唱えると人々の考えを読むという透視能力である。しかしこの学校内のどの人物もこれほどの強い呪文を使えるものはいないはず。ケン王子はとりあえず気の属性を持つ者の中で一段と優れているミナを探すことにした。廊下を歩き続けること数分、見覚えのある人物が泣いていた。そうミナだ。
『大丈夫かい?』
そうケン王子はミナに声をかけた。
『い、いやなんか涙が止まらなくて困ってます。』
ミナは優秀だが自分が優れた魔法の持ち主だとは思っていない。きっとミナなら自分自身にかかったこの呪文を簡単に解くことができるだろう。
『ミナ、自分に呪文をかけたら?心を落ち着かせるために?』
『多分で、できないと思いますがやってみます。』
彼女は泣きながら呪文を唱えた。
唱え終えると彼女は泣き止んだ。
『せ、成功しました。一体何が起こっているのですか、ケン王子?』
『詳しいことはわからない、学校内でたくさんの生徒たちが感情を暴走させてる。一体何者の仕業か。』
『ケン王子は大丈夫なんですか?』
『うん、僕は大丈夫。感情のコントロールは得意だからね。』
『サ、サラは大丈夫ですかね?もし、サラが感情を爆発させたら...。』
二人は気まずそうにお互いを見つめた。
『まさかね、だって彼女はブレスレットをしているはず。』
二人は走り始めた。もしサラが感情を爆発させたらまずい、すべてが彼女の思うままになってしまう。
『あの、ここ女子の寮ですが?』
『今は一刻を争う事態かもしれないから僕も一緒に行く!それに僕はこの国の王子だからね、校長もきっと何も言わないさ。』
『そうおっしゃるなら。警告はしましたからね。』
二人はサラのいる部屋の前にやってきた。ミナがドアをノックする。
『サラ、様子を見に来ました。』
中から返事が聞こえない。
『サラ、部屋に入りますよ。』
ミナは鍵を開け中を覗いた。するとそこにはサラが泣きながら虹色の光に包まれて寝ていた。ケン王子はある事に気づく。
『ミナ、あのベッドの下に落ちているのってまさか制御ブレスレット?』
ミナは近づいてそれをよく見る。」
『はい、制御ブレスレットのようです。しかしこれ、誰かによって壊れるように細工がされています。何者かの魔法がこのブレスレットから感じられます。』
ケン王子は予測を立てる。今制御ブレスレットが外れてしまっているサラは泣きながら謎の光に包まれて寝ている、もしかしてこの学校で起きている皆の感情が不安定なのはサラのせいではと。
『ミナ、サラを叩き起こすんだ。誰がこのブレスレットに細工をしたかはわからない、でも皆の感情が不安定なのはサラのせいで間違いない。』
ミナは勢いよくサラは揺すぶる。でもサラはビクトもしない。ミナはどうしようと考えた。そうだ、サラには悪いけどテレパシーを使って夢の中にお邪魔させてもらうしか。
ミナは呪文を唱える。
「レットミインサイド」
広場で座って泣いていると誰かがサラを呼ぶ声がした。
サラはその声の主を知っているでもいつもとは違ってか弱い声ではなかった。
ミナが呪文を唱えるとサラの夢の中に入り込む事ができた。目を開くと目の前には座り込んで泣いているサラがいた。その姿が自分のよく知っている人に似ていて叫ばずにいられなかった。
『サラ!』
『ミナ?』
ここにいるミナはきっと偽物よね、だってここは私が作り出した世界だから。そんなことを考えているとミナが早口で話しを続ける。
『よく聞いて、ここはあなたの夢の世界。誰かがあなたのブレスレットに細工していたみたいなの、すぐ壊れるように。あなたの感情が不安定になっているみたいであなたの魔法が暴走、現実世界の皆にも影響が出てるの。あなたが皆の感情を不安定にさせてる。だから早く夢から覚めてほしいの。』
いつもとは違い敬語を使わずにスラスラ話すミナに驚いた。
うん?ここは夢の世界なの、ってことは私が目覚めさえすれば元の世界に戻れる!?サラはこの世界は自分が作り出してしまった架空の世界だと思っていた、だから魔法を使わない限り元の世界には戻れないと。でもただの夢の世界なら簡単に戻れる、魔法無しで!サラにとって一筋の希望が見えた瞬間だった。それにしても夢の中のミナはとても優秀だなと考えているとミナが言う。
『でも現実世界のあなたをいくら揺さぶっても起きない、だからテレパシーを使ってあなたの夢の中にお邪魔させてもらったの。』
『ってことはあなたは本物!!』
てっきりサラはミナのことを偽物だと思っていた。
『ねえ、ミナ。いつもと雰囲気が違くないですか?』
ミナはびっくりした。まさかそんなことを今聞かれるなんて。
ほんと人前では気前よく振る舞うけどホントは繊細で泣き虫で少し変わっている内気なあの人にそっくり。
『なんかあなたが私がよく知っている人にそっくりで...。なんか親近感が湧いちゃって。私よく知らない人と話すのは緊張するけどでもあなたと話すのは緊張しなくなったみたい。これからもこんな風に接しても?』
サラとしても敬語を話すのはあまり好きでない。気軽に話せるほうがずっといい。
『うん、もちろん!だって私達はもう友達でしょ?私も敬語じゃなくて気軽に話しかけても?』
『うん、そうして。』
『ところでここはどこ?』
ミナはブリンデル王国の中心から北に離れているデイル出身だ。だから今ここにいる場所が全くわからなかった。
『ここはね、私のお気に入りの広場なの。よく小さいときにママと一緒に来てたんだ、ママの知り合いがこの辺に住んでいたから、でもその人のこと全く覚えてないんだけどね。私の家はウェスリアンの隣、ダーラナという場所なの。』
『全くその人のこと覚えてないの?』
『うーん、自分は記憶力には自信がある方なんだけど小さな時だったし。』
ミナは気付いた、このときのサラの目が虚ろだったことを。これは誰かが魔法を使ってサラの記憶を操作したことを意味する。この呪文はとても上級者向けの呪文である、無理に記憶を消そうとすると稀に後遺症が残ってしまう。今のサラのようにその記憶に関することを思い出そうとすると目が虚ろになってしまうのだ。一体誰がこの呪文を、サラの記憶から消された人物は重要な人物に違いない。とりあえず今は早く夢から覚めてもらわないと。
『サラ、夢から覚めたいって願って。そうしたら戻れるはずだから。』
サラは気まずそうな顔をして言った。
『あのね、ミナ。この夢の世界では魔法が使えないの、ブレスレットが外れる前に考えてたことが普通な魔法無しの生活に戻りたい。ママに会いたいなの。』
ミナは固まった。もしこの夢の中で魔法が使えないのならばミナの意識もサラの夢の中に囚われたまま現実に戻れないことを意味する。
『でもただ寝てて夢を見ているだけなら自然に目覚めるよね?』
サラはまだ楽観的に考えていた。
『残念だけどサラが心の底から望んで魔法を無意識に使った結果、今サラは夢の世界に囚われてるの。魔法を解除するには魔法を使わないと。』
『ミナの魔法を使うのは?』
『ここは魔法がない世界なんでしょ?ってことは私も魔法は使えない。』




